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江戸時代の宝永噴火(1707年)以降、静かな状態が続いてきた富士山。マグマの活動に関連があるとされる低周波地震が00〜01年に頻発し、昨年9月には山ろくで陥没と噴気が見つかった。国はハザードマップ作製など対策を進め、以前はあまり取り組まれてこなかった研究も急速に進む。その結果、長崎県雲仙・普賢岳とほぼ同規模の火砕流が起こるなど、予想以上に活発だった火山活動の姿が浮かび上がってきた。噴火が切迫しているわけではない。けれど、活火山・フジはあなどれない山だ。【鯨岡秀紀、河内敏康】
■活火山の“証拠”
最大で直径20メートルもの陥没が見つかった富士山東側の標高約1500メートルの斜面。昨年12月14日に日本大の宮地直道助教授(地質学)らが現地調査したところ、新たに4カ所の陥没が見つかり、陥没は計17カ所に増えた。噴気も2カ所で続いていた。気象庁の調査では噴気は水分が主で、火山性ガスは検出されていない。宮地助教授は「現時点では、噴火に結びつくとは考えられない」と話すが、不気味な現象だ。
例えば、京都大防災研究所の大学院生、相沢広記さんらが地中の電流を調べたところ、山頂直下の深さ1000メートル付近より下側に高温の熱水だまりが存在し、対流していることが分かってきた。東京大地震研究所の鍵山恒臣助教授(火山学)は「熱水の熱が地中を伝わり、さらに上の地下水層を温めて噴気となった可能性がある。噴気は富士山が活火山である証拠とも言える」と説明する。
■宝永噴火の姿
最も現在に近い宝永噴火は、どんな噴火だったのか。静岡大の小山真人教授(火山学)は静岡、山梨両県内の市町村史をはじめ各地に残された記録を基に、噴火の推移を詳細に再現した=表。
噴火の十数日前から、富士山東ろくでは鳴動を感じた。前兆とみられる地震は、噴火前日の午後から本格化し、揺れを感じる範囲は徐々に拡大した。震度は最大で震度4程度とみられるという。
噴火の開始は1707年12月16日午前10時〜正午ごろ。小山教授が注目したのは、午後3時すぎから1時間ほど噴火が収まっていることだ。御師(おし)と呼ばれる信仰登山の案内人が残した「土屋伊太夫噴火事情書」には、「七つ時分(午後3時半〜4時半)に火石降りやみ」との記載がある。小山教授は「危険な場所にいる人はこの時間に避難することができる。大規模な当初の噴火の間に小康期間があったことは、防災上重要だ」と話す。
噴火の勢いは、日時の経過とともに下火になっていったと思われていたが、後半にも活発な時期があったことも分かった。防災上注意すべき点だ。
■火砕流と土砂災害
富士山では火砕流の発生は少ないとされてきたが、無視できない頻度で発生してきたことが分かりつつある。
技術コンサルタント大手、日本工営の田島靖久・国土保全部係長らは、国土交通省富士砂防事務所の委託で、火砕流について調べた。特に、最大規模の滝沢火砕流(1700年前〜1500年前)を詳細に分析すると、91年の長崎県雲仙・普賢岳で最大規模の火砕流とほぼ同規模だったことが分かった。噴火の噴出物が増えると火砕流の到達範囲が拡大する傾向も見つかり、田島係長は「ハザードマップで到達範囲外だからといって、火砕流への警戒は怠らないでほしい」と呼びかける。
また、宝永噴火で大量の火山灰などが降り積もった丹沢山地や酒匂川中流域では、雨のたびに大量の土砂が酒匂川に流れ込み、繰り返し土砂災害を引き起こした。下流域の足柄平野では、噴火後100年近くも影響が続いたという。
富士砂防事務所の委託で土砂災害について調査した日本工営の井上公夫・事業統轄部副技師長は「現代は機械力があるとはいえ、宝永のような噴火の後には、大雨のたびに土砂災害を繰り返し、川にたまった砂をさらう作業が必要になるだろう」と指摘する。
■噴火史が変わる?
富士山の噴火史には不明な点も数多く残る。そこで、東大地震研などは01年度から北東側の山腹5カ所で、ボーリング調査を進めている。
従来の研究では富士山は約10万年前以降、二酸化ケイ素が少ない玄武岩を主成分とする溶岩などを出し続けているとされていた。一般に、二酸化ケイ素が少ないと溶岩が穏やかに流れるような噴火をする傾向がある。二酸化ケイ素が多く、爆発的な噴火になる傾向がある安山岩やデイサイトが主成分と確認されたのは宝永噴火と砂沢噴火(約2800年前)だけだった。
ところが、ボーリングのうち1カ所では、地下300〜650メートルの広範囲で、安山岩やデイサイトが主成分の溶岩などが見つかった。富士山が長期間、この種の成分の溶岩などを噴出していた可能性が浮かぶ。
火山噴火予知連絡会会長で東大地震研の藤井敏嗣教授(マグマ学)は「見つかった岩石の年代は調査中だが、もし10万年以内だった場合、噴火史を見直さなければならない。これまで考えられていたよりも、爆発的な噴火をする可能性が高いと考える必要が出てくる」と話している。
噴気 火山地域で火口内部や岩石の割れ目などのすき間(噴気孔)から噴出しているガス。水蒸気のほか、硫化水素や塩化水素、亜硫酸ガスなど、さまざまな火山性ガスの成分が含まれる場合がある。
ハザードマップ 火山噴火や洪水、津波などの災害発生時に、どのような被害が出るかを予想した地図。富士山についても政府の検討委員会が作製を進めている。原案によると、▽火砕流が発生した際に高熱のガスが高速で届く▽火口から噴出した石が多数落下する▽溶岩が3時間程度で到達する――範囲などが一目で分かるようになっている。(毎日新聞)
[1月12日12時53分更新]