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マイクロソフト/“ポストPC時代”をにらんだデジタル統合の技術戦略【CNET Japan記事】
http://www.asyura2.com/0311/it04/msg/157.html
投稿者 クエスチョン 日時 2003 年 10 月 17 日 00:07:27:WmYnAkBebEg4M

ダイヤモンドLOOP:
マイクロソフト/“ポストPC時代”をにらんだデジタル統合の技術戦略【CNET Japan記事】
http://japan.cnet.com/news/loop/story/0,2000047870,20061355,00.htm

平野日出木(ジャーナリスト)
2003年10月11日(土) 15時16分

この記事は『ダイヤモンドLOOP(ループ)』(2003年11月号)に掲載
された「マイクロソフト/“ポストPC時代”をにらんだデジタル統合の技
術戦略」を抜粋したものです。LOOP本誌ではさらに詳しい内容がご覧
いただけます。


 圧倒的なマーケティング力で、パソコン(PC)の世界を広げてきたマイ
クロソフト。その強さゆえ、同社が描く未来像は、良くも悪くも社会全体
に大きな影響を与える。彼らは10年後の世界をどう考えているのか。その
最新技術と新製品開発から“ポストPC”戦略を覗いてみよう。

 「(未来の)コンピュータは、ちょうど今の電気のように、われわれの
やることすべてに関与するが、それを使うこと自体はもはや、特別な体験
ではなくなる。私たちの関心は、コンピュータを使って何ができるかであ
って、道具そのものではなくなる。コンピュータはあらゆる人の周りにあ
り、生活のあらゆる場面で不可欠な存在になるが、事実上“消滅”してし
まう」(ビル・ゲイツマイクロソフト会長、英エコノミスト誌別冊「The
World in 2003」への寄稿)

 PCの世界を制覇するマイクロソフトが描く未来、それはPCの消滅だ。

 携帯情報端末(PDA)、携帯電話、デジカメ、オーディオ、映画、ゲー
ム……。コンピュータ機能は仕事場や書斎だけでなく、家庭のリビングか
ら外出先、移動中の乗り物内にまで、さまざまな意匠を得ながら、ユビキ
タスに急拡散する。

 デジタル技術が日常生活に浸透するにつれ、特定用途に合った専用機
(デバイス)が増え、今PCと呼ぶような形状の器材は目立たなくなってい
く――。ゲイツ会長の言葉を翻訳すれば、こうなるだろう。

 彼のビジョンをもう少し詳しく記した社内白書「The Digital Decade」
(2002年11月公表)によると、予言どおりの世界が実現するには、「コン
ピュータ自身とデバイスの両方」の機能向上が欠かせないという。

 現在、人間とコンピュータを結びつけるのは、「手の指」と「マウス」
「キーボード」。将来、この組合せは大幅に変わる。入力手段は指から音
声、身振り、視線、意識などへと広がり、入力装置はマウスやキーボード
から用途別のデジタルデバイスに進化する。そして多種多様のデバイスは
ワイヤレスでつながり、それらをOS(基本ソフト)が総合的にコントロー
ルする。

 こうしたビジョンに向かって、同社は基礎研究を進める。すなわち、

人・機械間のインターフェース
デバイス間を結ぶ通信
デバイスを統合するソフトウエア
 が研究の中心テーマだ。注目すべき点は、ハードウエアに関する基礎研
究の比重が少しずつ増えていることだろう。

ペンタッチでデータ通信ロボットが会議に代理出席

 9月上旬、ワシントン州レッドモンドの本社で開かれたハードウエア展。
「ワイヤレス環境における技術革新」と銘打った割には、マウスとキーボ
ードの新製品発表の様相を呈し、報道陣は肩すかしを食らわされた。しか
し、ここでいくつかの未来技術を披露している。

 まず、「ペン通信」。マイクロソフトが提唱し、02年秋にPCメーカー各
社が発売した手書き(ペン)入力のPC、「タブレットPC」を使って通信す
る技術。二人が各々タブレットPCを持ち寄る。一人が自分のPC上のアイコ
ンをペンで指示し、すぐ隣にあるもう1台のPCのディスプレイ上までドラ
ッグすると、即座にそのアイコンがコピーされる。PC同士は、Wi-Fi
(802.11プロトコル使用)で結ばれている。

 移動(コピー)だけでなく、二つのディスプレイを一体として使い、横
長の写真や巨大なスプレッドシートを表示することも可能。一方のPCを操
作用、もう一方を表示用として使うこともできる。

 「映画『スタートレック』みたいでしょう? タブレットPCが主流にな
れば近距離通信はこのやり方が自然。何も入力する必要ないので最も速い」

 基礎研究所マイクロソフト・リサーチ(MSR)で、ハードウエア研究に
かかわるケン・ヒンクリー氏は、こう説明する。

 MSRは約650人の研究者を擁するが、ハードを担当するのは同氏と後述の
マイク・シンクレア氏の二人だけ。ハードウエア事業部内の研究者と一緒
になって活動しているという。

 続いて、「デジタル・プレゼンス」。家にいながら会社のミーティング
に出席する――そんなバーチャルな環境をつくり出すのが狙いの新技術だ。

 「朝10時半、私はまだ家にいます。でも研究所の会議に出なくちゃいけ
ない。そんなときは、インターネット環境にログオンして、家からロボッ
トを遠隔操作し、このロボットを会議に出席させればいい」

 ハードウエア事業部内の応用研究グループの研究員、スティーブン・バ
ティーシュ氏は手元のパソコンで楽しそうにロボットを遠隔操作する。

 ロボットの外見は、ノートPCに車輪が付いただけ。しかし、バティーシ
ュ氏の手元のPCとは、画像、音声、テキストなどあらゆるデジタルデータ
を通信し合える。ロボットの目が捕らえた映像は同氏のPCに映り、彼がPC
に話しかければ、離れたロボットからその声が発せられる。

 「データはXML形式なので、音声でも映像でも受け入れられる。ロボッ
トは単にデータを受け取る器だから、モーターでもギアでもなんでもいい。
それらをデータが直接指令して動かす。PC同士がウェブ経由で交信してい
るのと同じ技術で、ネット上のあらゆるデバイスを遠隔地から操作できる
環境をつくる、そういう発想です」(バティーシュ氏)

 ハードウエアはすべて既製品、ソフトウエアは2000年に発表した次世代
ネット戦略「ドットネット(.NET)」技術を活用した。


「タイル・ディスプレイ」でビルの壁を画面に

 一方、ビルの壁一面といった巨大ディスプレイを安価に作ることを目指
しているのが、「タイル・ディスプレイ」。MSRシニアリサーチャー(ハ
ードウエア担当)のマイク・シンクレア氏と、同アーキテクトのゲーリー
・スタークウェザー氏が研究を進める。スタークウェザー氏は1960年代に
ゼロックスでレーザープリンタを発明した伝説の人物だ。

 シンクレア氏は、鏡と回路が埋め込まれた15?四方程度の基板を使って
説明したが、これは1000倍に拡大した模型。実際は、人間の毛髪断面程度
の大きさの基板にこれらの仕組みを整えるという。

 この微細なシステム、すなわちMEMs(マイクロ・エレクトロ・メカニカ
ル・システム)に、印鑑のような形状をしたRGBプロジェクタ(映写装置)
を1対1で対応させるのが、この技術のミソ。つまり、この小さなプロジェ
クタ1個が、毛髪程度の太さのMEMs基板1枚が発するイメージを映写する。
印鑑型のプロジェクターを「タイル」のように数千万個つなぎあわせれば、
巨大なディスプレイが出来上がるという構想だ。

 「今の液晶やプラズマディスプレイでは、50インチ(約1.3m)がせいぜ
い。(印鑑型の)タイル・プロジェクタなら安価に大量生産できる。巨大
ディスプレイを経済的に作るにはこの方法が適している。ただわれわれは
ディスプレイ屋ではないので、ある程度の大きさの試作品まで作り、商用
化は日本や韓国メーカーに任せることになるだろう」(シンクレア氏)

 このほか、PDAなどのケースに埋め込む、または張りつけるセンサー、
「スマート・スキン」も紹介した。スタイラス(専用ペン)を使わなくて
も、指を上下させるだけでセンサーが感知し、ディスプレイのなかのデー
タをスクロールできるようになる。

 また、「3次元マウス」は、加速度計と磁気計を内蔵した球体。これを
動かすことで、パソコン・ディスプレイ上に映る3次元映像を自在に動か
せる。編集と作動を同時にできるので、CADの作業効率を大幅に高められ
るという。

ウィンドウズを中心にデジタル界を統合化

 こうしたハードの研究が、人・機械間のインターフェース、機械同士の
通信を主な対象としているとすれば、ソフトの目指す方向は、多種多様な
デジタルデバイスの統合になる。

 9月30日、全米で発表した「ウィンドウズXPメディアセンター2004」
(MCE2004)。マイクロソフトはこれを、ゲイツ・ビジョン実現の第一歩
と位置付ける。

 昨年10月、米国、カナダ、韓国でテスト版を発売し、消費者の反応を探
ってきた。今回のバージョンはいわば本番。日、英、独、仏で年内に発売
し、来年初には中国でも売り出す予定だ。

 細かい機能(図表2参照)はさておき、基本はマウスやキーボードを使
わずに、リモコンでテレビ画面を操作して、身の回りのデジタルデバイス
をコントロールしようという発想。

 PCのハードディスクは巨大なデジタル倉庫になり、パッケージCDやイン
ターネット経由で購入・聴取した音楽、デジカメで撮った写真、録画した
TV番組などがすべて収まる。これらデジタルコンテンツを、たとえばDVD
にコピーして、独立したデバイスで鑑賞することになる。

 つまり、アップルコンピュータがマックOSと独自デバイス「iPod」、楽
曲のインターネット販売サービス「iTune」を通じて垂直統合的にやって
いることを、多種多様なコンテンツとデバイスで、サードパーティを巻き
込んで展開しようというわけだ。その生態系の中心に君臨するのは、もち
ろんウィンドウズだ。

 「今までは、ユーザー側がある特定の場所に行き、特定のデバイスの仕
様に合わせる必要があった。スマートなPCとデバイス群がうまく融合すれ
ば、これからは同じことを場所・デバイスにかかわらず体験できるように
なる。その体験全体をコントロールするのがMCEであり、家庭のリビング
になる」(ウィンドウズeHome事業マーケティング・ディレクターのブラ
ッド・ブルックス氏)

 ウィンドウズを中心にすべての“デジタル体験”をコントロールしたい
という、巨人マイクロソフトならではのビジョンがよく見える。しかし、
インターフェース次第ではユーザー、さらに同枠組みに参加するデバイス
メーカーが増え、実現する可能性は十分ある。

人生すべてをデジタル化PCは自動車を越える?

 そのデジタル体験は今のところ娯楽の受動的な鑑賞に限られているが、
同社の野望はそこにとどまらない。「2年以内に家庭回りのさまざまなス
イッチ操作に及ぶ」(ブルックス氏)のは当然として、さらにその先に“
人生経験のすべて”をデジタル化することまで思い描く。

 MSRのアーキテクト、ゴードン・ベル氏が統括するプロジェクト、「マ
イライフ・ビッツ」。人間が一生の間に制作したり、他人から受け取って
蓄えた全個人情報をデジタル化し、データベース管理することが目標だ。

 ベル氏は、旧デジタル・エクイップメント(DEC)でミニコンを開発し
た、これまた伝説の人物。

 「1日に100通のeメール、100ページのウェブ、5ページのスキャン、10
枚のデジタル写真、8時間の音声録音。それに10日に1冊の本と1枚の音楽
CD。これだけのペースで保存していった場合、現在の80GB(ギガバイト)
のハードディスクは5年分の情報を収納できる。その間にテラバイト(1テ
ラ=1兆=1000ギガ)のハードディスクが登場するだろうから、一度アッ
プグレードすればさらに60年分を保存できる。映像の問題も100テラバイ
ト時代になれば解決する」(ベル氏が同僚のジム・ゲメル氏、ロジャー・
ルーダー氏と記した論文「Living with a Lifetime Store」から抜粋)

 「人生丸ごと保存」のコンセプトは、未来の家庭イメージを展示する本
社施設MSホームのなかで、すでに「デジタル・ヒストリー/デジタル・メ
モリー」として紹介されている。

 マイライフ・ビッツ自体も、05年投入予定の次世代OS「ウィンドウズ・
ロングホーン(開発コード名)」に標準搭載される予定だ。

 次世代ネット戦略「ドット・ネット」がプライバシーに敏感なユーザー
から反発を買って失速したように、マイクロソフトのビジョンが第三者の
広範な支持を集められるとは限らない。

 しかし、

人とデバイスの間のインターフェースが改善し
デバイス同士の通信機能が向上し
多くのデバイスを直感的に管理できるソフトウエアが登場すれば
 確かにほとんどの“人生経験”をデジタル保存しやすい環境になる。そ
うなったとき、われわれは墓石にではなくデジタル・ディスプレイの前に
手を合わせ、故人を偲ぶようになるのだろうか。

 「パソコン発明前の世界を想像してみよう。電化製品はやはり存在し、
自動車も外見、性能はほぼ同じだ。学校にせよ、商店街にせよ、オフィス
ビルにせよ、われわれを取り巻く物理的な環境は今とさほど変わらない」

 マイクロソフトの白書はこう記す。
 「これを自動車のない世界と比べてみよう。自動車がなかったら、われ
われの世界は日常生活から、人びとの結びつき、家の建築法、街のレイア
ウトまで一変する。パソコンはまだ、これほどのインパクトを持っていな
い」

 過去約30年は、パソコンという箱が登場し、既存のアナログ製品にその
機能が少しずつ付加されていく時代だった。ゲイツ会長によれば、これか
らはその箱が形を崩し、独自デバイスに変化していく。パソコン機能が日
常生活の隅々に浸透して、事実上“消滅”したとき、空気と同じく、それ
なしには生活できない不可欠な存在になっているのかもしれない。


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平野日出木 Hideki Hirano
1985年日本経済新聞社入社。素材、エネルギー、自動車、機械、企業財務などの分野を取材、産業部次長を経て2000年退社。早稲田大学政治経済学部卒、カリフォルニア大学バークレー校MBA。


記事提供:『ダイヤモンドLOOP(ループ)』
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