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2003.11.23
敗北・復帰・復活
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「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しく止まりたる例なし。世の中にある人の栖（すみか）と、またかくのごとし」。鴨長明の『方丈記』の冒頭の一節である。
選挙は非情である。勝者と敗者は峻別される。容赦なしだ。
数ある著名な政治家の名が国会議員名簿から消えた。選挙前に小泉首相によって切り捨てられるがごとく引退に追い込まれた中曽根康弘、宮沢喜一元首相の名がない。野中広務元幹事長は自ら引退した。熊谷弘（前保守新党代表）や佐藤敬夫（同国対委員長）の名がないのは淋しくつらい。山崎拓前幹事長も消えた。小泉首相から「嘘つき」と名指しされたために落選した好漢・荒井広幸氏には深い同情を感じる。
敗者にはきびしい秋である。
復活組では加藤紘一元幹事長と田中真紀子前外相に注目が集まる。加藤氏は秘書の不祥事の責任をとって議員辞職した後、一年数カ月間、地元で数百回の集会を行い、見事に復活を果たした。復活の日、加藤氏が「イラクへの自衛隊派遣はやるべきではない」ときっぱり言い切ったのは鮮やかだった。自民党ハト派のリーダーとしての自覚が溢れている。加藤氏がＹＫＫ以来の小泉首相との友情よりも、自らの政治的信念を大切にする姿勢を示したことは大いに評価できる。加藤氏がポスト小泉の有力候補として認められる可能性はあると私は思う。
田中真紀子前外相は無所属クラブに入会し、民主党との統一院内会派に加わり、首班指名選挙では菅直人の名を書いた。これにより、民主党会派の一員として国会活動の場をもつことになった。衆院外交委員会で小泉首相・川口外相・福田官房長官と田中氏との論戦が実現すれば、国会論争は大いに盛り上がるだろう。田中氏は特別国会開会当日、「小泉構造改革についてどう思うか」と問われて「（小泉首相は）何もしていない」と厳しく批判し、小泉首相に挑戦状を叩きつけた。田中氏は04年夏の参院選での民主党の応援弁士としても期待されている。テレビのワイドショーは田中女史の動きを追いつづける。状況次第では風を呼び嵐を起こす可能性はある。
もう一人いる。小沢一郎氏だ。政治的復活である。政界全体が小沢一郎前自由党党首の一挙手一投足に注目するようになった。小沢氏は民主党と自由党の合併を成し遂げたことによって、政界のキーマンとして中央舞台に鮮やかに復活した。今総選挙において新・民主党は四十議席を伸ばし、次の総選挙での政権交代の足固めをし、二大政党化を進めた。
それでも小沢氏は満足しない。177議席という総選挙結果について「負けは負け」と言い切り、民主党が改善すべき課題として、マニフェストの内容の明確化と議員の日常活動の強化を求める。小沢氏への共感は徐々に民主党全体に広がり始めている。田中真紀子前外相の民主党・無所属クラブへの入会を勧めたのも小沢氏だ。小沢氏は民主党内では無役の一兵卒だが、実質的には参謀総長的立場にいる。
小沢氏の戦略目標は次の総選挙で自公連立政権を打倒し民主党政権を樹立することである。この戦略目標を実現する上で当面の最重要な戦いが04年夏の参院選である。この参院選で自公連立体制の打破と小泉政権の打倒を狙っている。
04年夏の参院選で最も注目されているのが宗教団体の動きだ。自民党は公明党・創価学会と一体化することによって参院選を戦おうとする。これに対し、従来自民党側にいた数々の宗教団体が自民党離れを起こしている。多くの宗教団体に民主党との接近の動きが見られる。創価学会と他の宗教団体との新たな競合が始まる。創価学会と他の宗教団体との間の関係改善ができなければ、民主党は宗教関係者の協力を得ることができるだろう。
加藤紘一、田中真紀子、小沢一郎三氏それぞれの新たな戦いが始まった。注目したい。
【以上は11月22日付け四国新聞に「森田実の政局観測」として掲載された小論です】
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C0646.HTML
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。