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【デスラー症候群】 vol.3
●独裁者のイメージを変えたデスラー
アニメのような映像娯楽作品の中には、ものごとのイメージを大
きく変えてしまうものがある。たとえば「ルパン三世」がそうであ
る。泥棒がヒーローになるなんて、それまでのアニメの世界の常識
では、考えられなかったことだった。
それでも、「ルパン三世」は、泥棒の実社会におけるイメージま
で変えてしまうことはなかった。それはおそらく「ルパン三世」の
世界があまりにも現実離れしているからだろう。それ故、社会に重
大な悪影響を及ぼすことにはならなかった。
これに対し、「宇宙戦艦ヤマト」の「デスラー総統」は、独裁者
のイメージを大きく変えてしまった。
それまで独裁者といえば、自由・平等・真実・誠意・愛の敵であ
り、また何より正義の敵であった。ところが、デスラー総統は、そ
うした独裁者のイメージを一変してしまったのである。
独裁者は、政治と深いかかわりのある概念である。たとえ政治に
無関心でも、現実世界で生きている限り、政治と無縁ではいられな
い。それに、独裁者は、政治の世界だけに存在するものではない。
それ故、極めて現実的な問題となるのである。
一方、デスラー総統が、SF・アクションものなどでよく見かけ
るような「超自然的なパワーをもつキャラクター」ではなかった。
このことが、彼を極めてリアルな存在にしてしまった。
さらに、ガミラス人の名前が、ナチス・ドイツの高官たちの名前
を模したものであったこともまた、さらにリアリティーを高める要
因となってしまった。
かくして、独裁者の誤ったイメージが、ヤマト・フィーバー世代
の脳に、しっかりと擦り込まれていったのである。
●もともとは独裁に批判的だったヤマト
もっとも、「宇宙戦艦ヤマト」は、もともとは独裁を肯定するよ
うな作品ではなかった。少なくとも「映画・さらば宇宙戦艦ヤマト
・愛の戦士たち」(以後「さらば…」と略す)のころまでは、独裁
を批判する作品であった。だからこそ、最初のTVシリーズ(以後
「ヤマト1」と略す)では、ガミラスは滅びることになるのである。
「さらば…」では、さらに、最後の生き残りだったタランとデスラ
ー総統も死んでしまう。これらのことから、
「独裁は、結局、このような悲惨な結果に終わる!」
という、すばらしい戒めの物語であったことがわかるだろう。
他にも証拠がある。たとえば、このセリフだ。
「彗星帝国に身を寄せていたとはいえ、私の心は、はるかに君たち
に近い。」
これは、「さらば…」で、デスラー総統が、自分の最期が近くな
った時に語ったセリフである。実は、ガミラス星は、すでに「ヤマ
ト1」の段階で、死にゆく星であった。地球を攻撃したのも、移住
先を得るためであった。これに対し、彗星帝国は、ただただ、独裁
者ズォーダー大帝の支配欲・征服欲のために、攻撃・侵略を繰り返
していたのである。これらのことから、
「独裁の行き着くところは、結局、非人道的で醜い極悪社会!」
と諭す物語であったことがおわかりいただけるだろう。
このように、宇宙戦艦ヤマトは、当初は独裁には全く批判的だっ
たのである。
●独裁批判から独裁容認へ
ところが、「宇宙戦艦ヤマト2」(以後「ヤマト2」と略す)の
ころから、徐々におかしくなり始めるのである。
このTVシリーズでは、デスラー総統は死ななかった。「ヤマト
の諸君」には、多くの犠牲者が出たにもかかわらず。
なぜ、独裁者デスラーを生かす必要があったのか?
なぜ、その後の作品で、ヤマトに味方する準ヒーロー的な存在に
なってしまったのか?
こうした問題を考えると、やはり独裁容認への転向があったとし
か言いようがないのである。
「宇宙戦艦ヤマト3」(以後「ヤマト3」と略す)になると、も
う独裁を完全に受け入れきってしまっている。そして、この作品こ
そ、マルクス主義者たちが大喜びしそうな要素が最も露骨に取り入
れられた作品なのである。
たぶん、この作品だけを見たら、宇宙戦艦ヤマトは「独裁美化の
作品」にしか思えないに違いない。詳しいことはいずれお話するが、
待ちきれない方は、是非、この「ヤマト3」を御覧になっていただ
きたい。この作品を見るだけでも、デスラー症候群の人たちが、な
ぜ、あのような考え方をするのかが見えてくるはずである。
●異常な時代
それにしても、なぜ、宇宙戦艦ヤマトは、当初の独裁批判から独
裁容認に変わってしまったのだろうか?
それは、当時がどんな時代だったのかを知ればよくわかる。
ソ連が崩壊し、北朝鮮の罪状が暴かれた今日においては、ようや
くマルクス主義(社会主義、共産主義)を批判できるようになって
きた。したがって、独裁批判の方針を維持することはある程度可能
であろう。
ところが、ヤマトが製作されていた時代は、そうではなかった。
今では消滅寸前の社民党も、そのころは野党第一党。自民党と堂々
と渡り合えるほどの勢力を誇る政党であった。(ちなみに、そのこ
ろの政党名は社会党)。それぐらいマルクス主義が国民の支持を集
めていたのである。
マルクス主義者たちは、東側の軍備(特に核兵器)に対しては非
常に寛大だったが、日本を含めた西側の軍備に対しては、病的なく
らいに厳しかった。そして、何かというと、すぐ「右翼的!」とか
「軍国主義につながる!」といいがかりをつけまくった。
そんな中、「宇宙戦艦ヤマト」も「戦争美化作品」と難癖をつけ
られることになる。それぐらい当時は異常な時代だった。このため、
マルクス主義者たちの御機嫌をとらねばならなかったのである。
そんな配慮が最初に見られたのが、「ヤマト1」の第二話である。
旧・帝国海軍の戦艦大和が出てくるシーンがあるのだが、最初の版
ではバックに「軍艦マーチ」が流れていた。ところが、何度目かの
再放送版では、「軍艦マーチ」はカットされていたのである!
軍艦マーチが戦争美化につながるのなら、パチンコだって戦争を
美化するものになるはずであろう。事実、店内に流れる軍艦マーチ
は、パチンコ・オタクたちの闘争心を煽っているのだから。そうい
えば、パチンコ店の経営者には韓国人や朝鮮人が多いそうだが、こ
ういうことがどうして問題にならないのか?、全く不思議である。
とにかく、そういう異常な時代であったから、独裁容認に変わら
ざるを得なかったのである。何しろ、マルクス主義は、「平等の思
想」とか「民主主義の思想」と言いながら、実際には独裁政治にし
かならない思想である。そういう思想を盲信する人たちの御機嫌を
とるためには、独裁容認にならざるを得ないのは当然のことであろ
う。
しかしながら、当時の青少年たちは、そこまで事情を把握できる
ほど頭が良くなかった。そんな彼らに、そして、その後の社会に与
えた影響を考えると、宇宙戦艦ヤマトの転向は、やはり見過ごせぬ
問題であると言わざるを得ないのである。
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発行者:media( media@catnip.freemail.ne.jp )
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