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今年は豊作、水俣のみかん
不知火海を見渡す丘陵地。この土地でみかんが収穫される。
熊本県水俣市は、今から50年ほど前に発生・拡大した、水俣湾での有機水銀による被害に代表される公害病、「水俣病」で知られる。(病名に地名が使われた日本最初の公害だけに、知名度が高い。) 一方で、その負の歴史を克服して、地元学(足元の当たり前の豊かさに気づくための取り組み)などで活力を取り戻し、今や地域づくりのモデルとして注目を集めるに至っている。
地産品の象徴として、甘夏などのみかんは有名だが、これは水俣病によって、沿岸漁業が営めなくなった漁民を中心に、1960年代に農業に活路を見出したのが始まりという。山を開き、サツマイモ畑やみかん園を広げていったが、海での有機水銀の災禍に続き、転進した先の農園で、今度は農薬に苦しめられた。(農薬使用が現在よりも、無防備に扱われたことに起因している。) 肝臓を痛めるなど健康被害に遭う生産者が増えたため、1970年代になって、水俣病患者や支援者が中心になって、医療の勉強会を継続的に開催。「農薬は劇毒」という認識を共有する。
以来、無農薬のみかん栽培をめざし、「水俣病患者家庭果樹同志会」「反農薬袋地区(はんのうやくふくろちく)生産者連合」「津奈木(つなぎ)甘夏生産者の会」の三者が共同して「水俣みかん共同出荷組合」を結成。「反農薬」「有機栽培」「自主販売」を柱に、甘夏をはじめとする柑橘類や野菜などを生産・出荷し、好調だ。公害の原点とも言える土地だからこそ、食の安全性に対する思いは強い。水俣病の患者や家族の人たちが関わっているため、「公害の被害者の生産活動によって、新たな被害者が出るようなことはしまい」という決意が込められている。「水俣だからこそ安心安全」と、逆に水俣産であることを強調しているのがポイント。水俣病のマイナス要素をプラスに転じた好例として、水俣のみかんは語られている。
水俣・芦北(あしきた)地域は、不知火海(しらぬいかい)に面したリアス式海岸の続く丘陸地。日照に恵まれ、水はけがよく、柑橘類栽培には打ってつけ。小みかんや温州(うんしゅう)みかんは昔から植えられていたが、特に丈夫な甘夏は農薬、化学肥料ともに全く使用しなくてもいいため、代表格になっている。ノーワックス、ノーブラッシング、無選別で出荷できる強みは大きい。
一年おきに豊作と不作を繰り返す傾向(表と裏)があるそうだが、今年は表の年に当たるため、どこも豊作。今夏7月20日に豪雨による土石流が水俣を襲ったが、幸いみかんには影響はなかった。水俣みかん共同出荷組合の他、(財)水俣病センター相思社(そうししゃ)でも、みかんの出荷であわただしい時期を迎えている。
日付 2003-12-17
筆者 冨田 行一
媒体 寄稿
団体名 東アジア環境情報発伝所
URL http://www.eden-j.org/
http://www.enviroasia.info/japanese/index_j.php3?status=n_view&w_num=1216
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関連URL
苦海浄土―わが水俣病 講談社文庫 石牟礼 道子 (著)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061340204/qid=1071813718/sr=1-1/ref=sr_1_2_1/249-6036734-9296363