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その昔、僧侶は医者であり学者であり教育者でありマスコミ(情報発信
者)であった。大戦中、陸軍軍人より海軍軍人のほうが開明だったと聞く。
外の世界の情報に接する機会が多いからである。今、情報に多く接する者
と言えばインターネットをやる人々だろう。
阿修羅の場合他の板からIT板にたどり着く人の方が、IT板→他の板
のパターンよりも圧倒的に多いとは思う。しかし、技術馬鹿になりたくな
い人は、下記のような記事を読むことはとても有益だろう。今現在、自分
たちがどういう世界に生きているかを意識することは、セキュリティにつ
いて考える時などとても大事なことだと思うからである。どういう世界に
生き、さらに外の世界への問題意識を持つかどうかで、同じセキュリティ
情報に接するにしても、気づきも理解の深さも全然違ってくるはずである。
これは、小生自身の体験と実感である。
イスラエル・タカ派の反攻【田中 宇の国際ニュース解説】
http://www.tanakanews.com/e0212israel.htm
2004年2月12日 田中 宇
前回配信した記事「イスラエル・パレスチナのEU加盟」では、中東を安定させたい
「中道派」と不安定にさせたい「タカ派」とのアメリカ中枢での戦いが、イスラエルをE
U加盟させることによって中道派の勝利に終わるのではないかというトーンで分析した。
だが、その後分析を続けたところ、タカ派は対抗的な作戦を展開しており、両者の抗争は
まだ決着がついていないことが分かってきた。
タカ派の作戦をひとことで言うと「ハマスやヒズボラといったパレスチナの原理主義的
な過激派をイスラエルがわざと力づけることで、穏健派のパレスチナ自治政府(PLO)
を相対的に弱体化させ、パレスチナ人を内部分裂させ内戦に陥らせて、EUや中道派がパ
スレチナ人国家を作れないようにする」というものだ。
その作戦例の一つは1月30日、ヒズボラが4人のイスラエル人捕虜と人質(兵士3人、
ビジネスマン1人)を釈放するかわりに、イスラエルが拘束していた400人以上のパレ
スチナ人を釈放するという捕虜交換をイスラエル主導で行ったことだ。
この交換作戦は3年前からドイツが仲裁して交渉が進められていたもので、その意味で
はタカ派の新しい作戦ではない。だが、イスラエルは4人を得るために400人を手放し
たわけで、この著しい不均衡をめぐり、イスラエル国内から疑問視する声が出ている。
(関連記事)
パレスチナ側との和平交渉を推進してきた中心人物の一人であるイスラエルの元司法相
ヨッシ・ベイリンは「400人のパレスチナ人を釈放して引き渡すべき相手は(民間組織
である)ヒズボラではなく、(国際的にパレスチナを代表する政府として認められている)
パレスチナ自治政府であるべきだった。シャロンは、ヒズボラに続いてハマスに対しても
捕虜交換交渉を進め、パレスチナ人を釈放しようとしているが、これもパレスチナ自治政
府に対して釈放すべきものだ。これらの動きは(アメリカからテロ組織として指定されて
いる)ヒズボラやハマスを強化し、パレスチナを内戦に陥れ、ますます自爆テロを頻発さ
せてしまう」と批判している。(関連記事)
▼行き詰まるパレスチナ自治政府
捕虜交換と並んでベイリンは、シャロン政権がガザの不正入植地から一方的に撤退する
と決めたことも、同様にパレスチナの穏健派を弱体化させるためのものだと指摘している。
入植地からの撤退そのものは、中道派的な動きに見えるが、その一方で、撤退の仕方を派
パレスチナ側との和平交渉(ロードマップ)の枠組みの中で行わず、イスラエルが一方的
に撤退するやり方を採ったことは、パレスチナ自治政府の権威を弱める方向に働いている。
パレスチナでは「ハマスやヒズボラが自爆攻撃でイスラエルを窮地に追いやった結果、
シャロンは入植地を撤去せざるを得なくなったのだ」という考え方が広がっている。(関連記事)
2月7日には、アラファトが仕切ってきたPLOの中核組織である政党「ファタハ」の
メンバー350人以上が、連名で脱退を宣言するという事件も起きた。(関連記事)
パレスチナ人の間では以前からアラファトに対し、腐敗しているとか、イスラエルとの
交渉をうまく進められないといった批判があり、それがだんだんと強まっていたが、もは
やアラファトが支配するパレスチナ自治政府は矛盾が大きくなりすぎて、存続が危うくな
っているという指摘も出ている。今後、イスラエルによってハマスやヒズボラが強化され
る事態が続くと、パレスチナ自治政府は内部崩壊する可能性もある。(関連記事)
▼フランスによる政治作戦か、イスラエルによる中傷攻撃か
こうした動きに対し、EUは止めに入っているかというと、そうでもない。フランス当
局は、アラファトが、イスラエル軍による攻撃を避けてフランスに滞在している妻に向け
て送金を行って不正蓄財をしている疑惑があるとして捜査を開始した。これがもし事実だ
とすれば、純粋な不正取り締まりではなく、パレスチナ自治政府の崩壊に手を貸す仏当局
の政治的な意図があるように思われる。フランスの内部には、EUが中東にまで覇権を拡
大することに対して否定的な勢力も多いと思われるので、そうした勢力がアラファトたた
きに手を貸しているのかもしれない。(関連記事)
とはいえ仏当局は「捜査を開始するかどうかを調べている段階」だと言っており、この
件を最初に報じたフランスの風刺雑誌の報道が誇張であり、それを各マスコミのタカ派系
の編集者が鵜呑みにして報じた可能性もある。BBCはそれを示唆している。(関連記事)
当事者であるアラファトの妻は「お金はパレスチナ自治政府の活動資金として合法的に
送金されている。フランス当局から何の連絡もなく、捜査が始まっているというのはシャ
ロンが流したウソにすぎない」と述べている。タカ派は誇張を流すのが得意なので、報道
内容が事実であるかどうか、しばらく様子を見ないと分からない。誤報だったことが、あ
とで小さく報じられたりする。(関連記事)
パレスチナ自治政府に対しては、クレイ首相の親戚が経営する生コン(セメント)製造
会社が、イスラエル側が構築している「防御壁」の建設に生コンを供給している、という
疑惑も出てきたが、おそらくこれもイスラエル側がパレスチナ側を攻撃・中傷する目的で
流した情報だろう。(関連記事)
一方、イスラエル側でも怪しげな事件が起きている。イスラエルの軍事機密が何者かに
よってインターネット上に公開され、そこにイスラエルが保持している核兵器についての
情報や、「アメリカは最新型のミサイルをEUの某国には売ったのに、政治的な理由から
イスラエルには売ってくれない」とか「アメリカから買ったF16戦闘機のレーダーは最
低水準の性能を満たしていない」といった反米的な主張が載っていたと報じられている。
(関連記事)
これは、イスラエル中枢の政界・軍・諜報機関の内部で、中道派とタカ派との暗闘があ
り、その一環として機密漏洩にあたるハプニングが画策されたのかもしれない。アメリカ、
EU、イスラエル、パレスチナのいずれの陣営でも、激しい政治抗争が展開していること
がうかがえる。