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http://japan.cnet.com/news/pers/story/0,2000047682,20062583,00.htm
Sonia Arrison
2003年12月10日(水) 10時00分
ネット上で迷子になったら、何が起きるのか。
これは単に仮説として話しているのではない。次世代のネットを誰が形作るかというインターネットのルール作りに関する論争において、大きな焦点となっている。
議論の核心にあるのは、Site Finderと呼ばれるVeriSignの開発したサービスの出現だ。同社は、.comや.net、.orgといったドメイン名のデータベース登録業務を手がけている。Site Finderは、ユーザーがインターネットアドレスをうっかりタイプミスする、いわゆる「fat fingers(太い指)」と呼ばれる問題を解決するのに役立つサービスだ。
タイプミスは誰もが経験したことのある問題だ。今日も、多数のインターネットユーザーがドメイン名の打ち間違いでオンライン上をさまよっている。その結果、たいていはそっけないエラーページを、運が悪ければ見たくないポルノサイトを目にするだろう。だがここ数カ月、便利なサービスを提供しようという企業が数社現れた。そのサービスとは、打ち間違いで起こるゴミトラフィックを検索ページに導くものだ。VeriSignではゴミトラフィックをSite Finderに送り、他の候補サイトを提示してくれる。
America Online(AOL)でも同様の機能を提供中だ。Google、MicrosoftのMSNサービスも然り。また、.biz、.usで終わるアドレスの登録管理を行うNeuStarでは、.biz、.usで終わるURLのうち、つづりが違ったり存在しないページを検索エンジンにリダイレクトするという独自サービスのテストを行った。
このような業界の動きに消費者も賛同している。VeriSignによれば、運用を開始してから最初の1週間で、Site Finderの検索ツールは1100万回以上利用されたという。そして、正しいページにたどりつけないユーザーは、タイプミスしたURLに似た実在するURLをリストで表示する「Did you mean?(あなたが探しているのはこちらですか?)」という機能を160万回使い、目的とするサイトを見つけようとしている。
しかし、VeriSignから発表されたこのサービスが、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)のお怒りに触れてしまった。ICANNは、1988年に米商務省が設立した小さな非営利組織で、ドメイン名に関する技術的支援を提供している。
ICANNでは早速、セキュリティと安定性に関する委員会を召集し、VeriSignが同組織の承認を得ずにSite Finderを提供することはできないと主張、Site Finderをインターネット上で使用しないように要求した。これらの要請は、Site Finderがインターネットの安定を乱す何らかの脅威となり、ジャンクメールを撃退する努力を損うものだという主張に基づくものだが、今ひとつ根拠が曖昧だ。
インターネットサービスプロバイダ各社は、自社のアンチスパムフィルターをSite Finderと連動するように設定することが可能だ。あるいは、VeriSignがゴミトラフィックをSite Finderへとリダイレクトする前に、自社の検索ページへと送ることもできる。実際、AOLはすでにそうした対策をとっている。では一体何が問題だというのか。この議論によって浮かび上がってくる疑問点は、政府の管轄外で公衆の目もほとんど届かずに活動を行っているこのICANNという組織が、なぜインターネットユーザーが利用できるサービスを選別する権限があるのか、という点だ。
確かに、ICANNの幹部役員にはインターネット業界のカリスマVint Cerfはじめとする錚々たる面々の専門家が居並ぶ。ICANNが複雑な技術標準の確立を支援する上で鍵となることは事実だが、一方で同組織では政策立案にやたらと熱を上げ、議論の深みにはまってしまうケースも多い。
ICANNでは同組織の活動目的のひとつとして、民間の声を反映し、ボトムアップで合意をを得るようにしてルールを作る、ということを掲げている。しかし周知の通り、合意を得ることは時に困難であり、議論は違う方法で終息させなければならないこともある。
議会では投票によって決議が行われるのと同様に、市場では神の見えざる手(Adam Smithが言うところの市場原理)によって物事が決まる。しかしICANNにおける決定の過程では、納得のいく形式が採られていないことが多いとの不満をよく耳にする。この組織がいまなお競争を促進し、インターネットの政策に関する問題を解決する上で、意味のある存在なのかという疑念も持ち上がる有様だ。
国連当局は最近、ICANNの機能を引き継ぐ意向を表明した。しかし、企業やその他のポリシー策定者は、ドメイン名システムを民営の1団体のみで管理すること自体、もはや潮時であると述べている。ICANNが根本的に考えの異なる勢力から圧力を受けるにつれて、うわべだけで取り締まってきたインターネット業界の不安定な要素が表面化してしまうという指摘もある。これに対する最適な答えは、議論の場を市場に移し、より効率的に皆が協力して決着させることだ。
そうした中ICANNでは、VeriSignが金儲けに使っている.com、.net、.orgのドメイン名の登録変更業務を別の組織に移譲する権限があるのだと主張している。
そうなるとVeriSignにとってはかなりの痛手となるが、ICANNがそこまでするのはいかがなものか。むしろ、本来サービスを提供するコミュニティからもっと受け入れてもらえるように、自らのミッションを果たす道を探る努力に本腰を入れるべきだ。
ICANNは、Site Finderやその他の有望なサービスの許認可権を有するインターネットゲートキーパーだと自身を位置づけているが、それはそもそも消費者に対するサービスとは言いがたい。彼らは否定するかも知れないが、むしろそこにはインターネットを強く支配したいという下心が見え透いている。
筆者略歴
Sonia Arrison
米カリフォルニア州に拠点を置くシンクタンク、Pacific Research Instituteの技術研究センター所長
原文へhttp://news.com.com/2010-1028_3-5112397.html