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http://www.medical-tribune.co.jp/mtbackno6/3605/05hp/M3605382.htm
[2003年1月30日 (VOL.36 NO.5) p.38]
ボツリヌス毒素の副作用の認識を
〔独マンハイム〕 ボツリヌス毒素は,斜頸や書痙,多汗症に効果があり,気になるしわにも有効である。しかし,ロストック大学のReiner Benecke教授によると,一般のメディアはボツリヌス毒素の効果のみを取り上げて称賛し,一部で生じる重い副作用については全く取り上げていないのは問題であるという。同教授は「ボツリヌス毒素は危険のない薬剤ではなく,副作用の発現頻度は比較的高い」と,第75回ドイツ神経学会で警告。頸部ジストニー患者に対する延べ3,485回のボツリヌス毒素Aの投与成績について報告した。
筋膜・結合組織を通過して循環系へ
Benecke教授によると,副作用は被験者の約20%で認められた。最も多く見られたのは嚥下困難で,発現頻度は15%。また,項部の筋肉(とりわけ頭板状筋)の脱力が3.4%で認められ,患者は「頭が重く感じ,特に前かがみの姿勢を取ると,前に倒れそうになる」と訴えた。さらに口渇を訴えたのは約 2 %で,項部痛,構語障害がそれぞれ 1 %弱で認められた。
全身性の脱力も約0.5%の患者で見られ,ボツリヌス毒素の全身性作用によるものと考えられている。血液の逆流のチェックのため何度も吸引し,血管内には注入していないと確信していても,この副作用に見舞われることがある。これは,ボツリヌス毒素の拡散によるもので,同教授は「ボツリヌス毒素は,数cmの厚さの筋膜・結合組織も透過して循環系に到達してしまう恐れがある」と説明した。
ボンで実施された別の研究では,眼瞼痙攣患者に対する延べ7,692回のボツリヌス毒素A投与成績が検討された。その結果,副作用発現率は22%と高く,約 5 %で兎眼,約 4 %で眼瞼下垂が認められた。他の副作用としては,涙液分泌量の亢進ないしは低下,眼内異物感,複視などが生じていた。ボツリヌス毒素Aに対する抗体を認めるケースでは,ボツリヌス毒素Bが治療選択肢となるが,この場合も副作用に対する注意が必要で,嚥下困難や項部の虚脱を生じる心配こそあまりないが,全身性の自律神経系への副作用を生じる恐れがある。
同教授らの頸部ジストニー患者を対象とした研究では,15例がボツリヌス毒素Bによる治療を受けたが,そのうち14例が口渇を訴え,なかには唾液分泌を全く認めなくなった患者も見られた。このような症例では,口唇の亀裂や感染のほか,口腔カンジダ症に至る恐れがある。また,3 分の 1 ( 5 例)の患者に眼の調節障害が起き,数週間文字を読むことができなくなってしまったという。