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(回答先: Re: 野ばら 詩:ゲーテ 投稿者 乃依 日時 2003 年 12 月 20 日 00:52:31)
ゲーテはライプチヒで健康をそこね、フランクフルトの父のもとで1年半心身を養った後、1770年4月にシュトラスブルクに移った。そしてシュトラスブルク郊外の村ゼーゼンハイムで牧師の娘フリデリケ・ブリオンに会うのである。この出会い、そして彼女との愛はゲーテの生涯にとって決定的な意味を持つことになったのである。大学時代を過ごしたライプチヒが「当時小パリといわれて社交や流行の支配する華麗な都会であったのに対し、シュトラスブルクでは一歩外に出れば美しい自然の風景と活力ある民衆生活に触れることができ、ルソーの『自然に帰れ』の声に呼応することができた」のである。そのような状況のもとでフリデリケ・ブリオンに会い、「社会的慣習や社交などに制約されない、素朴な環境のなかでの自然の感情に満ちた愛」に目ざめたのである。そしてゲーテにとっては今までとは違った、自然で力強い「ゼーゼンハイムの詩」が生まれたと言われている。その1つが「野ばら」であり「五月の歌」である。ここに「五月の歌」の一節をあげよう。勿論、ドイツ語の原詩は韻をふんでおり、訳詩より遥かに素晴しい響きがある。
「五月の歌」
なんと晴れやかな おんみは晴れやかに祝福する、 そのように愛する、
自然のひかり 生命わく野を、 自由なひばりは
日はかがやき 花にけぶる 歌と高みを、
野はわらう。 みちみちた世界を。 朝の花は空のかおりを、
……… そしてわたしはきみを、
おお愛よ 愛よ。 おお少女よ 少女よ、 湧きたぎる血で。
黄金なすその美しさ、 わたしは君を愛する!
峰にかかる きみの眼はかがやく! ……………
あの朝空の雲に似て きみはわたしを愛する!
なんと素朴で若々しく喜びに満ち満ちて、それを身体全体で表現しているではないか。これがフリデリケ・ブリオンに対する若きゲーテの自然の愛を最も端的に表わしている詩であるように感じる。