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2003.10.26
【総選挙・日本の選択】[13]
マスメディアは「言論の自由」を尊重しなければならない
「言論の自由を殺すのは、真理を殺すことである」(ミルトン)
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『月刊日本』11月号に「『言論の自由』を放擲したマスメディア――理想を喪失した日本のジャーナリズム」と題する私のインタビュー記事が掲載された。以下、主要部分を紹介する。
―― 日本テレビは、評論家中村慶一郎氏が『月刊日本』9月号に書いた論文が「放送法に抵触する恐れがある」との理由で、中村氏がそれまで出演していた日本テレビのレギュラー番組から降板させた。この問題をどう考えるか?
【森田】これは最近のわが国のテレビを中心とするマスコミの堕落を象徴する事件であり、実に異常な事態だ。この問題を考える前に、まず指摘しておきたいことがある。
私はテレビが厳守すべき3つの原則があると考える。
その第一は「常識」だ。テレビ局は、人類社会が長期的に積み上げてきた常識を守るべきであるということだ。
第二は「モラル」である。国民に対する情報の送り手であるマスコミには、相当高度なモラルが要求される。モラルと同時に、マスコミが決して失ってならないのは「理想」である。理想を失ったジャーナリズムは、単なる瓦版に過ぎない。ジャーナリズムは、モラルを厳守しつつ、絶えず理想を求め、報道という仕事に携わらなければならない。
第三は「法律」である。テレビ放送事業者は放送法を厳守することが求められている。放送法は「放送の不偏不党」と「健全な民主主義の発達に資すること」と規定しており、この原則を逸脱してはならないと、私は考える。
この3つの原則を厳守することによって、はじめてテレビ報道は国民に信頼されるものになると私は考える。
―― 最近のテレビ報道、特に今回の自民党総裁選においては、森田さんの言う3原則を逸脱していると思うが、どうか。
【森田】確かに最近のテレビ報道は明らかにこの3原則を逸脱している。特に今回の自民党総裁選に当たっては異常とも言えるような逸脱行為が行われた。
放送法に規定される「不偏不党」は、各政党だけでなく、政治家個人に対しても守られなければならない。自民党総裁選のような場合にも、すべての候補者に対して公平さが保たれなければならないはずだ。
しかし今回の総裁選では、意図的に、現職の小泉純一郎総裁には有利に、他の亀井静香、藤井孝男、高村正彦の3候補に対して時には侮辱的と思われるような報道姿勢をとり続けた。これは「常識」も「モラル」も逸脱しており、放送法にも違反する行為だと私は考える。
―― 森田さんにテレビ局から圧力がかかったことがあるか?
【森田】私の場合も複数のテレビ局との間でトラブルがあった。総裁選の最中、某テレビ局の報道番組担当者から電話があり、「わが社は今回の総裁選に関して小泉総裁の批判をしてはならないとの方針を決定した」と私に通告してきた。
そこで、私はその担当者にこう伝えた。「政権・政治権力を批判することは私の重要な仕事である。権力というものは、とかく傲慢になったり、逸脱行為をする危険性があり、われわれ言論人はそれを監視する責任を視聴者である国民に対して負っている。権力のトップの座にある小泉氏を批判してはならないと言うなら、私はあなたのテレビ局の番組への出演を拒否し、私は出演拒否した理由をあらゆる場を通じて国民に知らせるつもりだ」
その直後、同テレビ局の幹部から、「先程の番組担当者の話は彼の個人的見解にすぎない。社として小泉総理批判を禁じたということはない。担当者の発言を取り消し、本人に謝罪させる」との趣旨の電話があった。当人の謝罪があり、私はこれを受け入れ、決着した。
今回の自民党総裁選では、某テレビ局のようなケースが他にもあったようだ。社のトップが小泉批判を禁じるという方針を決めなくとも、報道セクションの一部には小泉批判を封じ込めるような雰囲気のあったことは間違いない。
――今回の自民党総裁選は9月8日に告示されたが、テレビや新聞はこの時点で、早くも小泉総裁再選の勝利確定を報じていた。
【森田】私が異常だと思ったのは、告示2日前の9月6日の新聞報道だ。毎日新聞、朝日新聞は1面トップで、他の新聞もかなり大きな紙面を使って、「すでに総裁選の流れは決まった」と報じ、総裁選の公示前にすでに小泉総裁再選確実との情報を流した。これらの報道が、全国140万人の自民党員の票の流れに決定的な影響を与えたことは間違いないだろう。私は自分のホームページでこの問題を取り上げ、党員票の行方を決めてしまうような報道は行うべきではないとの意見を発表した。
自民党総裁選告示の日(9月8日)、テレビ東京の夜の報道番組「WBS」への出演依頼を受けた。テーマは自民党総裁選。同席したテレビ東京の政治部記者が、まず「われわれの取材によると国会議員票と党員票はともに過半数以上が小泉総裁支持で固まっており、総裁選の流れはすでに決まった」と発言した。
そこで私は「冗談じゃない。総裁戦は今日始まったばかりだ。各候補が自らの政策を訴えるのは今日からだ。にもかかわらず、告示の当日に、総裁選の行方はすでに決まったというような傲慢な発言はすべきでない。ジャーナリズムのあり方としても問題があると私は考える」と、かなり厳しくコメントした。
私が厳しいコメントをしたためか、その後、テレビ東京からの出演依頼は激減した。
―― 大袈裟に言えば、日本のテレビ・ジャーナリズムには「言論の自由」はないと言っても過言ではありませんね。
【森田】第二次世界大戦後、良心的ジャーナリズムが辛うじて守り抜いてきた「言論の自由」が、ここに来て逆に潰え去ろうとしていると感じる。時の権力に迎合するという本来のジャーナリズムが決して行ってはならないことを、今回の自民党総裁選では平然と行った。しかも、大新聞とテレビが社をあげてそれをやった。
―― なぜ、こうした状況が生まれたのか?
【森田】基本的には新聞やテレビの記者の資質に重大な関わりがある。彼らは官庁のキャリア組と同様、かなり難しい入社試験に合格して入社する。一般的に言えば、彼らは受験勉強用の知識はあるが、人間としての知恵やモラルに欠ける傾向がある。
アインシュタインは「教育とは学校において習い覚えたことを、すべて忘れた後に残るもののことである」と言っているが、学歴エリートには、学校で習い覚えたことを忘れた後には、何も残っていない。ただ一つ、彼らに残るのは「俺はできる男なのだ」という「傲慢」だけだ。こうした学歴エリートは、ちやほやする人に靡く傾向がある。
小泉政権は、新聞やテレビの記者をおだてあげ、マスコミを通じて政権の人気浮揚を図り、それを自らの権力維持に利用するという邪悪な権力ゲームをやっているのだ。
ギリシアの哲学者のアリストテレスはこう言っている。「誇りを失った政治家は、政治家ではない。利益を上げられない実業家は、実業家ではない。理想を失った学者は、学者ではない」。
私は、ジャーナリストは学者の一翼を担うべき存在だと考える。理想を失ったジャーナリストはジャーナリストとして不適格者であり、ジャーナリストの資格はない。現在、ジャーナリズムの基本とすべき人間愛、恵まれない人々に対する優しい気持ちを失い、没理想の人たちが新聞・テレビ各社の中枢に座っている。
彼らは浅はかな知識にもとづいて、今回の自民党総裁選で小泉を支持し、亀井、藤井、高村の3氏を貶める傾向の報道を流し続けた。某テレビ局のキャスターなどは「亀井候補がテレビに出演すれば、それだけで小泉候補の支持率が上がる」などと平然と発言していた。許しがたい発言だ。
政治権力はこうした傲慢なマスコミを巧みに利用し、権力内部に取り組んでゆく。こうした傾向を色濃くもっているのが小泉政権であり、私はここに小泉政権の退廃があると考えている。
小泉氏は、実は2年前の春の自民党総裁選で、某広告会社にプロジェクトチームを作り、総裁選戦略を研究させた。彼らは米国型のメディア活用方法を取り入れた。広告会社から提案されたのが、例の「自民党を変えます」「日本を変えます」「構造改革なくして景気回復なし」という、すべて15秒以内のスローガンの羅列――つまり、ワン・フレーズ・ポリティックスの手法だ。
この手法を駆使すれば、小泉氏の発言はテレビ・ニュースの時間内にすべて収まることになる。長い発言は途中でカットされるから、他の候補者の主張はテレビ視聴者には理解しがたい。この「ワン・フレーズ・ポリティックス」の手法は、商品を売る広告テクニックを政治の世界に利用したと言うことだ。
こうした米国流の手法はやり過ぎであり、政治を堕落させる原因となる。米国は大統領候補が立候補する際には有権者のウケを狙って整形手術までするという国になったが、わが国もついにそうした「偽善の政治」が横行する国になってしまった。
小泉首相が2年半前の2001年春に総理大臣に就任して以来、私は小泉政権を「巧言令色鮮仁」という論語の一節を引用して批判し続けてきた。小泉政治は「厚化粧」の政治だ。上手な言葉を使い、厚化粧して、言葉を飾り立てることは、国民を愛する真の心が少ないことを、実は意味している。
小泉流のワン・フレーズ・ポリティックスの手法にテレビ・メディアが取り込まれた。テレビ・メディアが政治権力に取り込まれることによって政治は堕落した。政治の堕落は日本人を堕落させる。cそして結局はわが日本民族の将来を危うくする――と、私は警告したい。
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C0630.HTML