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日立製作所が開発した無線ICタグ「ミューチップ」。0.4ミリ角サイズでアンテナを内蔵している
http://www.atmarkit.co.jp/fbiz/cbuild/serial/doukou/01/doukou01.html
ゴマ粒大のICチップを使った無線ICタグのビジネス利用が本格化しようとしている。ICタグの管理サーバなど関連製品の出荷も始まり、流通・小売業界を中心に実証実験が行われている。情報マネージャが押さえるべきICタグのトレンドや課題について、最新情報を基に考えてみる。
ICタグとは
ICタグは1ミリ以下のICチップを搭載したタグ(荷札)のこと。ICには情報を保存でき、搭載したアンテナを通じてリーダやライタで情報を読み書きする。ICタグはバッテリを搭載せず、リーダ/ライタが発する電波を受信し、電磁誘導などで電流を発生させる仕組み。バッテリを搭載し、より複雑なアプリケーションを利用できるICタグもある。ICタグは、商品などに付けるバーコードの次世代版として紹介されることが多い。ICタグとバーコードとの違いは保存できる情報量。バーコードが数十けたの情報を保存するのに対して、ICタグは数千けた以上の情報を保存できるとされている。情報の書き換えも可能。
国内の実証実験で利用されているICタグの周波数は主に3種類。最も利用されているのは13.56MHzの周波数帯。13.56MHzの通信距離は1メートルまでで、ノイズやほかの無線との混線が少ないとされている。135KHzのICタグも利用されているが、この周波数の通信距離も1メートル未満。2.45GHzを利用したICタグは、2メートルまで通信が可能とされていて、流通現場などの検証実験で利用されている。日本では携帯電話の電波となるため使用が許可されていないUHF帯を使えば、ICタグの通信距離は7メートル程度まで延びるとされている。欧米での実証試験では主にUHF帯が使われている。
■進む実証実験
ICタグの実証実験が最も多く行われているのは流通の現場だ。商品にICタグを貼付し、工場内から運送、小売店、最終消費者までの流通経路を効率化する目的で利用されるケースが多い。
首都圏に展開するスーパーマーケット、マルエツはNTTデータ、丸紅と共同で、生鮮食品や加工品、日配品などの商品にICタグを付けて消費者が生産地などを確認できるシステムの実証実験を、今年9月に都内1店舗で行った。食品卸売り7社、食品メーカー17社が参加し、90商品にICタグを付けた。実験期間中に使用した無線ICタグは約5万枚。消費者はスーパーマーケットの店頭で、商品の安全性や製法、調理方法やレシピなどを専用端末にICタグをかざすことで確認できる。商品に対する消費者の安全意識の高まりを受け、トレーサビリティ(生産履歴の追跡)情報を消費者に提供する。
ICタグは流通の効率化にも寄与する。マルエツの実験では関東圏内にある同社の物流センターで、商品やケース、パレットに無線ICタグを貼り付け、入出荷検品や在庫管理などへの活用も検証する。生産者から店舗まで、ICタグを使った一気通貫のSCMの可能性を探る。ICタグを利用することで、目視確認やバーコード読み取り、重量確認に依存していた入出荷検品や小分け検品、賞味期限管理など従業員の個人スキルに依存していた作業のミスがなくなることで効率化につながるほか、リアルタイムの在庫管理も可能になる。ICタグには個別IDのみが記録され、賞味期限日や出荷場所などの属性情報はネットワークで接続された情報センターで管理する。商品が流通していく中で追加される情報もネットワークを経由して情報センターに蓄積される。
ICタグを使った実験ではほかに養殖魚にICタグを付けて、餌や使った薬品などの情報を消費者が店頭で確認できるシステムや、書籍に付けて万引を防止する取り組みなどがある。ICタグが付いた携帯電話のストラップを観光地のポスターなどにかざすと、登録した携帯電話に電子メールが送信され、観光地の詳細情報のWebサイトにアクセスできるJR東日本、大日本印刷などの実証実験もある。
■ベンダの動きも加熱
2005年にも予想されるICタグの本格普及を目前に、ベンダによる関連システムの出荷が相次ぐ。ICタグ関連の製品に積極的なのは印刷業界。大手印刷会社は、印刷に続く商品としてICカードに注目し、長く開発してきた。ICカードのチップ実装技術などを使いICタグ関連製品の開発を急いでいる。トッパン・フォームズはWebサービス技術を使い、ICタグなどのセンサデバイスが吸い上げたデータをXMLに変換し、さまざまなアプリケーションで利用できるようにするミドルウェア「InterConnect Server」を10月1日に出荷した。XMLを採用したことで、異なるアプリケーションやプラットフォーム間のデータ連携が容易になり、システムの開発コストやメンテナンスコストを抑えることができるのが特徴。トッパン・フォームズはICタグに初めて取り組むシステム・インテグレータやユーザー企業向けに、ICタグ、ラベル、トレーニングプログラムをセットにした「RFID Starter Kit with InterConnect Server」(80万円から)を用意している。
大日本印刷はアパレル業界向けSCMや物流システムの商品の入出庫管理など業種別にICタグソリューションを用意している。主な用途は、物流管理、物品管理、履歴管理、輸送管理となっている。10月末にはICタグ関連のデモシステム、各種開発機材、商談ルームを備えた開発拠点として「ICタグ実験工房」を東京・大阪に開設した。ユーザー企業へのソリューションの説明やICタグベンダ、SI、業界団体との共同開発、情報交換に利用するという。ICタグを“未来の技術”ではなく、いまから利用できる技術として売り込むのが狙いだ。
コンサルティングからシステム構築、ICタグ供給、保守・サポートまで、ICタグシステムを一貫して面倒を見るSIのサービスも増えてきた。日立情報システムズが用意するサービスでは、システム全般の開発、サポートをはじめ、ICタグの加工も担当する。ユーザー企業の商品や流通形態に応じてICタグを加工し、貼付する。日本ユニシスもICタグを含む、さまざまなセンサデバイスのリアルタイムデータを管理し、企業のビジネスプロセス効率化に生かすことのできるアーキテクチャ「Resource Operation Management Architecture」(ROMA)を発表。管理サーバなどの出荷を予定している。
■「個人情報保護」が問題に
ICタグが実利用されるための課題の1つは、タグ1つ1つの価格だといわれる。現在、一般的なICタグの価格は1個が数十円。テレビなどの家電やブランド品など高額商品ならICタグを付けることができるが、100円以下で販売されることが多い生鮮食品や青果物、日用品に付けることは難しい。商品販売後にICタグを再利用できる仕組みがないと、ICタグのコストが商品価格に跳ね返るからだ。そのため実際のICタグ利用では、商品1つ1つではなく、流通現場で商品を収めたダンボールやケース、パレットにICタグを付ける利用が先行しそうだ。最終消費者までのトレーサビリティ提供は難しいが、検品漏れを防ぐなどSCMの効率化は可能になる。ただ、ICタグの実利用が広がり出荷が増えることで、量産効果により価格が下がる可能性はある。ICタグをレンタルするサービスなども出始めたため、ICタグのコストにかかわる問題は長期的には軽微な障害になると考えられる。
さまざまな業種で進む実証実験や管理製品の出荷、コンサルティングの充実によりICタグがSCMの現場で普及することは確実だろう。しかし、商品の1つ1つまでICタグを使って管理できるまでには、時間がかかるとの見方がある。
障害となるのは個人情報の問題だ。顧客データなどを保存する企業に対して、個人情報の保護を求める個人情報保護法が今年5月に成立し、2005年4月にも施行される見通し。個人情報流出で企業に罰則が科されることに加えて、企業による個人情報の取り扱いに消費者が敏感になっていることから、個別のICタグと個人情報をひも付けするサービスは慎重にならざるを得ないという声がある。米大手スーパーが計画していたICタグの実験では、消費者から「商品だけでなく、購入者が追跡される危険がある」との指摘があり中止された。国内の調査会社が行ったICタグに関するアンケート調査でも、個人情報の流出を懸念する意見があり、約2割の回答者がICタグを使った消費者向けのサービスに対して、消極的な意見を寄せた。
個人情報の保護やセキュリティの向上は、技術だけでは解決できない面がある。ユーザー企業やベンダ、SIは消費者の意見を探りながら慎重にICタグを運用していく必要がありそうだ。