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昨年12月25日に火星周回軌道に投入されたヨーロッパ宇宙機関(ESA)の火星探査機マーズ・エクスプレスの周回機は、水の存在を発見したり、4000kmも広がる巨大な谷を持つエキサイティングな火星の地形を次々とわれわれに見せたりするなど、火星上空で順調に作業を進めている。
以下、マーズ・エクスプレスの成果について装置別に紹介しよう。
高解像度ステレオカメラ(HRSC: High Resolution Stereo Camera)によるデータは、手始めにマリネリス峡谷について詳細な情報を提供してくれた。この巨大な渓谷は、火星表面4000kmにもわたり広がっており、中間地点では深さ7km、幅が600kmに達していることがわかった。4000kmというとアメリカ大陸の東から西までの距離に相当する。また、侵食や、川の流れによってできたような地形なども明らかにするなど、膨大な情報を次々と収集している。1月23日の時点で、約200万平方キロメールにわたる火星表面の画像を撮り終え、100ギガバイト以上のデータを送ってきている。
可視光・赤外線鉱物スペクトロメータ(OMEGA: Visible and Infrared Mineralogical Mapping Spectrometer)は、火星の南極冠に二酸化炭素の氷と氷水が存在することを明らかにしている。
全球フーリエスペクトロメータ(PFS: Planetary Fourier Spectrometer)は、特に赤外線領域のスペクトルを調べ、火星における二酸化炭素の分布が一様でないことを示した。二酸化炭素以外にも、水や一酸化炭素、メタンやホルムアルデヒドなどの成分の分布も調べることになっている。
紫外・赤外大気スペクトロメータ(SPICAM: Ultraviolet and Infrared Atmospheric Spectrometer)は、火星を、大気を通した場合と通さない場合とに分けて撮影することで、オゾンや水蒸気の分布を明らかにする装置だ。データからは、オゾンの少ない場所ではよりたくさんの水蒸気が存在していることがわかっている。
さらに、地下探査レーダ高度計(MARSIS: Sub-Surface Sounding Rader Altimeter)は、火星地下の層構造や氷の層の存在を電波を飛ばすことによって探るための装置で、使用開始は4月末に予定されている。
これまでに挙げた結果のほかにも、たくさんのカラー画像、近赤外線データ、紫外線スペクトルなどさまざまなデータが得られている。これら最高レベルのデータの解析が進めば、火星表面の火山性の地形や谷のある範囲、地殻について、さらに重要な情報がもたらされることが大いに期待される。現在の軌道での観測は2月中旬まで続けられる予定である。また、NASAの火星探査機スピリット、オポチュニティーによる探査結果と合わせた総合的な分析も楽しみだ。
なお、マーズ・エクスプレスの探査車「ビーグル2」は、12月19日に切り離され、12月25日に火星に着陸を予定していたのだが、大気圏突入後着陸を目の前にしながら連絡が途絶え、残念ながら行方不明となったままである。
[2004年1月28日]