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朝日新聞2003年12月8日
http://www.asahi.com/national/update/1208/036.html
学内の調査委、論文捏造を否定 昭和大医学部
昭和大学医学部(東京都品川区)脳神経外科の阿部琢巳教授(44)が架空の症例や事実と異なる内容を入れた論文を作成し、国内外の学会誌に発表していたと指摘されている問題で、学内の調査委員会(委員長・片桐敬医学部長)は8日、「一部錯誤が認められたが、架空症例や虚偽による論文捏造(ねつぞう)は認められなかった」とする調査結果をまとめた。
論文に虚偽記載などがあると報じた朝日新聞の記事に対し、大学として謝罪と訂正を求める文書を送付する、としている。
調査委は学内の教授8人と顧問弁護士1人の計9人で構成され、計4回委員会を開いてきた。
発表された調査結果は、朝日新聞の取材に対して、先月12日に阿部氏自身が説明した内容と大きく食い違っている。調査委が明らかにしなかった点もある。
阿部氏が架空症例を載せたと認めていた論文は2本ある。
1本目は97年11月号の日本脳神経外科学会誌に発表された脳下垂体腫瘍(しゅよう)を段階的に取り除く手術に関する論文。阿部氏は7例のうち1例については、根拠となる文書やカルテを示すことが出来ず、架空であると認めていた。もう1例についても、実際には1回しかしていない手術を2回したことにしたと認めていた。
阿部氏は「論文の審査官から、症例数を増やせないかと言われたのがきっかけだった」と取材に答えていた。
これに対して、学内の調査委は「この2例は阿部教授が他の施設で手術したもので、架空や水増しはない」と説明。施設名については「言えない」と答えなかった。
2本目は01年5月号の「脳神経外科ジャーナル」に発表された、腫瘍を超音波で吸引する器具を使った手術に関する論文。阿部氏は、4例のうち1例が架空ではないかと取材で指摘され、当初は38歳の男性であると主張した。
しかし、論文に記載された平均年齢とつじつまが合わず、「架空と言われても仕方ない」と認めた。
調査委は「この症例は65歳の女性」と全く別の症例を挙げ、「手術記録やカルテで確認された」と説明。「性や平均年齢に誤記があったため、著者(阿部氏)に訂正を雑誌に掲載するよう求めている」とした。
阿部氏が事実と異なる記載をしたとされる論文は3本ある。
鼻の付け根奥の骨の底から髄液が漏れないようにセラミックのプレートでふたをする再建手術に関して、論文では「髄液漏れなどの合併症は1例も認められていない」とした。
だが実際には2回手術し直しても漏れを防げない症例があった。
調査委の報告は「もともと髄液が漏れていたので併発したのではない」とした。
また、実際には昭和大病院の一般病棟で院内感染による敗血症で亡くなったのに「ホスピスで死亡」とした論文については、「ホスピスとは緩和治療の状態を表現している。敗血症は論文の趣旨とは関係ない」とした。
阿部氏は、取材に対しては「外国の論文ではホスピスで亡くなったという例が多いので、その方がいいと思った」などと話していた。先月14日の調査委発足後、阿部氏は取材に応じていない。
阿部氏の論文をめぐっては、日本脳神経外科学会も独自に調査委を設け、現在、事実関係を調べている。
(12/08 21:01)
?関連情報
昭和大医学部教授が論文複数捏造 架空症例や虚偽データ
http://www.asahi.com/edu/nyushi/TKY200311130315.html
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朝日新聞2003年11月14日
http://www.asahi.com/edu/nyushi/TKY200311130315.html
昭和大医学部教授が論文複数捏造 架空症例や虚偽データ
昭和大学医学部(東京都品川区)脳神経外科の阿部琢巳教授(43)が、架空の症例や事実と異なるデータを入れた論文を作成し、国内外の学会誌に発表していたことが13日、わかった。虚偽の内容が含まれる発表論文は、95〜01年の間に少なくとも5本に上る。教授は昨年5月に講師から教授に就任したばかり。「論文が採用されやすいようにデータを変えた。教授選を前に負けたくない、という意識もあった」と話している。
関係者や本人によると、架空症例を載せた論文は2本ある。
1本は日本脳神経外科学会の97年11月号の学会誌(NMC)に発表された「段階的経蝶(ちょう)形骨洞的下垂体腫瘍(しゅよう)摘出術」に関する論文。器具を鼻から蝶形骨洞と呼ばれる副鼻腔(ふくびくう)に通して腫瘍を段階的に取り除く、当時としては先端的な手術について、7人のデータを紹介した。
だが実際には、うち1人は実在しない女性で、この女性は3回にわたって手術を受けたとする架空の症例だった。また61歳の女性患者は、実際には1回しか手術をしていないのに2回手術したことにして症例数を水増ししていた。
教授は「論文の審査官から『症例数を増やせないか』と言われたため、架空症例を記載したと思う」と説明する。
2本目は「脳神経外科ジャーナル」01年5月号に載った論文で、腫瘍を超音波で吸引する器具を使った症例を紹介している。
実際は3例しか該当患者がいないにもかかわらず、4例に手術した、と記載した。教授もこの事実を認めている。
事実と異なるデータの入った論文は3本。01年6月号の別の医学誌に掲載された論文は、鼻の付け根奥の骨の底から髄液が漏れないようにセラミックのプレートでふたをする再建手術について書いた。だが15症例のうち19歳の女性に行った手術では、髄液の漏れが防げず2回も手術をし直したにもかかわらず、「髄液漏を併発した例もない」などと記載、「安全で有用な手術機材である」と結論づけている。
教授はこのプレートの開発にかかわっており、品質に直接かかわる虚偽記載になる。
このほか96年に海外の雑誌に投稿した論文では、46歳の女性患者について、「ホスピスで死亡」と書いたが、実際には昭和大病院の一般病棟で、院内感染による敗血症で死亡していた。95年10月の論文では、大脳動脈瘤(りゅう)破裂の38歳男性について、カルテに「左動眼神経麻痺(まひ)が残ったまま退院」とあるのに「神経損傷なく退院」と記載した。
阿部教授は85年に昭和大を卒業。約2年間、ドイツに留学し、97年に帰国。講師をしていた。今は脳神経外科で教える傍ら、昭和大学病院で外来診療もしている。
教授の行為について、ある脳神経外科医は「架空の症例は論外。新しい術式や器具について発表するのにデータを捏造(ねつぞう)していては、信頼性の根幹にかかわる。手術成績がいいというようにアピールしたかったのだろう」とみる。
脳神経外科の教授選は、約半年に及ぶ事前運動期間を経て昨年5月に実施された。11人が立候補し、論文の数や面接などを通じて決められた。阿部教授は当時、講師で、約10歳上の助教授を飛び越えての当選だった。第一筆者(中心となる執筆者)の論文本数は、11人の中で一番多かった。
◇
<教授選> 教授の退官に伴い、後任の教授を選ぶ選挙。一般的に、候補者は公募され、論文のコピーや研究業績リストなどの資料を提出する。
学内の選考委員会が書類選考を経て数人の候補者に絞った後、面接などを経て、全教授の決選投票で決まる。一度教授に選ばれれば、定年まで務められる。医局のトップである教授の権限は大きく、学内や関連病院の人事権や、研究費の采配(さいはい)権を握る。そのため、対立候補から中傷する怪文書が出回るほど熾烈(しれつ)な選挙戦となることも多い。
(11/14)
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