厚生労働省のエイズ動向委員会（委員長・吉倉広国立感染症研究所長）は２７日、昨年１年間に新たに報告されたエイズウイルス（ＨＩＶ）感染者が過去最多の６２７人（速報値）に上ったと発表した。うち８７人は献血時の検査で見つかり、献血者１０万人当たりの陽性率も１．５４８と過去最高となった。ウイルスが混入した献血血液が日本赤十字社の検査をすり抜けて血液製剤の原料となる恐れもあり、吉倉委員長は「血液製剤の安全性にも少なからぬ影響を与えかねない」とのコメントを発表した。

　同委員会によると、これまでに新規のＨＩＶ感染者が最も多く報告されたのは０１年の６２１人だった。献血者１０万人当たりの陽性率は年々高くなっており、昨年は９４年（０．５４５）の３倍近くに上った。保健所での検査件数は５万９２３７件、保健所以外は１万６３０２件で、いずれも前年比２〜３割の増加になった。

　日本赤十字社は献血時検査で陽性が判明しても本人には通知しないとしているが、実際には現場の医師の判断で伝えているケースもあり、感染を心配した人が検査目的で献血するケースが増えている。

　吉倉委員長は同省での記者会見で「感染者が着実に増えていることを知ってほしい。検査件数の増加は、感染を心配する人が増えているとも考えられる。検査目的の献血を排除するためにも、心配な人がすぐに検査できるような体制の整備やＨＩＶに関する知識の普及・啓発が必要だ」と述べた。

　厚労省は東京など数カ所の大都市圏のＨＩＶ検査体制を拡充するため、来年度予算に２７００万円を計上した。日赤も３月から試行的に東京都、大阪府、北海道の特定の血液センターで献血者に身分証明書の提示を求め、検査目的の献血の防止を図る考えだ。【須山勉】

　薬害エイズ被害者で厚労省薬事・食品衛生審議会血液事業部会の委員を務める花井十伍さんの話　６２７人のうち、献血時の検査で８７人も感染が見つかるのは異常で、（匿名性の高い）献血制度に不備があるとしか考えられない。日赤は献血時の身元確認を早急に行う必要があるし、中途半端な感染の通知はやめて、検査だけできる施設を献血所の中に併設するなどの対応を急ぐべきだ。

［毎日新聞１月２７日］ ( 2004-01-27-20:36 )

http://www.mainichi.co.jp/news/selection/20040128k0000m040079001c.html

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