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原油高騰に「複数犯」 イラク情勢とドル安の影響も
http://www.asahi.com/money/topics/TKY200401190052.html
原油市況が高値を続けている。先週末のニューヨーク市場では1バレル=35ドル台と、昨年3月のイラク戦争直前の水準を約10カ月ぶりにつけた。しかし、世界的な需給が特に逼迫(ひっぱく)しているわけではない。外国為替市場のドル安で投資マネーが原油に流れているところへ、不安定なイラク情勢が響いているからだ。米国への寒波襲来など一時的な天候要因に加え、中国需要の拡大など中長期的な見通しも絡まって、油価を押し上げている。
石油輸出国機構(OPEC)が指標としている7油種平均のバスケット価格は、イラク戦争開始前に1バレル=34ドル近くに上昇し、戦争が始まると短期終結予想から約25ドルに急落した。その後はイラク情勢をにらんだOPECの生産微調整により、25〜28ドルで推移していたが、昨年12月から騰勢となり、年明け以降は30ドルを超える。
しかし、この高値は需給を反映したものとはいえない。日米欧などの消費国で構成する国際エネルギー機関(IEA)によると、03年は供給が需要をわずかに上回り、04年1〜3月も同じ状況にある。逆に、値下がりしてもおかしくない。
■米の寒波
高値には、最大の消費国である米国の事情が世界の油価を引っ張っている背景がある。ニューヨーク市場の米国産WTI原油の先物価格は、地元米国の状況を取引材料にしやすい。しかし、その値動きは世界に波及するからだ。
米石油会社はリストラで、原油の在庫を極力減らす傾向にある。流通を円滑に進める最低限と市場関係者がみていた在庫量を、年明けには割り込んだ。そこへ「1月に米国を寒波が襲う」との気象情報が流れ、品不足を懸念する買い注文が入って跳ね上がった。
■OPEC
米国での供給への不安心理が高騰の引き金といえるが、高値水準を支えているのは旺盛な投資マネーだ。外国為替市場でドル安が続く中、投資ファンドなどの資金は商品市場に流れ込んでいる。原油は、同様に高騰する金や大豆と並んで、投資マネーの受け皿になっている。WTIの取引は昨年11月中旬以降、5億バレルを超える大幅な買い越しが続く。
いまの高値を、産油国も手放しで喜んではいない。原油取引の基本はドル建てのため、高値でもドル安だと、産油国の懐は温まらないからだ。一方、日本では円高ドル安が原油高を相殺し、ガソリンなどの店頭価格に大きな影響は出ていない。
OPECはもともと、バスケット価格が22〜28ドルの目標価格帯から一定期間外れれば、増減産の調整を行うことを決めている。昨年12月2日以降、価格帯の上限を超え続けており、ルール上は増産するはずだ。しかし、OPECは動いていない。サウジアラビアのヌアイミ石油相は 「ドルが安く、(高い)原油価格は適切だ」と説明する。
■買う中国
いまの油価には、世界的な緊張のリスクを反映した「プレミアム(割り増し)が含まれている」とされる。イラク戦争後も、産油国ではサウジでテロが相次ぎ、ナイジェリアの民族紛争、ベネズエラの政情不安も予断を許さない。市場関係者は「3ドルは上乗せ」とみる。
順調に輸出量が回復しているイラクでも、「現有設備では輸出能力の限界に近い」(新日本石油の河野廉国際部長)との見方が支配的だ。輸出は北部からトルコに抜けるパイプラインと、南部の積み出し港が二本柱になるが、北部パイプラインはテロで破壊され、機能していない。イラク石油省が予測する04年の日量250万バレル輸出確保は「楽観的すぎる」との声が強い。
世界の需要をみると、日本を抜いて世界第2位の原油消費国となった中国の台頭もある。遠くアフリカまで積極的に買いあさる動きは、原油価格に上乗せされるタンカー運賃にまで影響する。昨年12月には標準の6割増につり上がり、1バレル=3ドル近くに達した。中長期的に、中国は油価の押し上げ要因といえる。
背景が複雑に絡まった原油の高値だが、需給のバランスが崩れ、資金の流れが変われば、大きく動くのがこれまでの常だ。市況の高騰は、暴落の危険を内に秘めている。油価のかじ取り役であるOPECは2月10日に総会を開く。ルール上は増産だが、需給からは減産が望ましく、難しい選択を迫られそうだ。
(01/19)