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火星探査車のプログラム復旧に奮闘する技術者にインタビュー(wired)
http://www.asyura2.com/0311/jisin10/msg/387.html
投稿者 エンセン 日時 2004 年 2 月 03 日 17:28:49:ieVyGVASbNhvI
 

(回答先: 火星の2機目のローバーに電力低下【ロイター】 投稿者 HAARP 日時 2004 年 1 月 29 日 01:41:55)

 

火星探査車のプログラム復旧に奮闘する技術者にインタビュー
Xeni Jardin


2004年1月30日 2:00am PT  『マーズ・エクスプロレーション・ローバー』の航行ソフトウェア設計者、グレン・リーブズ氏はこのところあまりよく眠れていない。

 その理由の1つは火星標準時間にある。火星の1日は24時間39分で、人間の体には負担がかかるが、今回のミッションの間、リーブズ氏を含む火星探査車管制チームはずっとこの時間に合わせて生活している。

 無人探査車『スピリット(写真)』と『オポチュニティー』は、火星での生命の可能性を確かめるために8億2000万ドルをかけて――さらに何百人もの地上勤務の科学者や技術者を動員して――探査を行なっている。

 しかし、1月21日(米国時間)にスピリットとの交信が途絶えてから、火星時間でここ何日間かは、リーブズ氏とその同僚たちにとってはとくに長かった。管制からスピリットに指示を送ることはできたし、この探査車が指示を「聞いている」証拠である発信音も確認できた――しかし、計画していたその他の交信は失敗した。スピリットが勝手に再起動していることに気づいた米航空宇宙局(NASA)の技術者たちは、直ちにデバッグを開始した。

 その後交信は再開し、スピリットからの新しい画像が地球に送られてきた。しかしスピリットは、依然として技術者たちが「障害」と説明する状態にある。

 NASAの技術者たちはどのようにしてスピリットと交信を再開できたのか? また、再起動を繰り返すこの金食い虫の探査車は、近いうちに正常に戻って科学ミッションを完了できるのだろうか? ワイアードニュースは、カリフォルニア工科大学(カリフォルニア州パサデナ)内にあるNASAのジェット推進研究所(JPL)に勤務するリーブズ氏に話を聞いた。

ワイアードニュース(以下WN):火星で何が起こったのですか?

グレン・リーブズ氏(以下敬称略):探査車を操作する技術システムは遠距離通信の問題に対応できるよう設計されている。数ヵ月にわたり、探査車が交信を行なう時刻を事前に指示できるようになっているので、探査車は自動的に起動し、交信を行なう。

 スピリットは地球にデータを送信するアンテナを3基搭載している。11Kbpsと比較的高速に情報を送信する高利得アンテナ、40〜300bpsで送信する低利得アンテナ、そして周回衛星と交信するUHFアンテナだ。問題が発生したのは、オーストラリアのキャンベラ基地からスピリットと交信している最中だった。キャンベラは悪天候で、信号が途切れかかっているのに気づいたのでアンテナの位置を変えた。データの脱落は続いたが、異常とは思えなかった。その後、突然交信が途絶えた。火星時間でその日の午後2時に予定されていた次の交信は全く行なえなかった。そして周回衛星がUHFアンテナ上を通過する火星時間午後5時にもうまく行かず、交信できなかった。「うーむ、奇妙だ」という状況から「そうだな、われわれは確かに問題に直面している」という状況に変わったのだ。

WN:危機の重大さを認識したとき、何をしましたか?

リーブズ:スピリットに直ちに応答するよう指示した。そこにいるという応答はあったが、問い合わせに対しては正しく応答できなかった。探査車のシステムは、起動後しばらくはその状態を保ってから自動的にリセットするというサイクルに陥った――勝手に再起動を繰り返しているパソコンのようなものだ。

 しかしこのシステムは、再起動からまた再起動するまでに、一定時間――少なくともだいたい1時間――は作動するよう、あらかじめ設定されている。そのうちに、再起動が起きる時刻を突き止め、それに合わせてコマンドを送る時刻を決定できた。

 数日後、われわれはフラッシュメモリが壊れている可能性があると判断した。そこで、「フラッシュメモリ内のファイルシステムを使わず――RAMの一部を代用せよ」といった意味の命令を出した。われわれはこれを「障害モード」と呼んでいる。こうしてスピリットを修復し、それ以来このモードで機能させている。

 現在、デバッグによって問題の原因を特定しようとしている。このシステムは毎回起動時にディスクチェックのようなことを行なう――パソコンの『ノートン・ユーティリティーズ』みたいなものだ。このツールを使って、フラッシュメモリそのもので異常が起こっているか、フラッシュメモリは正常だが想定以上の情報で一杯になったファイルシステムへの対応に追われているのだろうと結論付けた。

WN:現在、スピリットの異常の原因を特定するうえで最大の難関となっているのは何でしょう? また、この技術的問題をどのように解決するつもりですか?

リーブズ:対処できるチャンスが訪れるたびに何を行なうか、前もって慎重に計画しなければならない。こうしたチャンスは1日に3回ほどしか訪れず、通信確保のために火星から地球が見えている状態にあることが必要だ。

 1回目のチャンスでは、リセットの原因になっているのがシステムのどの部分なのかを調べるスクリプトを探査車で実行する。2日間やってみたが今のところうまくいっていない。

 2回目のチャンスでは、システムを地球で再現できるよう、224メガバイトのフラッシュメモリによるファイルシステムの内容の一部を送ろうとしている。しかし、考えてみてほしい――調子がいい日でも送信できるのは最大で5メガバイトなので、別の手法が使えなければファイル全体をコピーするには何日もかかってしまう。この方法はできれば避けたいが、緊急の対策として行なっている。

 3回目のチャンスでは、周回衛星との交信を試みる。

 システムを「障害モード」に切り替えているため、整合性のチェックは手動で行なっている。しかし、この作業には時間がかかる。1つ1つきちんとチェックしたいからだ。

 どの作業、どの時間も無駄にはできない。われわれの「ダイヤルアップ・サービス」は、本当にどうしようもなく遅いと言っていい。何かやり取りするのに永遠といってもいいぐらい時間がかかるのだ。

WN:探査車ではどんなソフトウェアが稼働していますか? オペレーティング・システム(OS)には私たちになじみの深い一般的なものが使われているのでしょうか?

リーブズ:企業が所有権を持つ商用OS――米ウインドリバー・システムズ社の『VxWORKS』――を使っている。

WN:それは1980年代に登場した組み込みシステム向けの古いOSで、仮想記憶[実際に搭載している以上のメモリを扱う技術]も使えませんね? その古さが問題の一因となっているのではないですか?

リーブズ:ありがたいことに、このOSはわれわれととても相性がいい。1980年代後半からこのOSを使っているが、われわれのニーズに非常に合っている。『マーズ・パスファインダー』でも使われているし、米ロッキード・マーチン社製の宇宙探査機や2機の周回衛星でも使われている。

 われわれの場合、ソフトウェア選定で重要なのは成熟度とサポートだ。必要なのは広いユーザー層で長い間使われてきたものだ。われわれは米グリーン・ヒルズ・ソフトウェア社の製品も使っている。

WN:ところで、火星基準の睡眠サイクルはどのような影響がありますか?

リーブズ:このところ、私は平均して5、6時間寝ている。そう悪くないが、(地球の)夜の時間と完全にずれてしまうことがある。火星は地球よりもゆっくりと回転しており、1日の時間は火星のほうが39分長い。われわれは、探査車が起動する時間には起きている必要があり、午前11時ごろに通信し、地球が火星の地平線に沈む午後3時30分ごろまでにしかるべき作業を済ませなければならない。

WN:火星標準時に合わせた生活はどのくらい続きそうですか?

リーブズ:少なくともあと1〜2日は続くが、その後しばらくの間は通常の地球のサイクルに戻れるだろう。正直なところ、あと3〜4日ですべて解決しないものかと思っているのだが。


[日本語版:高橋達男/高森郁哉]

http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20040202302.html

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