現在地 HOME > 掲示板 > IT4 > 316.html ★阿修羅♪ |
|
その昔、僧侶は医者であり学者であり教育者でありマスコミ(情報発信
者)であった。大戦中、陸軍軍人より海軍軍人のほうが開明だったと聞く。
外の世界の情報に接する機会が多いからである。今、情報に多く接する者
と言えばインターネットをやる人々だろう。以下記事を、今日、
2003.11.12の「セキュリティホール memo 」の記事からたどり着いた。
阿修羅の場合他の板からIT板にたどり着く人の方が、IT板→他の板
のパターンよりも圧倒的に多いとは思う。しかし、技術馬鹿になりたくな
い人は、下記のような記事を読むことはとても有益だろう。今現在、自分
たちがどういう世界に生きているかを意識することは、セキュリティにつ
いて考える時などとても大事なことだと思うからである。どういう世界に
生き、さらに外の世界への問題意識を持つかどうかで、同じセキュリティ
情報に接するにしても、気づきも理解の深さも全然違ってくるはずである。
これは、小生自信の体験と実感である。「セキュリティホール memo 」記
事を照会した筆者の意図もそういう所にあったと見ている。
特に記事中、最後の所の、
>▼米軍の疲弊を待ってゲリラ戦を激化
>
>▼誰がアメリカを罠にはめたのか
の2段落は興味深い記事だった。抜粋すると、
>中道派からの警告を「あいつらのいうことは聞かない方が良い」といって
>無力化し、無能な高官たちが泥沼化の危険に気づかぬよう、故意に背信行
>為を行っていた者がいたはずだ。そうでなければ、ブッシュ大統領が経験
>豊かな父親の警告を無視するという結果にはなりにくい。タカ派の中で最
>も詭弁を弄していたのは、ウォルフォウィッツ、パール、ボルトン、フェ
>イスといったネオコンの人々であり、故意性が最も高そうなのは彼らであ
>る。ネオコンの多くはイスラエルとの結びつきが強いが、イスラエルはア
>メリカよりずっと熱心にアラブ人の特性が研究し、フセイン政権の動静に
>ついても良くウォッチしていた。
そして、次の段落中の「なぜ自国を罠にはめる必要があったのか」?と言
う問いは、これからニュース等外の世界を観察する上で、頭に入れておい
て損はないだろう。
罠にはまったアメリカ 【次第に明らかになる4月バクダッド無血入城の謎&誰が罠にはめ、その動機は? イラクを読み解く基礎情報】
http://www.tanakanews.com/d1111iraq.htm
2003年11月11日 田中 宇
記事の無料メール配信
今年4月はじめ、イラクに侵攻した米軍がバグダッドに入城し、フセイ
ン政権が崩壊したとき、不思議に思ったことがある。それは、フセイン政
権はほとんど抗戦せず、戦線を放棄して意図的に消滅する道を選んだよう
に見えたことだった。
フセイン政権は戦って負けて崩壊したのではない。バグダッドでは、郊
外から市内へ進軍する米軍に対してイラク側の抵抗がほとんどなく、米軍
が拍子抜けするほどだった。北部でも、米軍が来る前にイラク軍は拠点を
放棄して解散した。私は当時書いた「消えたイラク政府」という記事で
「イラク側の6つの主な師団のうち、まだ少なくとも3師団は戦わずに残
っている」と書いた。(関連記事)
当時、米軍やマスコミは「残っている師団はフセイン大統領とともに、
大統領の生誕地であるティクリット(ティクリート)に立てこもり、最後
の戦いを試みるのではないか」と予測していたが、それは外れた。ティク
リットでもほとんど戦いはなかった。イラクの軍人と役人、諜報関係者ら
は、組織を解体して一般市民の中に溶解したのだと考えられる。不可解な
のは、なぜフセイン政権がそんなことをしたのかということだった。それ
は敗北の結果自然に起きたことなのか、それとも作戦だったのか分からな
かった。
▼フセインの「即席爆弾」
それから7カ月、米占領軍に対する攻撃が激化し、イラク情勢が泥沼化
していく中で、私は4月に抱いた疑問を解くカギとなりそうな指摘を、毎
日読んでいる英文記事の束の中に見つけた。それは、11月10日にアメ
リカの新聞「クリスチャンサイエンス・モニター」に載った記事で、筆者
はスコット・リッターだった。彼は、以前アメリカの諜報機関に勤め、湾
岸戦争後1998年まで続いた国連の対イラク査察団の主要メンバーだっ
た。今回のイラク戦争に対しては非常に批判的で、反戦運動を展開してい
る。(関連記事)
(クリスチャンサイエンス・モニターを、宗教的に偏向している新聞だと
思っている人もいるようだが、私が読んだ感じでは、それは違う。かつて
は信頼のおける中道左派系の新聞で、アメリカのリベラル知識人の中では
同紙を高く評価する人が多かった。911以後、右派系プロパガンダを無
批判にばらまく傾向はあるものの、それはアメリカの他のマスコミと全く
同じで、特に宗教的に偏向しているとは感じられない)
この記事によると、リッターら査察団は、イラクの諜報機関の拠点をい
くつも査察していくうちに、フセイン政権が「即席爆弾」(improvised
explosive devices、IED、即席爆発装置)を作る技術を諜報部員たち
に習得させていることを知った。即席爆弾とは、特殊な軍用品の兵器材料
が手に入らない場合に、民生品として手に入りやすい原材料だけを使って
作る手製の時限爆弾、地雷、手榴弾などの総称で、ゲリラやテロリストが
作ることが多い。(関連記事)
査察団が1996年に査察したバグダッド近郊の施設は、イラク政府の
諜報機関の拠点だったが、そこには、即席爆弾を製造し、使いたい場所ま
で隠して持ち運び、秘密裏にセットして標的を破壊するまでの詳細なやり
方を記した手引書のたぐいが束になって置かれていたという。また199
7年にイラク諜報機関の訓練学校を査察した時には、諜報部員に即席爆弾
の作り方やそれを使った作戦遂行の方法を教える教室が発見され、そこに
は爆弾をぬいぐるみや食品容器の中に隠すやり方を実践的に教える教材も
あったという。
査察団は国連での規定で、射程150キロ以上のミサイル、核兵器、生
物化学兵器といった「大量破壊兵器」だけを調査の対象としていた。即席
爆弾は兵器ではあったが大量破壊兵器ではなかったので、国際的な大問題
として取り上げられることはなかったが、リッターらはイラクの諜報関係
者が即席爆弾を作る技術を習得していることを米政府に報告したという。
▼逃げ場が豊富なフセイン政権
イラクの諜報部員たちが即席爆弾を製造使用する技術を持っているとい
うことは、今のイラク情勢にとって重大な意味を持っている。イラクに駐
留する米軍が受けている攻撃の多くは、即席爆弾を使って行われているか
らである。このことをふまえると、米軍や国連事務所などに対する攻撃は、
イラクの元諜報部員たちの仕業である可能性が高くなり、フセイン政権の
諜報機関がいまだに地下組織として存在し、そこが米軍に対するゲリラ戦
として爆破攻撃を組織的に行っているのではないかという見方が強くなる。
リッターは、イラクの諜報機関は、バグダッド市内やイラク国内のどこ
にどういうフセイン政権の支持者がいて、どこに反体制の人々がいるかよ
く知っていたから、フセイン政権が消滅した後も諜報機関が地下組織とし
て生き残ることは難しくないと主張する。
リッターによると、査察団はバグダッドでも比較的裕福なアルマンスー
ル地区の諜報機関の拠点を査察したことがあるが、そこで見たのは、体育
館のような広い部屋の床に描かれた近隣地区の巨大な地図だった。その地
図上の一軒ごとの家屋やビルの場所には文書入れのケースが置かれ、5階
建てのビルなら5個のケースが積み重ねられ、各ケースの中に各フロアに
住んでいる各個人の経歴や素行を記載した調査票(戸籍)が束になって入
れられていたという。
イラク政府は、以前からこうした詳細な住民管理を行っていたため、政
権を強く支持する人がどこに住んでいるか把握していたから、政権幹部や
諜報部員をかくまってくれる場所を探したり、ゲリラ戦に協力してくれる
市民を見つけるのは難しくないはずだ、とリッターは分析している。
私が今年1月、戦前のイラクに行ったときには、バグダッドに駐在して
いるルーマニアの外交官が「イラク当局の住民監視は(秘密警察が強かっ
たことで知られる)チャウシェスク時代のルーマニアよりもはるかに徹底
している」と驚嘆していたという話を聞いた。
イラクだけでなく、アラブ社会は全体的に地縁・血縁が非常に強い「部
族社会」の傾向があり、コミュニティの指導者を通じた住民管理がやりや
すい。東欧では、個人主義を重んじるヨーロッパ的な「市民社会」の傾向
が中東よりも強いから、チャウシェスクよりフセインの秘密警察の方が強
力だったというのは理解できる。
▼イラク戦争はまだ終わっていない
こうした要因に加えて、イラクは1991年の湾岸戦争以来、アメリカ
から政権転覆作戦を何度も仕掛けられ、米軍が侵攻してくる可能性も常に
あるという準戦時体制だった。そのため、諜報機関はフセイン政権の最重
要機関となり、諜報機関さえ生き残っていれば、フセイン政権そのものも
生き残っているという状態になっていた。
実際に米軍が侵攻してくる何年も前に、政府が崩壊してゲリラ戦が必要
になった場合に備えるかのように、諜報部員たちが即席爆弾の製造技術を
学んでいた理由も、準戦時体制だったことを考えると説明がつく。フセイ
ン政権は、米軍が攻めてきたら諜報機関が即席爆弾を作り、政権支持者を
地下で組織してゲリラ戦をさせ、米軍に対抗しようと前々から考えていた
可能性が大きい。
そう考えると、米軍がバグダッド市内に入った4月上旬にフセイン政権
が忽然と姿を消したことは不思議ではなくなる。それは、諜報機関を核に
したフセイン政権が、地下に潜って米軍と戦い続けることを決定し、実行
したということだった、と考えられる。米軍の侵攻によって崩壊したのは
フセイン政権の表の部分で、裏の部分はまだ生き残っている、ということ
だ。
だとすれば、今回のイラク戦争はまだ終わっていない。3月20日開戦
後の3週間は正規戦で、その後はフセイン政権が地下に潜って非正規戦
(ゲリラ戦)に移行し、ずっと続いていることになる。
▼自爆テロリストは便利な道具?
「イラクで米軍や国連を攻撃しているのは誰なのか」ということに関して
は、アメリカ政府は明確な説明をせず、ラムズフェルド国防長官はテレビ
インタビューで敵の正体は何かと尋ねられ、よく分からないという趣旨の
答えをしている。アメリカの新聞では「アルカイダとフセイン政権の残党
がゆるやかに結びついた勢力がやっている」とか「小さなゲリラ攻撃はフ
セインの残党が、大きな自爆テロはアルカイダがやっている」など、ばら
ばらな説明が試みられている。(関連記事)
リッターは前出の記事の中で「外国勢力(アルカイダ)がイラクにやっ
てきて攻撃に参加しているとしても、それはフセインの地下勢力の管理下
にあるのではないか。しかも、外国勢力はイラク側にとっては役に立つ道
具にすぎないはずだ」と書いている。私にも、この視点は当たっていると
思われる。
フセイン政権は、外国人を道具に使う戦略を持っていた。開戦前、人権
意識に駆られて外国からイラクに集まった「人間の盾」の人々に対し、西
欧的な「人権」の概念を重視していないフセイン政権は、自由な行動を許
さない一方で、米軍の侵攻を止めるための「盾」として便利に使おうとし
た。今年1月に私がイラクに行ったとき、仏教のお坊さんに同行したのだ
が、イラク側は「日本の仏教徒もイラクに味方している」と誇示するため
の道具として私たちを使い、普通はなかなかおりないビザをすぐ発給した。
(関連記事)
同様に、フセイン政権の本質的な部分がイラクで生き残っている限り、
彼らから即席爆弾を受け取って米軍を攻撃する原理主義者がいても、それ
はイラク人に代わって命をかけて自爆テロをやってくれる便利な道具にす
ぎない、と考えられる。フセイン政権は社会主義系の政権で、ライバルで
あるサウジアラビアが発祥のイスラム原理主義が掲げる宗教主体の考え方
を嫌っていた。
▼米軍の疲弊を待ってゲリラ戦を激化
リッターや私の見方が間違っていないとすると、ブッシュ政権はイラク
の現状を見誤っている。敵が誰なのか認定できていない米軍には、さらな
る泥沼化と敗北的な撤退しか道が残されていないことになる。
そもそもリッターらの報告により、アメリカ政府はフセイン政権が19
96年からゲリラ戦の準備をしていたことを知っていたはずである。また、
息子のイラク侵攻に反対していたパパブッシュ元大統領は開戦前「サダム
を逮捕または殺害しようとイラクに侵攻しても、多分サダムは捕まらず、
イラクを占領統治せざるを得なくなったわれわれは、出口の見えない泥沼
にはまるだろう」と警告を発していた。パパがここまで分かっていたのだ
から、米政府はフセイン政権の本質を十分知っていたと考えるのが自然だ。
(関連記事)
つまり、米政府は「イラクに侵攻すると泥沼化する」と分かっていたの
に侵攻したことになる。イラク開戦前、米上層部では、パパブッシュその
他の中道派はイラク侵攻に反対していた一方、チェイニー、ラムズフェル
ド、ウォルフォウィッツらのタカ派とネオコンは「何が何でもイラク侵攻
したい」という感じで「イラクは911実行犯とつながっている」「大量
破壊兵器を持っている」「中東を武力で民主化するのだ」など、間違いを
指摘されると次々と別の理由を持ち出す詭弁の力を使い、イラク侵攻の必
要性をブッシュ大統領と米国内世論に訴え続け、侵攻を実現させた。
故意と思える泥沼化戦略は、イラク侵攻後も続いている。フセイン政権
が消滅した後、バグダッドの各役所のビルで略奪や放火が起きた。これは、
統治に必要な情報をアメリカに渡さないようにするためのフセイン側の戦
略だったと思われるが、米軍は放火略奪される役所の前を通っても知らん
ぷりだった。イラク統治を順調に進めるには、住民票、公務員の名簿、自
動車登録などのデータベースが残っていることが必要だったが、これらの
ほとんどは破壊された。その結果、自爆テロで使われた自動車のナンバー
や車体番号が分かっても、こうした情報が捜査の役に立たないという現状
が生まれた。(関連記事)
また米当局は、頻発するテロに対する捜査の手伝いをさせるため、イラ
クの旧秘密警察(ムカバラト)の要員を雇用するようになった。フセイン
政権にはいくつかの諜報機関があり、ムカバラトはその一つである。フセ
イン政権が地下化して残っている中では、ムカバラトも当然地下組織とし
て残っているはずだから、その要員を雇用してテロ捜査をするというアメ
リカの戦略は、とんでもない大間違いである。(関連記事)
加えてイラク駐留米軍は、テロ退治の名を借りた無差別発砲や、検問所
の所持品検査で市民の持ち金を強奪するなど、一般市民をわざと怒らせる
ような行為を続けている。イラク人が地下化したフセイン政権を支持する
ように仕向けるかのような動きを、米軍自体が行っている。(関連記事)
米軍による統治が始まって数カ月たつと、しだいにイラク側からのゲリ
ラ攻撃は巧妙になった。まるで、駐留米軍が十分にイラク国民に嫌われ、
米軍兵士がかなり疲弊し、米国内で厭戦気運が高まっていくのを待ってい
たかのように、米軍に対する攻撃が強化洗練されている。これも、フセイ
ン政権が最初から考えていたゲリラ戦の戦法だったのかもしれない。イラ
ク戦争は終わっていないどころか、アメリカ側がどんどん不利になってい
ると感じられる。
▼誰がアメリカを罠にはめたのか
泥沼のゲリラ戦にはまることを知りながら、あらゆる反対や説得を押し
切って、米軍をイラクに侵攻させたブッシュ政権のタカ派は、自国に対す
る重大な背信行為を行ったことになる。タカ派の中でも、戦争の泥沼化を
予想できず「中東を民主化するのだ」と本当に思っていた単に無能な高官
もいたかもしれない。だが、タカ派の全員がそう思っていたということは、
あり得ない。
中道派からの警告を「あいつらのいうことは聞かない方が良い」といっ
て無力化し、無能な高官たちが泥沼化の危険に気づかぬよう、故意に背信
行為を行っていた者がいたはずだ。そうでなければ、ブッシュ大統領が経
験豊かな父親の警告を無視するという結果にはなりにくい。タカ派の中で
最も詭弁を弄していたのは、ウォルフォウィッツ、パール、ボルトン、フ
ェイスといったネオコンの人々であり、故意性が最も高そうなのは彼らで
ある。ネオコンの多くはイスラエルとの結びつきが強いが、イスラエルは
アメリカよりずっと熱心にアラブ人の特性が研究し、フセイン政権の動静
についても良くウォッチしていた。
政権中枢の動きの詳細が秘密になっている以上、誰がアメリカをイラク
の罠にはめたのか、確定的なところは分からないが、同様に分析が難しい
のが「なぜ自国を罠にはめる必要があったのか」ということである。この
問いは、私の最近の記事の中でしばしば出てきており、なかなか解けない
のだが、最近はイラク戦争とベトナム戦争の状況が似てきていることから、
ベトナム戦争という故事から何かヒントが分かるのではないかと思い始め
ている。このことは、もう少し研究してから書きたい。
●関連記事など
The Importance of Losing the War
How to Exit Iraq, Dump Neo-Con Policy, and Win Re-election
Robert Fisk: One, two, three, what are they fighting for?
Maureen Dowd: With his eyes shut, Bush sees an improving Iraq