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権力は「嘘(うそ)つき」だ。犯罪的であるかどうかは別にして、恒常的に事実を隠蔽(いんぺい)する。その点、権力を失った者は決まって「正直」になる。
道路公団の前総裁が「あってはならないこと」を言い出すのも、権力から非権力への移行がそうさせる。
選挙は「嘘のつきあい」だが、時に非権力の「正直」が交じるから、思わぬドラマが生まれる。
例えば、公示寸前までもめ続けた「小泉VS中曽根・引退騒ぎ」。若返りを強行する非礼宰相と、引退を拒否する「頑迷な新保守の元祖」……と解説されたが、それほど短絡ではない。
行く行く、その「謎解き」をすることにして……ともかく、2003秋、権力の「嘘」は目に余る。例えばマニフェストという嘘。民衆を裏切り続けた政党が「公約」をマニフェストと横文字に変えただけで悔い改めるのか。まあ冷静に見て、これは「嘘」だ。
「嘘」のその2。2大政党時代到来という「嘘」。政権を取るためには「何でもあり」の離合集散。選挙前に慌てて合併した新「民主」は国家観がまるで違う人々が集まっている。安全保障問題では一枚岩とは言いかねる。平気で握手をして、突然、空中分解なのが、権力の常。どうやら、ここにも「嘘」がある。
そんな中で中曽根さんが立ち上がった。権力の座にあった時、嘘をつきつづけた中曽根さんが「正直」になった。僕は中曽根政権の官邸キャップを務めて、何度も中曽根流の「嘘」に翻弄(ほんろう)されたが、彼が「教育基本法、憲法改正が政治日程にあがるのに議員を辞めるわけにはいかない」と言ったのは、はじめて見せた「本音」である。選挙の争点は郵政民営化、高速道路民営化……嘘を言うな! 憲法改正のための選挙じゃないか!と彼は叫んだ。護憲勢力を一掃するための選挙と、何故言わない! 非権力は驚くほど正直だ。
中曽根さんは首相当時、国鉄改革を通じて、国労を支持基盤にしていた当時の社会党をバラバラにした。改革路線を進めながら「古い体質の足腰が弱い護憲政党」を打ちくだく戦略。小泉流も似ている。
憲法改正には「各議院の総議員の3分の2以上の賛成。そして国民投票による過半数の賛成」が必要である。その高すぎるハードルを、小泉さんは(中曽根さんも)「自民+公明+新民主の大多数」で跳び越えることが出来る、と読んでいる。だから、中曽根さんはその瞬間に「改憲の井戸を掘った人間」として参加すると主張し、逆に選挙が終わるまで「改憲の政治日程」を隠蔽したい小泉さんは「改憲の中曽根さん」に退場してもらいたかった。
今回の選挙は改憲準備選挙である。2大政党の戦いに埋没する「力無き護憲勢力」は果たして生き残るのか。最大の見どころである。
[2003年11月4日東京朝刊から]
http://www.mainichi.co.jp/eye/2003senkyo/shugiin/kantaro_ME/art/031104M123_0101001E10DA.html