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政権選択に参院の壁 政治部 芹川洋一(11月10日)
こんどの総選挙は、自民党か民主党かの政権を選択する選挙だった、といわれた。その答えが9日投票の結果だ。たしかに有権者の意思である民意はそこにあらわれている。しかし、それは衆院だけの話である。もうひとつ、参院という存在があるのを忘れてはならない。来年夏には改選期を迎える。衆院にあらわれた民意と、参院が代表する民意が違うとき、どうするのかという厄介な問題をこの国の政治は抱え込んでいる。
衆院と参院がそれぞれ代表する有権者の意思が違い、両院でねじれ現象がおこったのは、1989年の参院選で自民党が惨敗し、単独過半数の確保が難しくなってからだが、制度上、参院が強すぎることによって、政治過程が妙なことになっている。
要は憲法問題である。日本国憲法は、法律案、予算、条約、首相指名などで衆院の優越を認めている。予算と条約は30日以内に参院が議決しないときには衆院の議決を国会の議決にする、と定めている。法律案はあくまでも両院で議決して法律になるのが原則だ。参院が衆院を通過した法案を否決すれば、衆院でこれをくつがえすには、出席議員の3分の2以上の圧倒的多数の賛成が必要となる。
この3分の2という数は、簡単に確保できるものではなく、参院に強い拒否権を与えている。予算や条約は、衆院で過半数を確保していれば、かりに参院で野党が多数を占めていても、衆院通過から30日すれば自然成立するわけで問題はない。
ところが、関連の法案がにっちもさっちも行かなくなる。「強すぎる参院」によって衆院の意思によって成立した政権が倒れることもあり得る。衆院解散・総選挙を通じて、より直接的に民意を反映するはずの第1院で選ばれた内閣が、第2院にあらわれた民意によってひっくり返されるのは、どうにも筋が通らない。
現在の自民、公明、保守新による3党連立にしても、参院での公明党の23議席がなければ過半数を確保できないためで、連立政権をもたらしているのは、参院の事情によるものだ。
今回の総選挙を民主党は政権選択選挙と位置づけて、戦いを挑んだが、もし衆院で他の野党を含めて過半数の議席を獲得していたとしても、参院の状況は何も変わらない。
総選挙だけでは政権を選択できない仕組みになっているのだ。
これを突き破る方法はないのか――。最近刊行された加藤秀治郎編『憲法改革の構想』(2003年10月・一藝社)に面白い提案があった。小林幸夫玉川大助教授による「両院合同会の導入を提案する」という論文がそれだ。
「両院合同会は、両院の議員全員が集まり、同じ議場で討論し、決定を下すもので、2院制を一時的に中断して、1院制のような形で審議し、採決をすることで、最終的な決着をつける」という内容だ。
法律案についての両院の議決が異なったとき、衆参両院の議員全員が集まり、各会派による討論のうえ、1人1票で表決する方法だ。衆院と参院の議員定数はほぼ2対1なので、第1院である衆院の意向がそれだけ大きく決定に反映される。
今の制度では、衆参両院で過半数を確保できる連立を考えなければならないが、この両院合同会方式によれば、衆院の過半数と両院合同会での過半数で良いことになる。
「第2院が第1院に対立するときは有害であり、同調するときは無用だ」――フランス革命期の政治家で『第三階級とは何か』の著者であるアベ・シェイエスの言葉から逃れ、総選挙を本当の政権選択の場とする制度上の工夫が必要だ。
参考:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-11-12/01_01.html