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Re: さらば外務省! 竹信悦夫の「ワンコイン悦楽堂」 October  29, 2003
http://www.asyura2.com/0311/war41/msg/1374.html
投稿者 なるほど 日時 2003 年 11 月 19 日 04:52:37:dfhdU2/i2Qkk2

(回答先: Re: 人事:外務省官房長に北島氏 中東アフリカ局長に安藤氏を発令 [毎日新聞] 2002-03-08 投稿者 なるほど 日時 2003 年 11 月 19 日 04:45:53)

竹信悦夫の「ワンコイン悦楽堂」 October  29, 2003
さらば外務省!
天木直人  講談社、2003年、元の定価1500円+税



竹信 悦夫
タケノブ・エツオ
1976年朝日新聞入社。支局、社会部、外報部、カイロ、ニコシア、シンガポールで特派員。休刊した英字紙のデスク、やはり休刊の英文誌編集長、翻訳センター編集長、総合研究本部研究員を経て現在は速報センター員。
著書に「英字新聞がどんどん読めるようになる」(光文社、2000)。共同執筆した著書に「コンサイス人名辞典外国編」(三省堂、1976)、「湾岸戦争の二百十一日」(朝日新聞社、1991)など。

「ユカイ・ツーカイ・奇々怪々──」

例によって新刊書店をふらついていて、突然この文句が頭の中で響きわたった。
なぜ、そんな遠い記憶の中の歌詞が不意に思い出されたのか、自分でも見当がつかない。
ただ、けばけばしい意匠の新刊書が、ところせましと平積みにされている書店の店頭で、とりわけきわもの風の一冊を手に取り、疾走り読みしはじめたとたん、その脚韻を踏んだ歌詞の一部が、鮮明に脳裏に浮かんだのだ。

と、いったって、私の場合、藤子不二雄A原作のTVアニメ作品「怪物くん」の主題歌のサビのくだりであります。モオツアルトのシンフォニイなぞではありません。
アニメ・ファンのサイト KANA'S Dream の中の「怪物くんの思い出」
http://www.interq.or.jp/www1/kurosu/Mon.htm
によると、正式の題は「ユカイツーカイ怪物くん」(歌 野沢雅子/台詞 神山卓三、肝付兼太、相模太郎)。

きっかけになったのが本書。
私自身は、暴露本はそんなに好きではなく、しかもベストセラー本は、新古書店の100円棚にあっても、たいてい「猫またぎ」なのですが、本書はちょっと違いました。
一応ワンコインの意地で、心当たりの新古書店をいくつかチェックしたけれど、まだ出回る前とみえて見当たらず、とうとう「元の定価」で購入。
もちろん、それだけの値打ちあり、と見込んでのことでしたが、期待に違わず十二分の迫力で、あっという間に読了してしまった。

日本政府のイラク戦争支持に異を唱え、ために任を解かれた特命全権大使が、実名をあげて政権と外務省に筆誅を加える。
高度な機密に接する高官が、自分のクビと引き替えに、内部事情を暴いたのですから、それだけでスキャンダラス。なんたって素材がいいから退屈しない。

著者自身が、「週刊金曜日」(2003年10月24日号、元の定価500円)とのインタビューで語っているところによると、本書で言いたかったことは

1)小泉首相の外交は「無責任で、空っぽ」だ
2)外務官僚が政治家ともたれあい、強大な権力をほしいままにしている
3)外務官僚にとどまらず官僚組織そのものが国民に背を向けている

の3点に要約されています。

まとめてしまえば、確かにそうなのだけれど、本書の強みは、そうした著者の主張を裏付ける材料が、きわめて具体的なことでしょう。

たとえば、対イラク攻撃について日本のとるべき外交政策について、著者がレバノンから本国政府に書き送り、解任のきっかけとなった「意見具申」は、23〜27ページにかけて収録されています。これなどはイラクで大規模な武力行使が行われてしまった現在も、一読の価値ある文書だと思います。

著者は

<外務省の米国崇拝、盲従の外交が、果たして長い目で見て本当に国益にかなうものかどうか。代行を迫られる時期にきているのは間違いない。にもかかかわらず外務省の現実は、もはや「追従」を通り越して、米国は絶対視、神聖視される対象にさえなりつつある。>(71ページ)

と指摘し、その根拠として外務省内での会議の模様を生々しく再現し、時には内部資料をふんだんに引用する。

たとえば外務次官、駐米大使を歴任した栗山尚一が、条約課長時代に執筆した、日米安保条約についての外務省員むけの冊子からの引用。この冊子、著者によると外務省職員のバイブルだという。
曰く

<米国は日本と共通の価値観を有する信頼できる唯一の国である。そのような国に対して助けてくれないかもしれないなどと疑念を抱くこと自体、誤りであり米国に対して失礼である>(65〜66ページ)

これが「日米外交の偽らざる実態」なのだと、著者はあきれている。

栗山尚一のほかにも、小泉首相以下、高位高官が、実名でなで切りされる。
槍玉にあげられた人たちのリストは、

北島信一
竹内行夫
小和田恒
斉藤邦彦
松永信雄
野上義二
田中均
川口順子

しかもそのほとんどの記述には、著者が実見したり、当事者として関与したりした挿話が含まれており、迫真力に富んでいます。

さて、ここまでが、「ユカイ、ツーカイ」だとすれば、外務省職員の腐敗について暴露した部分は、「奇々怪々」というべきでしょうか。

本書のさわりを掲載した週刊誌には、派手な見出しが踊り、疑惑追及は、現在進行形、というところ。
著者自身も、本書発売当日に、特派員協会に招かれて講演するなど、活溌に発言を続けています。
私は、出席できなかったのですが、当日の模様を伝える

「外務省クビ前大使「伏魔殿」の実態を激白
前駐レバノン、天木直人氏が特派員境界(ママ、協会の変換ミスか)で会見」

という見出しの10月8日付けのzakzakの記事は、
http://www.zakzak.co.jp/top/t-2003_10/1t2003100820.html
で全文が読めます。

犯罪の領域に重なる可能性のある金銭スキャンダルとしては

・外務省の機密費のうち20億円が毎年、内閣官房に上納されていたとされる疑惑
・在カナダ大使館での約800万円の公金流用疑惑
・オーストラリア大使館公使時代の著者の前任者で、創価学会青年部幹部であるE公使が、公金流用に関与した疑惑とその不明朗な処理

などが、本書中に書かれています。
これに関しては、産経新聞のサイト中の

「さて、真偽は…前大使が外務省暴露本を出版」

の見出しのついた2003年10月17日付けの共同通信の配信記事
http://www.sankei.co.jp/news/031007/1007sha092.htm
が、簡潔にまとめています。

この記事によると、こうした疑惑について、外務省関係者は「あり得ないこと」と事実関係を全面否定しているそうです。
それなら、外務省や本書中で名指しされたお歴々は、こぞって著者を訴えればよさそうなものですが、いまのところその動きはありません。
「黙殺」しようとしているのかもしれません。
でも、これはあまり賢明な方法ではありますまい。

私の知り合いが働いているある有名企業が、週刊誌に社内事情を暴露されたことがあります。
幹部の下半身スキャンダルなどではなく、この企業の危機管理や人事についてのどたばたを書き立てられ、トップが大いにコケにされた。
ところがこの企業は、抗議するなどの対抗措置をとらず、ひたすら黙殺しようとした。
知り合いによると、結果は裏目に出て、この企業の従業員や取引先などは「反論しないのは、やっぱり週刊誌に書いてある通りだからだ」と思うようになったといいいます。
信用のない組織が、黙殺しようとしても、逆効果になる、という教訓ですね。

外交旅券の写真をあしらった多田和博のカバーは、いかにも「硬派のベストセラー」然とした造りで、勢いよく売れる(私の購入した一冊の奥付けによると、発売から10日で4刷り)本らしい。
しかもカバー以上にインパクトがあるのは、表紙裏の見の返しに刷り込まれた、著者に対する免官の辞令です。
毛筆で書かれた

「特命全権大使 天木直人
 願に依り本官を免ずる
 平成十五年八月二十九日
 内閣」

とある左肩には、朱肉の色も鮮やかに天皇御璽がべたり!ですぞ。

http://www.asahi.com/column/aic/Wed/d_coin/20031029.html

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