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[有機農業視察見聞録]
http://members.jcom.home.ne.jp/cuba/
さる12月21日、自然エネルギー推進市民フォーラムが主催したエネルギーシフトをテーマとした講座に参加してきた。有機農業と自然エネルギーで国を支えているキューバの状況について、吉田太郎さんがお話をした。彼は都庁の農林官僚で、著書には『有機農業が国を変えた―小さなキューバの大きな実験』(コモンズ)、『200万都市が有機野菜で自給できるわけ―都市農業大国キューバ・リポート』(築地書館)がある。
非常に興味深い内容だったので、以下、筆者が聞き書きしたものからご紹介する。
1,100万人の人口を持つキューバは、世界を席巻しているグローバリゼーションとは反対方向にある。この国は社会主義圏の中でグローバリゼーションを経験しており、砂糖を生産する代わりにソ連から石油の供給を受けてきた。
ところが、1990年代のソ連崩壊とアメリカによる経済封鎖は、エネルギーの枯渇を招いた。輸出入の1/3を失い、GNP成長率はマイナス20%(1993年)に落ち込んでしまう。基礎的エネルギーをどのようにまかなうかが国家の存亡をかけた緊急課題となり、様々な手を打ち始めた。
「本当に必要なもの以外は消費しない」をスローガンに、これまでエネルギーを必要としてきた技術をローテクノロジーに転換し、節電に努め、自然エネルギーを導入した。キューバ国民1世帯あたりの消費電力は117kWhに過ぎないが、これはサトウキビのバガス(絞りかす)を使ったバイオマス発電、河川における小水力発電、風車を使った揚水施設や風力発電、太陽光発電、木質バイオマスを供給するための「エネルギー林」の造成といった懸命のエネルギー源開発と共に、子どもに対する環境教育を通じて最小のエネルギー消費で抑えているのである。
エネルギー消費を抑えるために、農業の転換も図られた。トラクターは牛耕に、化学肥料は天敵に、輸入に頼っていた飼料は林間放牧へ取って代わり、国を挙げて有機農業に取り組み始めた。こうして大規模な国営農場は解体され、独立採算性による小さな組合が設立された。国民一人一人が農業に携われるよう、法律も改正された。「人民耕作」は個人による自給用のコメづくりであるが、日本から最新技術を導入することで収穫量をアップさせたそうである。その最新技術とは「田植え」であった。
首都ハバナのような大都市では軍民が協力して空き地を利用した野菜栽培が始まった。日本では若者を中心にスローフードが持てはやされているが、キューバでは国を挙げてスローフード運動に取り組み、市内にはベジタリアンレストランも開店している。
また、政府もエネルギー消費を抑える技術の開発に努めており、高温のため作物が育たない夏場でも農業ができるよう、温室ならぬ「冷室」が開発されている。屋根を二重ガラスにし赤外線を吸収するフィルムを貼りつけて中を涼しくするのである。研究機関での殺菌装置も熱ではなく圧力で殺菌している。政府だけでなく、国内に2,200あるNGOも太陽光発電の普及などで活動している。
こうしたキューバ政府の政策を支えているのは、アメリカから独裁者と忌み嫌われているカストロ議長の指導力に負うところが大きい。世界を席巻しているグローバリズムは後50年も続かないとし、「消費社会から将来は描けない」と語る議長は、政府の意識改革に取り組み、行政改革や非効率的な組織の改廃を断行し、エネルギー消費が小さくとも耐えうる国家を作った。もちろん共産党による一党支配であるし、住民参加を進めているのは革命防衛委員会という隣組組織。国民の平均月収はわずかに20ドルだ。しかし、国民はスローに楽しみながら生きている様子。
吉田さんは「幸せとは何か」を考えさせられたと語った。(山崎求博) [2003/12/27 ]
■キューバの有機農業サイト
http://members.jcom.home.ne.jp/cuba/
http://www.janjan.jp/world/0312/0312269739/1.php
参考:キューバの有機農業について【参議院農林水産委員会の質疑】
http://www.asyura2.com/0311/war42/msg/597.html