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2大政党制の危険
H15/12/04
十一月九日に行われた衆議院選挙では小選挙区の投票率が59・86%、比例区は59・81%と戦後二番目に低い投票率となった。今さらここで投票率の低さを嘆いてもしかたがないのだが、特に二十代の有権者の投票率が20%〜30%台だったと聞くと日本の将来について暗たんたる気持ちになる。
国と地方の長期債務残高総額が六百七十五兆円、国民一人当たり五百万円超という借金を抱えるなかで消費税増税や社会保険料・国民保険料の増額、年金受給額の減額という政策をとっている自民党政権は、今回の選挙結果に安心して、これまで通りの方向へ日本のかじ取りを続けるのだろう。社会保険庁によれば国民年金の保険料の未納率は二十代前半で52・6%、二十代後半は50・6%だという。投票も納税も行わない人に対して、政府は真剣に対策を検討すべきではないかと思う。
政治買収を宣言
選挙のあと、気になる記事が掲載された。ある大手新聞の調査で二大政党化に68%が「よかった」と回答したというのだ。これは今回の民主党の躍進で二大政党色が強まったことについてで、「そうは思わない」の18%を大きく超えたという。現在の小選挙区制は大政党に有利となり議席に反映されない「死票」(落選者の得票合計)が最多議席の党以外は高くなるという問題があることは以前から指摘されている。今回も自民党は得票44%で議席の56%を獲得したが、共産党は得票率8・1%で獲得議席は一つもない。そこにさらに二大政党制を「良い」とする世論形成を新聞社が行うところに、私はますますメディアコントロールを感じる。もちろん後援者は大企業である。
日本経団連は二〇〇四年から政治献金を再開するにあたり、今年八月、自民、民主両党による二大政党制の実現を目指す方向で検討を始めた。日本をアメリカのような二大政党制にし、与党だけでなく野党にも献金を配分すべきだという。経団連は一九九三年から政治献金のあっせんを廃止してきたが、ここにきて政治献金を組織的に再開、つまり、政治を買収することを露骨に宣言したようなものである。
先の二大政党化に関する調査を掲載した新聞社は、十一月、経団連が政治献金を行う際の基準にするという「優先政策事項」に対する評価を発表した。各党の政権公約のうち税制改革、社会保障、エネルギー・環境など政策ごとにA(非常に良い)からE(非常に悪い)の五段階採点結果が掲載され、その評価をもとに献金をするという。例えば消費税引き上げを積極的に議論している自民党はB+(良い)だが消費税反対の共産党はE(非常に悪い)、大企業が反対する環境税を盛り込んでいる民主党はD+(悪い)、共産党はE(非常に悪い)といった具合である。
少なくなる選択肢
過去五十年以上日本は一つの右派政党(自民党)がいつも政権を握るか、または似たような政治哲学をもつ右派政党と連立するかで、それ以外の政党は決して政権を取ることができない一党優位政党制だった。これをアメリカのような金権二大政党制にすることを大企業が歓迎する理由は分かるが、一般国民が歓迎できる理由は何もなく、むしろマイナス要因はいくつも挙げられる。
一つは有権者の選択肢が少なくなり、それによって民主主義がむしばまれることだ。今のアメリカがまさにそうである。共和党はもともと右派政党だが、選挙に勝ちたい民主党は真の左派としての態度をとることはなく、せめてブッシュ共和党よりも左寄りをとるのが関の山だ。その結果、今のアメリカの有権者は結局程度の違う右派政党(または分野によっては左派)の選択肢しかない。二つの政党はほとんど同じ政策を掲げ有権者の選択肢を与えないということで二つの政党はほとんど同じになる。そしてアメリカの有権者はそれが民主主義だと信じ込んでいる。
政策決定に影響力
アメリカでは選挙に対するお金の影響がきわめて大きい。予備選挙から本選挙まで実に九カ月も選挙期間が続き巨額の選挙資金が使われる。ブッシュ大統領は二〇〇四年の大統領選挙に向けて六月から十一月半ばまでにすでに約一億ドル(百十億円)を超えた資金を集めた。この金権選挙のために、一般の有権者よりも政党や政治家に巨額のお金を提供(投資)できる大企業が政策決定に大きな力を持つことになる。そして二大政党が基本的に同じような政策を提唱するため、産業界に多少違いはあっても両党は大企業からほぼ同じような額の献金を集め、企業にとってはどちらが政権をとっても同じように有利な政策を行ってもらえる。これが民主主義を装った金権主義でなくて何だろう。
日本が愚かにもアメリカの二大政党制を取り入れ、一般国民の生活をさらに脅かすような政策を両党がとっても、今の投票率では自業自得としかいいようがない。いくらメディアが二大政党制を良いと宣伝しても、何もかもアメリカを追随するのではなく、ヨーロッパや北欧諸国の多くが国民に多くの選択肢を提供する多党制をとっているという現実も見るべきだと思う。(アシスト代表取締役)
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