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貴公子や高僧はかつらをつけた御者に戦車を操らせ、
昂然と桂冠を載いて時代の栄華を味わう。
その足元で、見下され、見捨てられ、槍に取り囲まれた男たち。
傷だらけの軍にあって死ぬまで戦う者たち、
戦場の埃と轟音と絶叫に茫然と立ちすくむ者たち、
頭を割られ、目に流れ込む血をぬぐう事もできぬ者たち。
胸に勲章を飾った将軍たちは王に愛でられ、
意気揚々と馬にまたがり、高らかにらっぱを鳴らして行進する。
その陰で、泥にまみれて城を攻め、無名のまま死んでゆく若者たち。
だれもが美酒と富と歓楽を謳い、
堂々たる美丈夫の君主を讃えようとも
私は土と泥を謳い、埃と砂を謳おう。
だれもが音楽と豪華と栄光と黄金を愛でようとも、
私は一握の灰を、口いっぱいの泥を謳おう。
雨と寒さに手足を失い、倒れ、盲いた者どもを讃えよう。
神よ、そんな者どものことをこそ
謳わせたまえ、語らせたまえ ―――アーメン
ジョン・メースフィールド「神に捧ぐ」