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ブナ植樹に自然愛好家ら疑問の声 2004年1月15日(木)
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2004/0115/nto0115_9.html
青森市が一九九二年から、同市の横内水源地で行っているブナ植林事業に対して、自然愛好家から疑問の声が上がっている。「ブナ植樹のためにミズナラなどの木々を伐採するのはおかしい」といった意見や、「本来、ブナが生えていないところに、植樹するのは生態系に反する」という声だ。これに対して市水道部は「伐採しているのはササや低木。ブナ以外でも生かせる木は生かしている」と理解を求める。
青森市は九二年から、「日本一おいしい水」の水源を保全するため、同市横内でブナの苗木を植樹してきた。多くの市民ボランティアが参加して、これまで三十七ヘクタールに約十四万本のブナを植え、環境保全の機運を高めてきた。
この事業に異論を唱えているのが、青森高校生物部OBでつくる「やぶなべ会」(蝦名憲会長)だ。同会は「ブナ植樹のために、市は樹齢三十年以上のミズナラの木を伐採している。今までの培われた自然の保水力を退行させているのではないか」と訴える。
さらに県森林野生動物研究会会員の笹森耕二さん(64)は「特定の地域にブナだけを植樹するのは、動物の生態系を壊す恐れがある」と危ぐする。
また、ブナの植生地は海抜五〇〇メートル以上といわれ、市が現在、植えている海抜約三五〇メートル地点は、自然の生態系からズレているという指摘もある。県自然観察指導員連絡会の小関孝一さん(50)は「それぞれの木々が、そこに生息したくて、生息しているのに、わざわざ伐採して、違う種類の木を植える必要があるのだろうか」と疑問を挟む。元営林局職員の工藤悦郎さん(68)も同じ意見だ。
これらの意見に対して青森市水道部は「伐採しているのはササや低木。以前は、木がまっすぐ伸びない“暴れ木”も切っていたが、最近は切っていない。生かせる木は、生かし、混合林にしている」と説明する。
さらに植樹場所が本来のブナ生息地ではない−という指摘には「十年前に植えたブナは五、六メートルに達し、順調に生育している」と植樹地が“的外れ”ではないことを強調。来年度以降も植樹を継続する方針だ。
八甲田の自然に詳しい「青い森ネイチャーガイド協会」の平井憲治さん(64)は「この問題は長い目で見なければならず、どちらが正しいか即答することはできない。市と市民団体が同じテーブルで話し合うのが必要ではないか。互いに連携して調査を行うのも一つの方法」と話している。
【参考】
植栽モノと言えば、2002年夏に起きた熊本でのマングローブ植栽の話を思い出します…(下記参照)
この問題は結局どうなったのでしょうか。。。
社説 マングローブ論争 大いに議論して着地点を [熊本日日新聞:2002年8月18日]
http://www.kumanichi.co.jp/iken/iken20020818.html#20020818_0000002966
マングローブの植栽は是か非か。県自然環境保全審議会の声明を機に“マングローブ論争”が続いている。植栽の自粛を求める同審議会と、それに反発する宇土郡不知火町、芦北郡津奈木町・芦北町で植栽してきたグループなどの主張は相容れず、平行線のままだ。しかし、“マングローブ論争”は自然保護の本質的な問題とかかわっているだけに、その行方に注目したい。
マングローブと聞いて「何だろう」と思う人も多いかもしれない。マングローブ林は熱帯や亜熱帯の河口付近など潮の干満の影響を受けるところに生じる特殊な植生で、日本では主に琉球諸島に発達している。鹿児島県喜入町が北限とされるが、江戸時代に植えられたという説もある。メヒルギなどヒルギ科の植物を中心に多い所で三十種ほどの固有の植物で構成されている。
県内では不知火町、芦北町、津奈木町の干潟に合計で六千二百本のメヒルギが植栽されている。同審議会では「これまで干潟の生態系に存在しなかった外来の植物を強制的に押し込むのは問題。海の再生よりも環境破壊につながる要素を多く含んでいる」と警鐘を鳴らした。
これに対して国際マングローブ生態系協会員の中島精之さんは「試験的な植栽。生態系にどんな影響があるのかデータを出して欲しい」と反発。植栽グループからも「環境浄化機能がある」「八代海の再生のために植えた。警鐘でなく提言してほしい」「現地調査や関係者からの意見聴取を」などとの声があがった。
日本の自然は今、非常に厳しい状況にある。人為的あるいは知らない間に外国から入ってきた移入動植物が、在来の生態系に大きな影響を与えている。例えばブラックバスは一九二五年に神奈川県の芦ノ湖に放流されて以来、釣り人らが各地の河川や湖沼に放流、在来の魚に大きな脅威となっている。現在、全国四百七十一カ所で確認され、熊本でも猛威をふるっている。
また、貴重とされる動物あるいは植物だけを保護したために、多種多様な生物が有機的に絡み合って成り立っている生態系を壊したケース。さらに自然を再生しようと同じ種とはいえ他の場所から持って来たため、遺伝子のかく乱を引き起こした運動も数多い。
しかし、ブラックバスの問題一つをとっても立場が異なれば考え方や意見が異なり、解決策を見出すのは極めて難しい。さらに貴重種とその生態系をどう保護していくのか、遺伝子のかく乱を防止するにはどうすればいいのか。課題山積だが、環境省はブラックバスなどの移入動植物に対してやっと本格的に取り組み出したばかりというのが現実だ。
“マングローブ論争”は、こうした現状にさらに問題を一つ提起した格好。メヒルギというもともとなかった樹木を植えることの是非にとどまらず、八代海の環境保全をどうするのかという課題に議論がおよび、具体的な解決策を探ることができれば、問題提起はさらに重要な意味を持ってくる。
熊本県は「自然保護先進県」である。昭和六(一九三一)年の発足以来、県内の植物を調べてきた熊本記念植物採集会をはじめ、自然愛好団体による動植物のデータがかなりそろっており、その上に立っていくつもの自然保護運動が展開され、実績を積み重ねてきた。その過程で試行錯誤と大いなる論議が尽くされてきたことはもちろんである。“マングローブ論争”もこうした歴史を踏まえ、言いっ放しではなく、議論の中から着地点を見い出す必要がある。