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(回答先: Re: 日本は“疑わしきを罰する”国になってしまった・・・ 投稿者 エンセン 日時 2003 年 10 月 27 日 15:46:17)
最高裁裁判官国民審査のために:
「人権と報道」関連で注目される最近の最高裁判決と決定(10.26)
11月9日は衆議院議員選挙の日だが、同時に実施されるイベントに、「最高裁判所裁判官国民審査」がある。
マスコミにほとんど無視され、審査対象者についての必要な情報が十分に提供されていないこの審査制度は実質的に機能しているとはとてもいえないが、それでも、内閣に任命される裁判官を国民が罷免できる唯一の手段であり、一人でも多くの人が最高裁判決に注目し、やめさせたい裁判官に「×」をつけることには意義がある。
ここで、国民審査の参考のために、「人権と報道」関連で注目される最近の最高裁判決・決定と、裁判にかかわった裁判官を紹介しよう。
◎=裁判長 ○=裁判官
今回審査対象の裁判官(敬称略)
出身
ダイオキシン野菜報道損害賠償裁判
電力会社女性社員殺害事件裁判
深澤武久(第1小法廷)
弁護士
○
濱田邦夫(第3小法廷)
弁護士
○
横尾和子(第1小法廷)
行政官
◎
上田豊三(第3小法廷)
裁判官
○
滝井繁男(第2小法廷)
弁護士
藤田宙靖(第3小法廷)
学者
◎
甲斐中辰夫(第1小法廷)
検察官
○
泉徳治(第1小法廷)
裁判官
○(補足意見)
島田仁郎(第1小法廷)
検察官
○
なお、審査対象の裁判官の略歴や投票に当たっての注意については、「日本民主法律家協会」のページを参照。また最高裁のページには、各裁判官の紹介があり、各人がかかわった主要な裁判の結果を閲覧できる。
10月16日 ニュースステーション「ダイオキシン野菜報道」損害賠償裁判
テレビ朝日系列のニュース番組「ニュースステーション」は、1999年2月1日、ダイオキシン問題の特集で、埼玉県所沢市産の「葉っぱ物」野菜に高濃度のダイオキシンが検出されたと報道したが、所沢市内の(複数の)農家が、この報道によって価格暴落などの損害を受けたとしてテレビ朝日に賠償と謝罪広告を求めて訴訟を起こしていた。
この事件は裁判とは別に、政治的に利用され、テレビ朝日の社長と報道局長が参考人として国会に呼ばれるという事態に発展した(詳しくはこのページ参照)。
裁判では1、2審はテレビ朝日の勝訴となっていたが、農家側が上告した上告審で、最高裁第1小法廷(横尾裁判長)は10月16日、1、2審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻す判決を言い渡した。判決は最高裁のウェブページにも掲載されている。
報道後に明らかになったように、ニュースステーションが「葉っぱ物」として公表した1gあたり最大3.80pg(ピコグラム)というダイオキシン濃度(環境総合研究所の調査による)はせん茶のものだったが、2審は放送が引用しなかった摂南大学薬学部による調査を持ち出してきた。摂南大が所沢産の白菜から検出した値は1gあたり3.4pgで、せん茶の3.80pgに匹敵していたことから、2審は所沢産の野菜に高濃度のダイオキシンが検出されたという放送事実に「真実性の証明があったと解するのが相当」としていた。
これに対し最高裁はまず、「新聞記事等の報道の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについては、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべき」であるという過去の最高裁判例をテレビにも適用。さらに番組で放送された事実がどのようなものかは「報道番組の全体的な構成、これに登場した者の発言の内容や、画面に表示されたフリップやテロップ等の文字情報の内容を重視すべきことはもとより、映像の内容、効果音、ナレーション等の映像及び音声に係る情報の内容並びに放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮して、判断すべきである」との基準を示した。
最高裁はこの基準に照らして放送内容を検討し、「ほうれん草を中心とする所沢産の葉物野菜が全般的にダイオキシン類による高濃度の汚染状態にある」という放送事実の重要部分については、以下の理由から「真実であることの証明があるといえない」とした。
一般の視聴者は、放送中に測定値が明らかにされた「ほうれん草をメインとする所沢産の葉っぱ物」にせん茶が含まれるとは考えないのが通常であり、番組が引用した環境総合研究所による調査では、せん茶を除外した測定値が低かったこと。
一般の視聴者は、放送された葉物野菜のダイオキシン濃度のとりわけ最高値から強い印象を受け得るが、採取の具体的な場所も不明確な、わずか1検体の白菜の測定結果が、放送された最高値に近いというだけでは、「所沢産の葉物野菜が全般的に高濃度の汚染状態にある」という事実を証明することはできないこと。
泉裁判官は補足意見(注)として、所沢市の農家の人々が損害を被ったとすれば、その根源的な原因は所沢市に乱立していた廃棄物焼却施設にあり、この放送を含む一連のダイオキシン問題報道は、廃棄物焼却施設に焦点を合わせ、これを規制してダイオキシン類汚染の拡大を防止しようという公益目的に出たものであることや、「ダイオキシン類対策特別措置法」などの立法措置を引き出す一因となってその目的を果たし、立法措置によって長期的にはダイオキシン汚染の拡大を防ぎ、所沢の農家の人々の利益擁護に貢献するという面もあるということを指摘し、多数意見にくみしつつも一連の報道の全体的な意義を評価した。
この最高裁判決で注目される点は、農家に対する報道被害の問題と、ダイオキシン汚染にかかわる問題を峻別し、前者についてはテレビメディアの特性をふまえて放送側に厳しく対応し、後者については汚染防止に貢献した放送の役割を擁護したことだろう。判決にかかわった5人の裁判官は全員、今回の国民審査の対象になっている。
(注) 「補足意見」とは法廷意見(多数意見)に賛成する立場から、さらに付随的な事項や念のための説明などをつけ加え、法廷意見を補強しようというもので、法廷意見の結論に賛成するが理由付けにおいて意見を異にする「意見」や、法廷意見の結論そのものに反対する「反対意見」とは異なる。 インターネット法律協議会の最高裁ウォッチャーページによれば、最高裁判決の「意見」制度は国民審査のための資料となることが目的という。
10月20日 電力会社女性社員殺害事件裁判
1997年3月、東京都渋谷区のアパートで遺体として発見された事件の刑事裁判。5月に不法残留で有罪判決を受けていたネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリさんが強盗殺人容疑で逮捕された。1審で無罪となったが、東京高裁は無罪後、新証拠もないのに職権で勾留を決定。2審で逆転有罪、無期懲役判決となった。
ゴビンダさんは1、2審とも一貫して無罪を主張し、犯行を結びつける直接証拠がなく、冤罪の可能性が高い。
ところが最高裁第3小法廷(藤田裁判長)は10月20日付で、ゴビンダさんの上告を決定し、2審判決を支持した。
この決定は裁判長と裁判官全員一致の意見で、記録を精査しても2審判決に重大な事実誤認は見当たらないとしたが、証拠についての判断は示されなかった。10月1日には弁護団が上告趣意書を補強する補充書を提出したばかりだった。真相の究明にフタをする決定といわざるを得ないだろう。23日には弁護団は最高裁決定に対し異議を申し立てた。
「無実のゴビンダさんを支える会」は決定後の声明で、決定にかかわった4人の裁判官について「日本の司法の無能性と人種差別と官僚的硬直によって、日本社会そのものの不幸を立証した点で、特筆されるべき人々」と評している。彼らのうち金谷利広裁判官を除く3人が、今回の国民審査の対象になっている。
http://www.aurora.dti.ne.jp/~osumi/d200310.html#26