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小泉首相はなぜこの時期に解散・総選挙を選択したか 【大惨敗した社民党の轍を避けるためである】
http://www.asyura2.com/0311/senkyo1/msg/550.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 11 月 12 日 23:16:49:Mo7ApAlflbQ6s


選挙版で13代目さんが疑義を呈していたように、憲法七条だけに基づく解散は極めて違憲性が高いものである。
(国政の決定に形式や権威を与えるものである天皇の国事行為を国政の道具を使っているからである)

それはさておき、小泉首相が、来年夏までのあいだであればいつでもよかった総選挙をこの時期に設定したわけを考えてみたい。
自民党幹部のなかにも、自民党が思うような議席をとれなかった理由として時期をあげている人もいる。
自民党の大勢は、来年7月の参議院通常選挙との同時選挙を最良策だと考えたはずだ。
この選択肢については、公明党・創価学会の反対で排除されたと言われている。


今回の総選挙は、

[好条件]

● 経済指標としてわかりやすい株価が世界同時株高のおかげで持ち直している

● 産業も輸出主導で昨年春までのどん底からは上向いている

● 小泉政権は北朝鮮拉致問題で“男を上げている”


[悪条件]

● 民主党と自由党の合併直後で合併効果が生じる

● 公表されている支持率とは違う実態の支持率を知っている可能性


という条件のなかで選択された。

そして、総選挙を先延ばしにすることで生じるリスクは、年内に予定されている自衛隊のイラク派兵が国民の目に見えてしまうことである。

これが総選挙をこの時期に設定した大きな動機の一つであることは間違いない。


しかし、それ以上に自民党が打撃を受けることになるはずの政治問題が待ち受けている。
それは、今回の総選挙で社民党が壊滅的打撃を受けた北朝鮮問題である。
対北朝鮮強硬言動で“男を上げた”安部氏を幹事長に据えたように、帰国した拉致被害者を戻さない決定や表面的には北朝鮮に妥協を見せていない小泉政権は、今回の総選挙で北朝鮮問題を追い風にしたと言える。

そのような北朝鮮問題が、まもなく一転して逆風になる政治状況が生まれる。
というか、それなりの願望(期待)はあっただろうが、小泉政権は、追い風が逆風になる対北朝鮮政策を自ら採ってしまった。
(願望(期待)とは、約束した拉致被害者の送り戻しを拒否しても、交渉によって北朝鮮を納得させることができるのではないかというもの)


これまでも書いてきたように、昨年9・17のピョンヤン訪問とピョンヤン宣言署名は、米国政権が段取りを付けることで実現されたものである。
手っ取り早く言えば、米国政権に押しつけられたピョンヤン訪問である。
(小泉首相は米国の言いなりと指摘している人がこれを見抜かないのが不思議である)

米国政権は、昨年内の日朝間での決着(援助金)を受けて、今年春には「不可侵文書」及び国交回復交渉開始と刺し違いで北朝鮮の核開発問題とミサイル輸出問題を解決してしまう腹積もりだったと思っている。
6ヶ国協議は予定外のもので、それさえ膠着状態でここまで来ている。

(米国政権は、北朝鮮の核開発や核兵器保有をプロパガンダすれば、日本世論も北朝鮮との交渉を真剣に考えるだろうと思ったようだが、そのような思惑とは違って、拉致問題に激怒している日本はそれでさらに強硬な対北朝鮮政策を支持するようになった。米国では、核兵器保有プロパガンダが一定の効果を上げている)


“国益”のために日朝間を仲介した米国政権も痺れを切らしている。
北朝鮮も、国家の面子と外交交渉の基礎である約束遵守を重視して、小泉政権の願望に応えないかたちで決着を図ろうとしている。

次回の6ヶ国協議が12月に予定されているという報道も流れているが、それが前回と同じように何ら進展なしでは米国も中国も大国としての面子を失う。
このために、米国政権は、最近「不可侵文書」を渡すことを公表した。
あのラムフェルド国防長官でさえ、「不可侵文書」を容認し、日米安保体制に影響がないと説明している。

ここまで来ると、日本政府がピョンヤン宣言を履行するかどうか、とりわけ日本が援助金を支払うかどうかが北朝鮮問題解決で残された最後の障壁になる。
外務省も、次回の6ヶ国協議や「不可侵文書」では拉致問題を取り上げないこともあると予防線を張っている。

しかし、もしも拉致問題が膠着したまま日本が援助金の支払いを約束することで6ヶ国協議が決着を見たら、日本の世論はどう反応するだろう。

小泉政権は、ない智恵を絞ってあれこれの理屈を考えだし、大手メディアを総動員してそれを正当化しようとするだろうが、昨今の世論を考えるとすんなり一件落着というわけにはいかないはずだ。
冷静な人は、それならなぜ、拉致被害者の家族を引き離した状態をずるずると続けてきたのかと考えるだろう。

来年9月までには否応なく総選挙を実施しなければならないことがわかっている小泉政権が、腰砕けの対北朝鮮政策が露呈するかもしれない時期まで延ばすことがないのは、社民党の壊滅的敗北が予測され実際にそれを見たことで自明である。

いいか悪いかは別として米国政権の差配に従わなければならない小泉政権が、米国が仕組んだチャンスを長期の政治的優位性確立のために活かすのではなく、拉致問題で生じた国内世論に理性的に対応できずに束の間の“男ぶりアップ”のほうを選択したツケである。
日朝2ヶ国間交渉で拉致問題も含めて解決し後を米国に委ねる道と、6ヶ国協議のなかで拉致問題が積み残されたまま“国際問題”である北朝鮮の核兵器及びミサイル輸出問題を解決するために援助金を支払うことになる道が、中長期的な日本の政治力としてどれほど違うものになるかはわかるはずだ。

6ヶ国協議という枠組をつくってしまったことで、中国に大きな得点を上げさせることにもなった。

今からでも遅くない。
最悪の外交を避けるために、外交交渉の王道に従った拉致問題の解決すなわちピョンヤン宣言及びその後に交わした約束の履行をすぐさま始めるべきである。
そして、12月の6ヶ国協議の前までに包括的解決の道筋をつけなければならない。

それができなければ、この問題が政局のネタになり、解散風が吹き続けることにもなりかねない。(その総選挙で自民党がどうなるかは言うまでもないだろう)


“据え膳外交”すらこなせない日本政府が、U.N.安保理の常任理事国をめざすなぞ大笑いである。


このような見方が妄想かどうかはそう遠くないうちにはっきりする。


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