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2003.11.19
総選挙後の日本政治
「世の中はなにか常なる飛鳥川昨日の淵ぞ今日は瀬になる」(古今和歌集)
人の世には常に変わらないものなどあるだろうか。明日という名の飛鳥川も、昨日までは深い淵だったところが今日は浅瀬になっている。世の中ははかないものだ、という意味。(詠み人知らず)
同県(静岡県)人として長い間親交を重ねてきた熊谷弘さん(前保守新党代表)が議席を失い、中央政界から姿を消した。政界復帰を目指すのか、それとも新たな人生に踏み出すのか、今は何もわからない。
私は選挙応援はほとんどしないが、個人的に親しい政治家だけ例外としてきた。政党とは関係ない。記憶にあるのは約10年前に故・奥田敬和さん(元運輸大臣)の応援弁士に行ったこと程度である。
3年前の前回総選挙で初めて熊谷弘さんの選挙区に入った。そして今回は選挙期間中2回、静岡7区へ行った。親友の熊谷さんが苦戦しているのが気になり、自発的に応援に行った。熊谷陣営には迷惑なのではないかと気にしつつ、短い応援演説を何回かした。
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保守新党解党・自民合流へ
だが熊谷さんは、相手新人候補への自民党森派の総力を挙げた応援、地元の某大企業会長の「反熊谷」の旺盛な活動、そして某宗教団体の総攻撃を受け敗れた。投票日前日の11月8日夜8時の選挙事務所で私の頭に浮かんだのは「孤城落日」という王維(唐の詩人)の一節だった。
これは中央政界や浜松で聞いた話だが、某大企業会長の「反熊谷」の感情はすさまじく、選挙への干渉は常識を越えたものだったという。真実なら日本経営史上に記録されるべき悪例であろう。影響力のある経営者が下請け・孫請け企業への影響力を駆使して選挙に対して乱暴に干渉するのは問題である。経営者は政治とくに選挙に対して節度をもつべきではないか。節度は指導者にとって最も大切なものだ。
熊谷さんが中央政界を去るとともに、熊谷さんの盟友の二階俊博さんが中心になって維持してきた保守新党は解党し自民党に合流した。中央政界の政治地図からまた一つ政党が消えた。
去る9月には民主党に合流するため自由党が解党した。「明」の自由党解党に対し、自由党から分かれた保守新党の解党は「暗」となった。
今回の総選挙で共産党と社民党は敗北した。両党とも存続するだろうが、中央政界での影響力は極小化した。政界は敗者には厳しい。政治の世界は「勝てば官軍、負ければ賊軍」である。
自民党内勢力図も変わった。小泉首相を支える「森派・青木派連合」による一極支配体制がさらに強まった。今回の総選挙を通じて森派は勢力を拡張した。逆に小泉批判勢力は後退した。橋本派も亀井派も……。
ブッシュ米政権と一体化した小泉体制は強い。「小泉体制が崩れるのは04年秋の米大統領選でブッシュが負け民主党政権の登場を待つしかないのか」との吐息が聞こえてくる。
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新たな政界三国志
今回の総選挙の最大の特徴は民主党の躍進による政界の二大政党化だ。民主党は議席を大幅に伸ばすことに成功した。菅・小沢体制の指導力は強まり、次への再度の挑戦権を得た。二段階での政権獲得を目指すことになる。
小泉首相は、自民党の議席が10減ったが、政権は維持した。そして復活した加藤紘一氏の復党と無所属新人の入党、および解党した保守新党の議員を加えて単独過半数を確保した。小泉政権は安定した。その上、公明党との結合の度合いを深めた。自公二党体制は強大な体制である。この体制が暴走を始めたら日本は大変なことになる。この不安を感じている人は少なくない。
次の政局の焦点は何か。
第一にイラク問題。民主党は自衛隊のイラク派遣に強く反対する。世論も民主党に同調するだろう。自公連立政権が強硬路線に踏み切るならば抵抗は強まるだろう。
第二は年金問題。主導権を握っている公明党=厚生労働省ラインの年金改革案を自民党はほとんどそのまま飲まざるを得なくなると見られている。公明党は強くなった。公明党・創価学会票に助けられた自民党に対し、公明党の立場は強い。
第三は道路公団民営化問題。当面の焦点は道路公団総裁人事だ。藤井前総裁側が国土交通大臣を告訴する可能性もある。民営化法案の作成に当たって小泉首相と青木自民党参院幹事長がどう妥協するのかも注目点だ。
第四が予算編成。強くなった公明党の出方に注目が集まる。「公明党予算とも言うべき予算案が作成される」との見方が強まっている。
第五は通常国会。民主党は攻勢を強める。戦略目標は04年夏の参院選での与野党逆転だ。参院選は今総選挙後の政局の主戦場である。
民主党は04年夏の参院選に勝負をかける。参院選は、一体化した「自公」対民主の二大政党体制の「天下分け目の関ヶ原」となる。民主党の狙いは小泉政権の打倒だ。民主党は小泉体制が終焉すれば自民党体制は滅びるとの判断だ。このあとの総選挙での政権交代が民主党の戦略目標である。
【以上は11月18日発売の『経済界』12月2日号に「森田実の永田町風速計」として掲載された小論です】】
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C0645.HTML