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生体認証:急成長ビジネス 「身分証」は指紋、虹彩、静脈
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/keizai/20040117k0000e020054000c.html
バイオメトリクス(生体認証)を使った本人確認の動きが日本でも進んでいる。米国がテロ対策の一環で年明けから一部外国人に指紋と顔の画像登録を義務付けたことで改めて注目された新技術。最も確実性が高いといわれ、市場の急拡大も見込まれる。だが、プライバシーに関する情報だけに慎重な扱いも求められる。【根本太一】
■機密と治安
東京・虎ノ門の沖電気ショールームに、「アイリスパス」という機器が展示されている。カメラが目の虹彩画像を取り込み、本人と照合されると自動的にドアが開くシステム。同社が98年、製品化に成功した。
左右の目、双子でも模様が異なるのが虹彩。誤認識率は「120万分の1」といい、企業や官公庁などで機密情報を扱う部署の入退室管理やパソコンのログイン用に販売されている。
一方、治安の悪化を受け最近は入り口に虹彩照合機、指紋認証機を設置した分譲マンションも出始めた。不審者の侵入を防ぐため、指紋が一致しないと稼働しないエレベーターも登場している。
金融機関は、盗難通帳による不正引き出し対策として血流を利用した本人確認に乗り出した。スルガ銀行(静岡県沼津市)は6月、個人で異なる静脈の線を赤外線画像で登録し、照合できた客にのみ現金を支払う預金商品を売り出す。東京三菱銀行は、指先の毛細血管情報などを組み入れたキャッシュカード発行の準備を進めている。
■50億円の市場
最初のバイオメトリクスは、筆跡鑑定だったという。最近は顔の形や声紋などでの研究開発が進む。日立製作所も指紋データをICカードに内蔵するなど早くから商品化に取り組んできたが、01年の米同時多発テロを境に、セキュリティーへの関心がより高まった。
関連企業の社団法人・日本自動認識システム協会によると、02年の売上高は約7億6000万円(前年比140%増)で、集計中の03年分も1億円増が見込まれる。新規参入した未加盟企業の額が含まれていないため、実際は「50億円規模とみるのが常識的」(業界大手)という。
いずれは携帯電話による現金取引や社内パソコン端末へのアクセスなどにも利用され、「3年後には2000億円市場になる」とみる関係者も少なくない。
■パスポートにも
こうした中、米政府が5日、ビザ(査証)取得外国人の入国に際し指紋と顔写真を電子登録する新制度を導入した。観光目的で入国する日本人も「10月26日以降に発行されるパスポート」に電子情報が組み込まれていないとビザ取得が必要になる対テロ政策だ。
このため外務省も04年度の国会審議を経てパスポートを刷新する。国際民間航空機関(ICAO)の方針に従い、当面は顔の画像にとどめる。
だが、野沢太三法相は昨年10月の国会答弁で、外国人犯罪や偽造パスポート対策としての「指紋などの情報を組み込んだ旅券の効果」に言及している。上智大の田島泰彦教授は「将来的には運転免許証、住民基本台帳などのデータがネットで一元化されるだろう。国には監視しやすく便利だが、ボタン一つで個人の情報が丸裸にされる危惧(きぐ)がある」と指摘する。
[毎日新聞1月17日] ( 2004-01-17-14:02 )