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【バグダッド大木俊治】10月末から各地で米軍や警察署などへのテロ事件が相次ぎ、イラク情勢は再び混沌としてきた。犯罪の減少など治安回復の兆しが見え始め、イスラム教のラマダン(断食月)に合わせて夜間の戒厳令を解除した直後だけに、米英占領当局や市民も戸惑いを見せている。「イラクの安定を望まない旧政権の支持者や外国テロ勢力のしわざ」との見方が支配的だが、治安当局も有効な対策を打ち出せていない。
■誰の犯行か
赤十字国際委員会のイラク事務所などが襲撃された27日、バグダッド市内で警察署への自爆テロ直前に逮捕された男は、その後の治安当局の調べで、イエメン出身でシリアのパスポートを所持していたことが判明。外国テロ勢力が関与している可能性が確実視されている。
イラク駐留米軍のサンチェス司令官は1日の記者会見で「大規模ではないが、外国人のグループがイラク国内で活動していることは把握している」と述べ、その国籍としてエジプト、シリア、イエメン、スーダンの4つを挙げた。しかし、資金源や背後関係については「今のところ明確な答えはない」と慎重な表現にとどめた。
イラクの暫定政権である統治評議会は「特別治安委員会」を設置し、占領当局や内務省と合同で対策を練っている。同委員会のアラウィ調整委員長(イラク国民合意=INA)のアブドルアミル報道官は「サダム(フセイン元大統領)の支持者と国際的なイスラム過激組織が協力しているのは状況証拠から明白だ」と述べたうえで「今の問題は犯人探しよりもテロ防止対策の確立。特に国境警備の強化や治安機関の整備が急務だ。占領当局の対策は後手に回っている」と指摘する。
■手口の変化
反米意識の強いイラク西部のファルージャで2日、米軍ヘリが撃墜されて16人が死亡した事件では、目撃証言などから携行式の地対空ミサイルが使用されたことが確実になり、「テロ組織の手口の高度化」が指摘されている。しかし、過去2回の米軍ヘリ撃墜でも同様の地対空ミサイルが使われたと推測されており、必ずしも大きな変化とは断定できない。
これに対し、赤十字や警察署への自爆テロは、犯人が自爆し、付近の民間人を多数巻き添えにしている点など、米軍を狙った攻撃とは違う特徴がある。多くの関係者が「自爆テロはイラクの国民性とは異質。アルカイダなど国際テロ組織の発想だ」と指摘する。しかし、反米で一致する両者がどこまで協力して作戦を進めているのかは解明されていない。
またこうした事件とは別に、10月26日にバグダッドの副市長が暗殺され、2日にはイラク南部のナジャフで旧政権関係者を訴追する特別委員会の判事が拉致・殺害される事件が発生するなど、テロの対象は占領当局に協力する暫定政権関係者にも広がっている。統治評議会のタラバニ議長(クルド愛国同盟=PUK)のノシルワン・ムスタファ補佐官は「一般犯罪が減って社会的治安は改善しているが、政治的治安は逆に悪化している」と指摘する。
■混乱狙う脅迫
一連のテロの直後、バグダッドでは「(旧政権党)バース党地方組織幹部」の名前で、米英軍の戦闘終結宣言から半年にあたる11月1日を「抵抗の日」とし、1日からの3日間で学校や省庁などの公共施設を狙ったテロを警告する脅迫状が出回った。テレビ報道などで知った両親らが子供を登校させず、多くの学校が休校に追い込まれた。
実際には同日はテロ事件はなかったが、INAのアブドルアミル報道官は「テロ組織はこの脅迫で、人々に恐怖を植え付けることで社会をコントロールできることを見せつけた」と危惧する。
27日に襲撃された警察署の1つ、アルシャーブ警察署の付近の住民によると、事件の5日前、警察署周辺に鉄線や土嚢で築かれていたバリケードが撤去され、それまで警戒にあたっていた米兵の姿が消えたという。「治安回復」のアピールを狙った戦術がテロ組織に狙われる結果になった。
◇イラク国内で起きた最近の主なテロ事件◇
8月19日 バグダッドの国連事務所で爆弾テロ、デメロ特別代表含む24人死亡
9月9日 北部アルビルの米軍関連施設で爆弾テロ、3人死亡
22日 バグダッドの国連事務所の駐車場入口で爆弾テロ、2人死亡
25日 バグダッドの米テレビ局拠点のホテルで爆弾テロ、1人死亡
10月9日 バグダッドでスペイン大使館職員が自宅前で襲撃されて死亡
12日 バグダッドの米情報機関が使用するホテルで爆弾テロ、6人死亡
14日 バグダッドのトルコ大使館近くで爆弾テロ、10人以上負傷
16日 中部カルバラで待ち伏せ攻撃、米兵3人とイラク人警官2人が死亡
<ラマダン(断食月)入り(26日)>
26日 バグダッドのウルフォウィッツ米国防副長官が滞在のホテルにロケット弾、米兵1人死亡
27日 バグダッドの赤十字国際委員会事務所付近と警察署付近で連続爆弾テロ、30人以上が死亡、200人以上が負傷
28日 バグダッド西部で車両に仕掛けられた爆弾が爆発、ファリス副市長が死亡
30日 バグダッドの商店街付近で爆発、2人死亡
31日 バグダッド西部ハルディア付近で爆弾攻撃、米兵1人死亡
11月1日 北部モスルの警察署前で爆弾が爆発、米兵2人が死亡。反米勢力が「抵抗の日」と大規模テロを呼びかけ
2日 中部ファルージャ付近で駐留米軍の大型輸送ヘリが攻撃を受け墜落、米兵16人が死亡
3日 中部ナジャフでフセイン政権時代の訴追手続きの担当判事が武装グループに襲われ、死亡
同 北部ティクリートで爆発、米兵1人死亡
同 中部カルバラのイスラム教シーア派寺院近くで爆発、通行に3人が死亡
[毎日新聞11月4日] ( 2003-11-04-19:34 )
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/kokusai/20031105k0000m030054000c.html