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総選挙 深まる「保守二大政党制」と「護憲・革新」勢力の崩壊的危機 [かけはし2003.11.17号]
http://www.asyura2.com/0311/senkyo1/msg/570.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 11 月 13 日 19:16:07:Mo7ApAlflbQ6s


「もう一つの政治的選択肢」をめざす実践的挑戦へ!


「自民対民主」は選択肢だったか

 十一月九日投票の総選挙は、「自民主軸か民主主軸かの政権選択を問う選挙」という作られた構図の中で、自民・公明・保守新党の与党ブロックが、四百八十議席中「安定多数」の二百七十五議席を獲得した。しかし自民党自身は解散前の二百四十七議席から十議席を減らし二百三十七議席にとどまった。当選後、自民党に入党する「無所属」議員をふくめても自民党は解散前の議席を維持できないと見られている。
 与党ブロックを構成する公明党は三十一議席から三十四議席に増加し、比例区でも前回(二〇〇〇年)比で九十七万票増やし、衆参両院の比例区選挙を通じて過去最高の八百七十三万票を獲得した。保守新党は熊谷代表が議席を失うなど、解散時の九議席から四議席に減少したことにより、党を解散して自民党に合流する方針を決めた。
 他方、十月五日に民主、自由両党の合同によって結成された新・民主党は、比例区得票の全国総計では自民党の二千六十六万票を上回る二千二百十万票を獲得して第一党になるなどの伸長を見せ、解散前の百三十七議席から百七十七議席に伸長した。
 「自民・民主」の「保守二大政党制」の枠組みが「政権選択をかけたマニフェスト選挙」というマスメディアの宣伝ともあいまって、より明確な形をとって浮上した。しかしそれは、「自民VS民主」の対決構図が、多くの人びとにとって自らの抱える不安や危機感に応える現実的「選択肢」になったことを示しているのだろうか。現実はまったくそうではない。

戦後二番目の低投票率の根拠

 「どっちが勝ったの?」――これは、総選挙結果を報じた十一月十日付読売新聞夕刊のトップ見出しである。「国民的人気」の高い「小泉・安倍」をダブル看板に仕立てた自民党の選挙キャンペーンにもかかわらず、二〇〇一年参院選のような「小泉ブーム」の再現は起こらなかった。長期にわたる経済危機と失業・リストラや「年金・福祉」問題などの社会不安の持続的深まりの中で、小泉の「改革者」的イメージは色あせている。
 他方、「政権選択」を掲げた民主党の挑戦も、与党の「安定多数」の獲得によって空振りに終わった。マスコミが報じた「自民主軸か民主主軸か」の「熱気」は、予測に反して五九・八六%という戦後二番目の低投票率によって裏切られることになった。すべての都道府県で投票率は前回を下回り、四十七都道府県中二十二県で戦後最低を記録した。
 日本経団連の奥田会長は選挙結果を受けて「民主党が責任政党として、これまで以上に健全な政策論争を行うことを期待している」と述べ、「二大政党で政策を競い合う欧米型の政策論争」への期待感を示した。「民主党がマニフェストを用意して、政権担当の気概を見せたことの意味は大きい。……戦後日本の政治で、単独の野党がこれほど政権担当の覚悟を示したことはなかった」と賞賛する政治学者もいる(田中愛治早大教授、「朝日」11月10日夕刊)。
 しかし今回の「二大政党」による「政策論争」は、われわれが指摘したように、新自由主義的グローバリゼーションに基づく「市場万能主義」の「構造改革」や規制緩和による福祉・社会支出の切り捨てや、憲法改悪・自衛隊海外派兵・有事法制という「戦争国家体制」を共通の基盤にしたものでしかなかった。そこでは、グローバル資本主義の危機に対する根本的解決の指針や、戦争と憲法改悪といった日本の政治・社会のあり方を規定する問題での対決は、争点とはならなかった。それは「回避された争点」というよりは、そもそも自民・民主両党にとって「争点」ではなかったからである。この点は自民党以上の極右「タカ派」(たとえば西村真悟)を抱えた民主党を見れば明らかである。
 まさに「二大政党による政策論争」は、政党の「二極化」ではなく「一極化」に収れんしていく傾向を強める結果になった。それは旧民主党内「護憲」派の解体という現実にとどまらず、自民党内「小泉改革抵抗勢力」の急速な衰退にも示されている。
 表面的には喧騒をきわめた「政権選択選挙」の下で、労働者・市民にとっての真の対決軸の不在――ここにこそ「どっちが勝者か?」という疑問や低投票率の真の原因が存在しているのである。

「護憲・革新派」の大敗北

 支配階級総体の意思で作られた「自民か民主か」という疑似的「対決構造」の中で、共産、社民の「護憲・平和」勢力は大幅に票と議席を減らした。小選挙区での議席は共産党は前回に続いてゼロ、前回小選挙区で四人を当選させた社民党は沖縄2区(照屋寛徳氏)での一人の当選にとどまった。土井党首も小選挙区では敗退した。東京21区の無所属・川田悦子前衆院議員も議席を失った。
 共産党は二十議席から一ケタの九議席へ、社民党は十八議席から六議席へと、それぞれ半数以下への転落である。比例区の総得票で見ても、共産党は前回の六百七十一万票から約三分の一減の四百五十九万票(七・八%)、社民党は五百六十万票から約半減の三百三万票(五・一%)である。つまり共産、社民を総計しても公明党の比例区得票より百万票以上少ない。
 この結果、共産・社民の「反改憲」勢力は衆院議席四百八十のうちの十五議席、すなわちわずか三%となった。解散前の三十八議席からさらに半数以下に激減したわけである。今年の通常国会で有事法制への反対票は衆院では一割に満たなかったが、それと比較しても、国会内的力関係において「戦争国家体制」づくりと憲法改悪に抵抗する議員はいっそうの周辺的極小勢力におとしこめられた。
 少なくとも比例区で約一三%を獲得した共産・社民両党が、国会の議席では三%しか占めることができないという結果が、小選挙区制によって加速された「保守二大政党制」の枠組みの反民主主義的弊害の端的な現れであることを、われわれは指摘しなければならない。民主党の「マニフェスト」が主張するように比例区定数を現行の百八十から百に削減した場合、比例区での獲得議席は共産党が四、社民党は一になるという試算も出ている(朝日新聞11月11日)。つまり衆院での「反改憲」勢力はわずか五議席になってしまうのだ。
 しかし、普通選挙にもとづくブルジョア議会制度が、現実を極度に歪めた形ではあれ階級闘争と大衆の社会的気分を測定する「温度計」である以上、今回の総選挙結果の中に、日本の労働者・市民の社会運動が直面する危機と困難が表現されている。
 とりわけ、今春のイラク反戦運動の一定の高揚や、米英のイラク侵略戦争に対する小泉政権の無条件支持と自衛隊のイラク派兵に反対する世論の広範な反対(イラク派兵への批判は依然として五割を超えている)にもかかわらず、そうした平和主義的感覚が金正日軍事独裁体制による日本人拉致犯罪を通じた「北朝鮮の脅威」キャンペーンを背景に「強い日本を」という方向に集約され、憲法や教育基本法を改悪する政治的・社会的基盤がさらに確立していくことになったのである。
 反戦・平和運動、憲法改悪阻止の闘いの根底的再組織化に向けて日本の社会運動を再生し、「保守二大政党制」に抵抗する政治的潮流の形成をどのように具体的に構想するのか――「護憲・平和」勢力の崩壊的現実の中で、それはまさに待ったなしの課題となっている。

左派の新たな政治的結集を

 われわれは今回の総選挙にあたって、共産党・社民党の重大な弱点と限界にもかかわらず、戦争と憲法改悪、小泉「構造改革」に反対する労働者・市民の運動を拡大する立場から共産、社民両党ならびに無所属川田悦子候補への投票を呼びかけた。総選挙の結果は、旧来の「護憲」革新勢力から独立した闘いを進めてきたわれわれをふくむ左派全体、そして戦争と新自由主義的グローバリゼーションに反対する労働者・市民の運動にとって深刻な事態であることは言うまでもない。
 そうであればこそわれわれは、「保守二大政党制」=議会政治の事実上の「一極化」の中でいっそう深まる労働者・市民への攻撃に対する社会的・集団的抵抗の闘いを再組織し、それを基礎に「もう一つの政治的選択肢」を浮上させるための挑戦を進めていかなければならない。
 もちろん、そうした取り組みのためには、目前に迫った自衛隊イラク派兵を阻止する運動の広範な掘り起こし、憲法改悪に反対する署名運動をはじめとした共同の闘いの拡大、失業・リストラ・雇用破壊・公共サービスの民営化や医療・福祉・年金改悪に対決する運動、資本のグローバリゼーションに対する闘いの多様な分野からの構築、そしてそれらの運動を東アジア・国際的な連携で作りだしていくことが前提である。
 小泉政権は十一月十九日にも召集される特別国会直後に、イラクへの自衛隊派兵の「基本計画」を閣議決定する予定を立てている。派遣規模は陸海空自衛隊と文民を合わせて千二百人、派遣地域にはイラク南部のサマワ周辺の他に、空自部隊を首都バグダッドにも送るとされている。十一月二十四日に東京で予定されている「自衛隊はイラクへ行くな! 殺すな! 殺されるな 11・24行動」(午後1時、渋谷・宮下公園)をはじめ、小牧など全国の自衛隊派兵反対現地行動、北海道・旭川など派遣予定の自衛隊員に対する呼びかけとの連携を深めながら運動を広げよう。
 同時にわれわれは、中・長期的な立場から、戦争と排外主義的国家主義や資本のグローバリゼーションとその諸結果に対する抵抗の運動を基礎に、議会の場をふくめた「もう一つの政治的選択肢」をめざす左派・「市民派」の政治的再結集の可能性を追求していこうとする。戦後「護憲・革新」派の崩壊的危機の中で、九五年の「平和・市民」選挙の敗北以来、いったんは頓挫したそのための挑戦をあらためてわれわれに提示している。「保守二大政党制」、あるいは議会政治の事実上の「一極化」に代わる「第三の極」の登場は、多様な左派・「市民派」の主体的介在ぬきには成立しえないだろう。
 反資本主義左翼の形成をめざすわれわれは、国際主義的な観点にたってそのための実践的なアプローチを開始しなければならない。
  (11月11日 平井純一)         

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