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http://japan.cnet.com/news/special/story/0,2000047679,20063443,00.htm
By David Becker
2004年1月5日(月) 10時00分
ビデオゲームのユーザーにとって、ゲーム機はアメフトのシミュレーションゲーム「Madden NFL Football」で敵チームのキャラクターを叩きのめすための道具でしかないかもしれない。しかしSonyとMicrosoftにとってゲーム機は、デジタルホーム市場を制するための重要な武器なのだ。
MicrosoftのXboxとSonyのPlayStation 2(以下PS2)の仕様や機能には、ホームネットワークとデジタルコンテンツに対する両社の戦略の違いが反映されている。Microsoftはコンピュータを中心としたデジタルホームを構想し、Sonyは家電を通したデジタル革命を推進している。
「両社の企業戦略を見れば、MicrosoftはPCを家庭の中心と見なし、Sonyはテレビを中心と見なしていることが分かる」と調査会社IDCのアナリストSchelley Olhavaは言う。
ゲーム市場における両社の激しい闘いは、こうした戦略の違いをさらに浮き彫りにしている。戦いの焦点はデジタル融合(Digital Convergence)、つまり多様なメディアと通信技術をひとつのデバイスで扱えるようにすることだ。
両社はそれぞれの企業戦略に沿ってPlayStationとXboxの開発を進めているが、そこには企業のゲーム事業の枠を超えた意味合いがある。SonyとMicrosoftはそれぞれ業界のリーダーであり、アナリストと競合企業は両社の動向を見て、消費者向け製品の未来を占おうとしているからだ。
「ネットワーク化された家庭の未来像を描いた場合、Microsoftを含むPC業界の立場から描くと、その中心はPCとなる。コンテンツはPCからゲーム機や携帯など複数のデバイスへ流れていくのだ。一方、Sonyの描く未来像の中心となるのは家電であり、そこにPCの居場所はない」とAmerican Technology ResearchのアナリストP.J. McNealyは指摘する。
現在、Sonyはここ数年でもっとも厳しい財政状態に陥っている。一般家電の売り上げが世界レベルで落ち込むなか、同社は2万人の人員削減計画を発表した。そこには強引なまでの拡大路線をとっていた過日の姿はない。1980年代、Sonyは映画スタジオへ、音楽レーベルへと事業を広げ、コンテンツの生産からそれを再生するハードウェアまですべてを手中に収めようと意気込んでいた。現在、Sonyは堅調なゲーム事業を中心とした融合プロジェクトに注力し、このプロジェクトを経営立て直し戦略の要と位置づけている。
一方、Microsoftもコンテンツとメディアを既存のソフトウェア帝国に組み込もうと四苦八苦してきた。だがSteve BallmerがCEOに就任して以来、同社は中核事業であるコンピュータ関連事業に回帰するようになっている。一部のアナリストは、MicrosoftはXboxがある程度の市場地位を獲得した時点で、金のかかるゲーム機開発事業から手を引くと予測している。これはハードウェア企業にソフトウェアのライセンスを提供するという、同社のこれまでの方針とも一致している。
ゲーム業界では融合に向けた取り組みははじまったばかりだが、PS2はすでに新しい役割を果たしつつあるとSonyは言う。PS2には次世代のニーズを視野に入れた柔軟な設計が施されているからだ。
「この1、2年でPS2に加わった機能は、融合戦略を進めることでユーザーに新しい経験を提供できることを示している。PlayStationの魅力はソフトウェアだけではない。今回のPlayStationが過去のシリーズと大きく違うのは、次世代のハードウェア戦略を採用していることだ」とSony Computer Entertainment Americaの執行副社長Andrew Houseは言う。
2003年末に発売されたPSXは多目的PlayStationの1号機であり、ひとつの筐体にあらゆる機能が詰め込まれている。ユーザーはPSXをテレビ信号につなぐだけで、ビデオを録画し、ゲームで遊び、メディアを再生することができる。
一方、Microsoftのデジタルエンターテイメント構想は、当然のことながらPCを中心に据えている。「PCがデジタルライフのハブになるというのが当社の考えだ。大容量のストレージを持ち、柔軟性もきわめて高いPCはこの役割に適している」とMicrosoftのオンラインゲームサービスXbox LiveのゼネラルマネージャーCameron Ferroniは言う。
Microsoftの構想では、Xboxはホームネットワークにつながれた家庭用デバイスのひとつにすぎない。コンテンツはホームネットワークのなかを自由に移動し、ユーザーは好きな場所でコンテンツを楽しむことができる。そしてこのすべてを支えているのがMicrosoftのテクノロジーだ。「我々は今後も、家庭内でコンテンツを自由に移動させるためのプロトコルや標準の策定に取り組んでいくつもりだ」(Ferroni)
すべてはLonghornへ
Windows OSの次期バージョンLonghornでは、Microsoftの構想のほとんどが具体的な形でお目見えすることになる。Longhornには、PCやネットワークに保存されたデジタルコンテンツを簡単に見つけるための検索・保存システムも搭載される予定だ。
LonghornとXboxの関係はまだはっきりしない。しかしMicrosoftは、同社の言うところの「Longhornのタイムフレーム」(2005年か2006年)でソフトウェアの書き換えを行い、Xboxをホームネットワークに組み込んでいく考えだ。同社会長のBill Gatesは最近のCNET News.comとのインタビューのなかで、「Microsoftでは全グループを挙げてLonghorn関連のリリースについて議論している」と答えている。
ホームネットワークは過渡期にあるため、リリースのタイミングがきわめて重要になるとアナリストは見ている。今日のネットワーク技術は有線でも無線でも、接続品質にむらのあることが多く、ほとんどの消費者にとって複雑すぎるものだ。しかし、この状況もまもなく変わるだろう。
「MicrosoftとPC業界は今後2、3年で今よりも簡単にホームネットワークを構築し、家庭内でコンテンツを移動できるようにする計画だ。これが実現すれば、同等の機能を備えた安価な家電製品がどっと登場することになるだろう」とAmerican Technology ResearchのMcNealyは予測する。
最近、MicrosoftはXbox用アプリケーションで初のゲーム以外の製品となる「Music Mixer」を発表し、PCベースのホームネットワークにおけるXboxの役割を提案してみせた。Music Mixerにはカラオケ機能だけでなく、PCと接続してデジタル画像のスライドショーをテレビ画面で楽しむといった先進的な機能も搭載されている。
こうしたことから、業界関係者の多くはMicrosoftがゲーム機事業に参入したのは、ゲーム産業からPCテクノロジーが閉め出されないようにするためだと考えている。
「MicrosoftがSonyとのハードウェア戦争を続けるとは思えない。Microsoftにとって重要なのはPCを必要とするフォーマットを業界標準にすることであり、Xboxの目的もそこにある」と調査会社Directions on MicrosoftのアナリストMatt Rosoffは言う。
Rosoffはまた、タブレットPCやその他のデバイスと同様に、Xboxのハードウェア仕様もいずれ他社にライセンスされる可能性が高いと見ている。家電メーカーがXboxに対応したDVDプレーヤーやビデオデッキを発売すれば、Xboxフォーマットの普及も促進される。Microsoft自身もハードウェア関連の損失を削減することができるだろう。
「Microsoftはソフトウェアおよびプラットフォーム企業であることに満足している。Microsoftが売りたいのはソフトウェアだ。赤字を垂れ流してもハードウェア事業にしがみつく理由はない。Xbox技術をプラットフォームとして売り込むのがMicrosoftらしいやり方だ」とRosoff は言う。
Xbox事業を統括するFerroniは、ハードウェア事業から撤退すれば収支が好転する可能性が高いことを認めながらも、Xboxのライセンスを複数のメーカーに提供することは、ゲーム機の強みを失うことに等しいと指摘する。
「ゲームが大金の動くビジネスであることは間違いない。そう考えると、Xboxの仕様をライセンスするというアイディアは魅力的だが、ライセンスを提供してしまえば“完全な動作保証”というゲーム機の魅力が失われてしまう。Xboxの動作を保証するためには、プラットフォームの開発を1社に限定する必要がある」(Ferroni)
MicrosoftがPCの視点からゲーム事業に取り組んでいるとすれば、Sonyは娯楽コンテンツのクリエーターであると同時に、再生・配信デバイスのメーカーであるという二重の立場をフル活用しているといえる。しかしこれまでのところ、Sonyが保有する豊富な娯楽コンテンツはPlayStation事業にほとんど活かされていない。
Sonyの経営陣は何年も前から、PS2ではコンテンツのダウンロードが可能になると宣伝してきた。しかし、そうしたコンテンツ(そしてそれを格納するハードドライブ)はまだお目見えしていない。原因のひとつは著作権保護の問題だ。SonyがMP3プレーヤーの投入を見送った一因もここにある。
「著作権保護は企業、特にSonyにとっては頭痛の種というべき問題だ。これを回避する方法を何とか見つける必要がある」と調査会社iSuppliの上級アナリストJay Srivatsaは言う。
Sonyは社内の分断にも悩まされている。Sonyの事業部は協調性がないことで有名だ。そのよい例がSony Online EntertainmentのPCゲームとしてヒットしたEverQuestである。EverQuestがPS2に移植されたのは、最初のPS2向けオンラインゲームが発売されたはるか後のことだった。
「音楽、映画、ゲーム――こうした分野ではそれぞれの事業部がばらばらにビジネスを進めている。すべての事業部に同じビジョンを持たせるのは至難の業だ。過去をふりかえっても、各事業部の連携がうまくいった試しはない」とAmerican Technology ResearchのアナリストP.J. McNealyは言う。
もっとも、本社が厳しい財務課題に直面している以上、各事業部も変化を余儀なくされるかもしれない。PS2用の追加ハードディスクが今年発売されれば、Sonyが保有するコンテンツをPS2用にダウンロードできるようになるだろう。
Sony Computer Entertainment Americaの執行副社長Andrew Houseは、タイミング的にも技術的にも、PlayStation事業とコンテンツの融合を促進する土壌が整ってきたと語る。
「今後はSonyの本領といえる分野でイノベーションを進めることになるだろう。Sonyの強みはエンターテイメント、消費者向け家電、そしてこの2つを組み合わせる方法を熟知していることだ」