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1月2日(ブルームバーグ):1)バブル崩壊後、2度の景気回復は盛り上がりに欠けたが、今回の景気回復が過去2回と異なり本格的なものになる可能性はどれくらいあるのか、2)今回の景気回復を本格的なものするために、政府・日銀の課題は何か、3)1年間の株価(日経平均株価)、ドル円相場、長期金利(新発 10年国債利回り)はどのように展開するか。エコノミスト15人の意見を聞いた。コメントは以下の通り。(氏名50音順)
●三菱証券 石井純チーフ債券ストラテジスト1)「本格的な回復を『民需主導の自律的』かつ『戦後の平均的な景気拡大期間 33カ月を超える』回復と定義した場合、3割程度。来年度後半は減速局面に入ると見る理由は@民需の持続的な拡大が展望できない。デフレ長期化で名目成長率がゼロ前後という情勢下では、個人消費、設備投資の好循環が生まれない」
「A企業は増益維持のため、人件費および有利子負債の削減による財務体質強化を優先せざるをえない。割を食うのは家計で、個人消費は低迷が続く。企業は個人消費が増えないと生産能力の増強投資に踏み切れない。設備投資の伸びも来年度には早くも減速へ。B04年は景気回復局面が3年目を迎え、通常の循環論では勢いが衰える時期。それを覆すには外需が予想以上に上振れするなどの要因が必要だが、米景気も息切れ感が出てくるとみられ、過大な期待はできない」
2)「政府は規制撤廃によって企業の成長期待を持ち上げるとともに、年金改革や消費税増税問題などにスッキリとした道筋を示し、家計の将来不安を取り除くことが必要。日銀は拙速な量的緩和解除や出口政策論議を避け、インフレリスクがデフレリスクを下回る限り辛抱強く量的緩和を堅持していくことが必要。公的債務管理で政府との協調関係を強化し、金融市場の安定を担保することも必要」
3)「いずれもボックス相場。コアレンジは、日経平均:9000円−1万1000円、ドル円:105円―120円、長期金利:1.0%−1.6%」
●みずほ証券 上野泰也チーフマーケットエコノミスト1)「構造要因の制約、外需・IT偏重で広がりが限定的であることから、その可能性は小さい。確率で言えば10%程度か」
2)「政府はバイオ、ナノテク、IT、環境といった分野での新産業・事業育成策を重点的に行う必要がある。併せて、中小企業を含めた産業構造の改革・整理が必要だ。日銀はとうの昔に意味ある景気対策を打ち尽くしている」
3)「株価:もみ合い後、景気の下振れを警戒して下落し、9000円割れに。円相場:105−120円程度のレンジ。年前半はドル不安の裏返しで円高に振れやすく、介入とのせめぎあいが激化する場面も。年後半は円安に転じよう。長期金利:1.2 −1.5%程度のレンジから徐々に金利低下余地を探る方向となる」
●東短リサーチ 加藤出チーフエコノミスト1)「過去2回の回復局面に比較すると、金融システム問題の出口が見えてきた点や、中国が日本の輸出先として大きな市場に育ってきた点など、ポジティブな要因もある。とはいえ、いまだ克服できていない構造問題は残っており、本格回復には資産価格の反転も必要だ。業種別にばらつきの大きい回復にとどまるだろう」
2)「金融政策は既に限界に来ており、小手先の対応は採れても大きな効果は期待できない。財政政策も目先の需要刺激に浪費できるほどの余裕はない。政府に期待されるのは、人口が減少していくなかで、今後どのようなモデルに基づいて経済を運営していくのか、青写真を示すことだろう。景気が上向いている間に国家の戦略を示し、少子化対策、FTAの推進、技術開発援助、海外からの直接投資の促進など、長期的な布石を打っていくべきだろう」
「また、アジアとの競争が激化する中で、国民も痛みはまだまだこれからやって来ることを覚悟する必要がある。高成長に見える現在の米国だが、雇用者数は増加しているとはいえ、海外への外注の余波で雇用の流動化が以前にも増して激化している。大きな痛みを払わされている労働者は多い」
3)「株価:9000−1万2000円、為替:100−115円、長期金利:1.10−1.80 %」
●JPモルガン証券 菅野雅明調査部長1)「本格的な景気回復が『内需中心』あるいは『外需が減少しても内需で景気を維持できるような』回復という意味であれば、今回は外需依存であり、本格的な回復は困難だ。外需が減少するのは米国中心に海外景気が減速する局面であり、そうなれば外人による日本株買いが減少するので株価も下落し、再び金融不安懸念が台頭する」
「当面は外需依存の景気回復が続く。しかし、今回の回復は外需依存のまま予想以上に長期化しよう。@インフレ懸念が少ないため、世界の主要中央銀行は利上げに慎重、A稼働率、失業率、在庫の状況から見て、各国とも景気に過熱感が見られない、B日本経済と中国経済の分業関係が確立しつつあり、中国発の賃金デフレ圧力が強いなかで、中国向け輸出が日本経済のけん引力となる図式が定着しつつある ――ことがその理由だ」
2)「景気回復を本格化させるためには資産デフレを止め、資産価格を上昇に転じさせることが最も有効な政策手段だ。資産価格を上昇させるのは財サービスのデフレを止める以上に難しいが、株価や一部の地価は既に国際価格水準まで低下したので、上昇に転じる可能性は以前に比べると高い。ただ残念ながら、国内投資家のリスク許容度は十分でないため、買い手は外国人投資家に頼らざるを得ない」
「外国人に魅力的な資産市場とは@流動性に富む、A取引コストが低い、B規制が少ない――といった基本的なことばかりだ。@は、銀行が保有する不良資産を放出させて債権の流通市場を整備すれば解決する。A、Bは税金と規制が問題だ。構造改革論議のなかでも目立ちにくい地味な面だが、政府が本腰を入れて取り組めば容易に解決可能だ」
「日銀はかなりの期間、銀行危機を発生させないために流動性に万全を期すしかない。ただし、これは中長期的にモラルハザードを引き起こすので、景気回復のための副作用は大きい。政府は医療、運輸、農業などこれまで手をつけてこなかった分野の規制撤廃を加速させ、サービス業の雇用を増やすことが緊急課題だ」
3)「株価:04年初が底で1万500円、年末がピークで1万2000円とじり高。為替:04年初が105円、7−9月が底で98円、年末にはドルが米国の利上げを反映し反発して再び105円となる。長期金利:3月末までは1.3−1.6%のボックス圏。4月以降は金利が上昇し、年末1.8%。ただし、インフレ懸念はないので、長期金利が2%を超えることもない」
●BNPパリバ証券 河野龍太郎チーフエコノミスト1)「景気が本格回復しないのは、いわゆる構造問題と呼ばれるものが原因ではなく、日本経済が典型的な流動性の罠に陥っているためだ。ゼロインフレあるいはデフレのもとで、短期の名目金利がゼロまで低下し、実質金利をこれ以上低下させることができないため、国内の貯蓄を民間投資で十分吸収できないことが最大の原因だ」
「当初意図された貯蓄に総投資が満たなければ(貯蓄>民間投資+一般政府赤字+経常黒字)、貯蓄と国民所得が減少する形で貯蓄と総投資が均等化する。つまり経済は不況に陥る。この場合、一般政府赤字あるいは経常黒字が増大すれば、当初水準の貯蓄を総投資が吸収し、不況を回避することができる。実際、90年代の景気回復はいずれも財政拡大あるいは輸出増加という外生需要に支えられた」
「現在、製造業部門の設備投資回復が見られるが、それは輸出増加によって同部門の業績が回復したためであり、輸出回復が途絶えると製造業部門の設備投資もすぐに減少する可能性が高い。国内販売に頼るしかない非製造業は、ゼロインフレやデフレで売り上げ増加が期待できないため、設備投資を抑制したままになる。今回の景気回復も90年代の2度の景気回復と同様、盛り上がりに欠けるものになる可能性が高い」
2)「流動性の罠に陥っていることが本格回復できない原因であるなら、何らかの方法で人々のデフレ予想を払拭し、期待実質金利を低下させれば、消費が刺激され、貯蓄が低下する、あるいは民間投資が刺激される。その結果、内需が本格回復し、日本経済は停滞から脱出することができる。例えば、円安水準で為替レートを固定すれば、デフレ予想や資産デフレ予想が除去され、実質金利が低下するため、過剰な貯蓄を民間投資が吸収することが可能になる」
「日本経済が本格回復できない理由として多くの論者が指摘するのは、不良債権問題による金融仲介機能のき損や、企業部門の過剰債務や規制改革の遅れや政府部門の肥大化などである。しかし、筆者はそう考えない。構造改革は重要だが、例えば、道路公団や郵政の民営化を進めること自体がマクロ経済を回復させるのではない。また、不良債権問題、過剰債務問題、過剰雇用問題、財政赤字問題などはマクロ経済低迷の原因というよりも結果だ」
3)「04年いっぱいは輸出主導の景気回復が続くと予想され、年半ばまでは株価上昇が続く見通し。ただし、夏場以降は05年前半の景気減速を予想する形で株価は下落局面入りすると予想。長期金利もそれまでのボックス圏での動きから、低下トレンド入りする可能性が高い」
「為替レートは、米国景気の回復鮮明化にもかかわらず、大統領選挙を控えた思惑からドル安が継続すると予想。過去、米国が大統領選挙などを意識してドル安政策を進めると、当初はコントロール可能でも、最後はコントロール不能なドル全面安となっている。表面上、ブッシュが強いドル政策を掲げるのは過去の失敗への保険だろうが、今回はうまくいくという保証もなく、ドル大幅下落のリスクも残る」
●メリルリンチ証券 小林益久・債券ストラテジスト1)「可能性は大きいと見ている。構造問題(=過剰設備、過剰債務、過剰人員、不良債権問題)は改善している。今回は政府・日銀の大規模な景気刺激策がないなかで、設備投資主導の景気回復をしている。円高の進行にも関わらず、様々な調査で景況観の改善が確認されている。また、今回は資産デフレが緩和されているという点も、過去2回とは違っている」
2)「国債管理政策の強化、税制の改革、規制緩和。あまり政府・日銀に景気刺激策を求めるべきではない」
3)「長期金利:もみ合いながらも緩やかな上昇を予想。脱デフレ期待はあるが、まだデフレである。私の中では、脱デフレとは銀行貸し出しが伸び始める状況を言う。来年の長期金利は、1.4−1.7%のレンジを予想している」
●モルガン・スタンレー証券 佐藤健裕エコノミスト1)「輸出主導といった面は従来通り循環的側面が強いが、一方で過剰供給力削減という構造的側面にも改善がみられ、本格回復へ発展する要素も含んでいる。特に製造業では、循環回復によるキャッシュフロー改善をテコに過剰設備の除却など構造調整に取り組むスタンスが明確だ」
「これらの調整圧力は資産価格を抑制する面もあるため、資産デフレ圧力から来る一般物価デフレ圧力は根強く残存し、回復は引き続き緩慢なものにとどまる公算が大きい。それゆえ、目先04年度はまだまだ本格回復とは言えない。今後は@円高、A地政学的リスク、B海外経済の減速リスク――が顕在化することで、04年度下半期は調整圧力が強まる可能性がある」
「ただし、製造業中心に構造調整が進展していることから、今後予想される調整も98年や2001年のような激烈な景気後退には至らないだろう」
2)「セーフティーネットによる金融システムサポートを必要悪として維持することで、企業の過剰供給力の削減努力をサポートしつつも、非効率な分野を粛々と切り捨てる努力が求められる。たとえば、先般の地銀国有化であらためて浮き彫りとなった地域金融機関の低収益性は、非効率な金融機関を再編・淘汰プロセスに乗せるとともに、公的金融を縮小方向で見直すことで初めて達成できる狭き道だ」
「政府・日銀サイドは過度の金融システムサポートが過剰供給力温存やモラルハザードにつながらないようきめ細かい配慮が求められる」
3)「株:04年度下期の景気の足取りの鈍さを織り込み、年前半は1万1000円を天井に上値の重い展開。後半は05年のリバウンドを織り込み、1万2000円の上値を試しにいこう。為替:ドル安トレンドを大量継続介入でせきとめる構図は基本的に変わらず。緩慢だが着実に100円割れに向かう見通しだ」
「長期金利:目先、金利の下値を追うも、銀行のポートフォリオ修復のための戻り売りから1.1−1.2%が限界。一方、金利の上値のメドは銀行の新規貸出金利との裁定が働く1.5−1.7%。このゾーンは極めて堅い抵抗線で、年前半の基本はレンジ相場」
「ただし、@円高・株安、A地政学的リスク増大、B海外経済の減速リスク―― が見えてくることで、04年度後半は1.1%前後の金利の下値を試しにいく展開となる。予防的資本注入を可能にする新法成立で、ペイオフ全面解禁なら日銀の出口政策も可能、というコンセンサスが後退することも債券市場の追い風になる」
●日興シティグループ証券 佐野一彦チーフストラテジスト1)「20%程度」
2)「政府は構造改革の一層の進展(原則自由の規制撤廃。民間の活力を活かす。生産性の高い企業・個人が報われる税制等制度改革など)。日銀は公的債務管理政策を含め財務省とのアコード。それに含まれようが、流動性供給オペなど債券市場安定化のサポート」
3)「株:景気回復と企業収益の伸び一服などから、1万円を中心とするもみ合い。ただ、米株価次第では上昇局面も。為替:米経常赤字への懸念や国際情勢への不安からドル安圧力が残る。ただし、日本の景気回復力の弱さから100円割れがあっても一時的。長期金利:1.00−1.75%のレンジ形成。量的緩和とデフレ継続が主たる背景。1%割れには03年度上期の経験から警戒感が強まる」
●UFJ総合研究所 嶋中雄二投資調査部長1)「02年1月を谷に始まった今回の景気回復は、バブル崩壊後の局面と比較すると、93年10月を谷として97年5月にかけて43カ月間続いた(拡張期間では高度成長期の岩戸景気の42カ月間を抜く)回復期に似ている」
「特に95−96年に見られた、いったん失速しそうになりながら途中で持ち直しに転じ、再加速して行くという『2こぶラクダ』的な展開が酷似しており、今回は拡張期間の長さでは35カ月間程度(04年末まで持続)にはなるのではないか。実質・名目の成長率のそこそこ高い『本格的なもの』になる可能性も、進行中のデジタル革命が今後どれほどの設備投資を誘発していくかや、中国・米国など世界景気の拡大テンポなどにもよるが、基本的に期待はできる」
2)「政府・日銀共同の目標として、名目経済成長率を06年度で2%と置いているのであれば、その達成に向けて、日銀はマネタリーベース(郵政公社分を除く)の前年比伸び率を15−20%に維持することに努め、政府は構造改革に取り組みつつ、公共投資のフローを一方的に減少させるのではなく、一定水準に維持することが必要だ」
3)「年央にかけて株価・長期金利は上昇し、為替はやや円安・ドル高で推移。その後、年末にかけて株価・長期金利はやや低下し、為替は円高・ドル安方向に転換していくとみる。年央時点で@株価は1万2000円、A長期金利は1.6%、B円は 115円。年末では@1万円、A1.3%、B105円」
●大和証券SMBC 白石誠司チーフマーケットエコノミスト1)「外需主導循環回復の勢いが強まることはあっても、内需主導自律回復への移行は不可能。需要面からみた自律回復の必要条件は個人消費の持続的回復だが、失業率の8割がミスマッチ要因であり、雇用・所得環境の循環的回復余地はそもそも限定的だ」
「供給サイドをみても、経済に占めるシェアの大きい構造不況業種に、独自のビジネスモデルが短期間のうちに確立されるとはとても思われない。経済の大部分を占める非製造業・中小企業の売上がGDPシェアの小さい大企業製造業の構造的リストラ姿勢に規定される展開が継続せざるを得ない」
2)「現在の循環回復はあくまでも米中経済の政策的過熱を背景とした僥倖(ぎょうこう)だ。日本はこうした流れを潤滑油として、民間活力活発化に向けた構造改革を加速する必要がある。景気回復や経済成長率自体を目標とする政策運営姿勢は、もはや時代錯誤だ。政府は日本経済の中長期的な潜在成長率の引き上げに向けた基盤整備を加速する必要がある。日銀に残された実効的な対応余地は、市場との対話を通じた時間軸効果の補強に尽きる」
3)「株価:8000−1万1000円。世界標準の価格水準に既に達しており、上値は限定的。来年後半以降の米中経済減速、本邦景気ピークアウトで8000円を指向。円相場:95−109円。双子の赤字に根差した構造的なドル安基調が底流を規定する。年後半には米減税効果はく落でドル安の勢いが加速し、100円割れ」
「長期金利:0.70−1.40%。年前半は金余り、日銀スタンスを背景に循環回復加速下における長期金利の上方硬直性が顕著となる。夏場以降、外需主導景気がとん挫、1%割れが恒常化する」
●UBSウォーバーグ証券 白川浩道チーフエコノミスト1)「ほとんどない。景気回復は循環的なものに過ぎず、来年後半には再び減速する可能性が高い」
2)「財政健全化、金融システム健全化、金融政策正常化といった3つの正常化を放棄し、モラルハザードを喚起するにせよ、思い切った財政・金融リフレ策を断行しない限り、景気は再び後退する。減税と日銀による国債引受しかない」
3)「円相場、長期金利、株価は1−3月まで堅調推移(ピークは103円、1.5%、1万1000円)。その後年央までに、景気後退観測で株価が下落、長期金利も低下、円相場も反転下落へ(年内の底は120円、0.9%、8500円)」
●野村証券 松沢中チーフストラテジスト1)「一部IT産業しか牽引車が見当たらず、これら主導でこのまま本格回復に至るとは思えない。非製造業は再編が道半ばのため、自律的な拡大にはならない。需要を直接的、間接的(アジア経由)に米国景気に依存している部分が大き過ぎるため、政策需要のはく落と設備投資更新需要の一巡により、米国景気が減速すると一度は日本もこれに引きずられていく」
「ただし、年後半、政府認定の『景気後退』とはならず、『景気減速』で済む可能性はある。@日本国内で財政需要の振幅が見られない、A企業の収益率が高まっている、B現時点では在庫が積みあがっていない、C金融不安が発生するリスクが低下した――ことが下支えとなる。逆に、米国の財政緊縮路線への転換やドル安は、日本が景気後退に陥る最も分かりやすいきっかけとなる」
2)「地域金融機関の淘汰・再編は進めるべきだが、急ぎ過ぎない方が良い。ペイオフ解禁が資金フローに大きな影響をもたらしていると認知したら、ちゅうちょなく延期すべき。もし大統領選前後から米国の財政緊縮路線が明確になってくるのであれば、日本が財政出動を考える必要も出てくる」
「日銀は国内景気指標での確認を待たず、米国景況感の変調に対し、できるだけ速やかに対応すべきだ。財務省の為替介入に合わせ当預目標を広げ、ドル安圧力を緩和していくことが対応策となる」
3)「債券:米国では雇用が自律的回復を支持するほどは増えず、早ければ1−3月中に年後半の日米景気減速を市場が織り込み始め、米国では利上げ観測が後退。日米債券相場上昇のきっかけとなる。大手銀行は株式評価益が縮小。来年度の収益計画において債券運用に依存を強める。5年0.4%、10年債1.0%が取引レンジに入る。9月末ごろ株の底入れとともに相場もピークアウト。10年0.90%− 1.60%」
「株:日米景気減速が織り込まれるにつれ、来年度の企業利益見通しが下方修正。日経平均は1万1000円台で当面のピークを打ったとの認識が強まる。4−6月から下落基調が明確になり、中間決算前後では金融問題に対する認識も下方修正される。10−12月期が底。8500円−1万1500円」
「為替:11月大統領選前後までドル安基調だが、円は日本株の下落に伴い上昇力を徐々に失うため、円ドル相場で見ればそれよりも早く底打ち。98円−116 円」
●ドイツ証券 水野温氏チーフストラテジスト1)「今回の景気拡大は基本的に外需主導型だ。中国を含む東アジア経済が上振れしていることに加え、米国経済が年前半まで強い勢いを維持すると予想される。景気拡大が持続性の高いものになるかどうかは、回復の動きが見える設備投資が更新投資のみならず、能力増強投資まで広がりをみせるかどうかにかかっている」
2)「バブル崩壊後の景気回復局面と今回の違いは、公共事業を中心とする財政政策が景気抑制的に働いているなかでの景気回復であることだ。公的需要が景気抑制的に働くなかで民間需要を刺激するためには、医療・介護・人材紹介など民間セクターに開放した方が効率的と思われる分野で規制緩和を進めることだ」
「年金制度改革において基礎年金に占める国庫負担の割合を現行の3分の1から2分の1に引上げるための財源問題、地方自治体への税源移譲の議論で消費税率の引き上げは不可避だ。消費税率引き上げは公平・中立・簡素という税制の3原則に最も合致した増税措置であり、公明党が主張している所得税の定率減税廃止は経済の活力を低下させる」
3)「今回の景気拡大局面における景気の山が04年7−9月期となり、来年度下期に軽微な景気後退局面が訪れるという当社のメーンシナリオに沿えば、日銀は量的緩和政策を継続する公算が大きい。その前提に立つと、株価は9000円−1万 3000円、長期金利は1.20%−1.90%、円ドル相場は95円−115円が予想される」
「一方、能力増強投資が増加し、東アジア経済が上振れした場合、今回の景気拡大局面は少なくとも04年度末まで持続し、量的緩和政策は解除される可能性が高まってくる。その場合、株価は9000円−1万5000円、長期金利は1.20−2.50%、円ドル相場は90円〜110円が予想される」
●ゴールドマン・サックス証券 山川哲史チーフエコノミスト1)「持続性は過去の景気回復局面より高い」
2)「財政が実質増税策をテコに急速な縮小に向かわないこと(橋本政権の下での消費税引き上げのような愚を繰り返さない)。日銀は量的緩和の長期継続を市場に対し保証することに尽きる(出口政策の議論はあっても、それを市場に対し明言することはしない)」
3)「日本株:上昇。長期金利:ベアスティープ。為替:(年度前半に)一段のドル安」
●バークレイズ・キャピタル証券 山崎衛チーフエコノミスト1)「足元の景気拡大は大企業・製造業にけん引された状態で、まだ本格的とは言えないが、来年度下半期以降は本格回復につながり、過去2回と異なって内需中心の自律的回復になる可能性は十分にあると考えている。特に来年度下半期は名目GDPも前年比で持続的にプラスに転じ、市場の景気に対する認識が変化すると考えている」
「理由は@大企業製造業は過剰債務や高い労働分配率など構造問題のかなりの部分を解消しており、収益拡大の持続力は増し、景気全体をけん引する力は以前の景気循環よりも高まっている。Aその他の構造問題も、景気に与える悪影響が徐々に弱まる方向にある。例えば、非製造業や中小企業はまだ過剰債務など構造問題の調整が必要だが、景気拡大、企業収益拡大の持続で、構造問題も解消の方向に向かっている」
「不良債権問題はまだ解決に時間がかかると思われるが、大企業中心に解消が進んで金融システムは徐々に健全な方向に向かっている。地価は東京都心の一部で下げ止まり、大都市部では下落幅が縮小している。これら構造問題による景気下押し圧力が今後も弱まり、非製造業、中小企業も徐々に改善することが期待できる。B 在庫循環が景気循環に及ぼす影響は小さくなっていると思われるが、足元の在庫水準は極めて低く、先行きの生産の調整リスクを軽減している」
「GDP予想は実質が03年度2.0%、04年度2.5%、05年度2.9%。名目は 03年度マイナス0.4%、04年度0.2%、05年度1.1%」
2)「政府に望むのは景気拡大の邪魔をしないことだ。収益改善を背景に企業がバランスシート調整を進めているのだから、政府は景気の循環的な景気拡大に便乗して財政緊縮を急がず、企業の構造調整の邪魔をしないことが重要だ。規制緩和、規制撤廃を加速させることも必要だ」
「景気が循環的に回復するなかでは、日銀の金融引き締めに対する思惑が働きやすいことから、日銀は市場との景気認識のギャップなどに注意を払い、金融政策スタンスに対する適切なメッセージを発することによって、長期金利の『悪い』急上昇を防止するよう努力する必要がある。さらに、リスクが顕在化しないか注意を払い、顕在化する可能性が高まった場合には即時対応ができるよう準備しておく必要がある」
3)「米国経済は04年を通じて年率4%以上の成長が続き、世界経済をけん引すると考えている。FRBは6月に最初の利上げ(25bp)を実施し、その後も順次利上げを続け、来年末のFF金利2.0%と予想している。国内景気は循環的拡大を続けるものの、市場の認識は上半期と下半期で異なると予想している」
「04年上半期までは景気回復を認識しながらも、実質GDPがプラス成長の一方、名目成長率はマイナスが予想されることから、市場の景況感は景気回復・拡大ペースが加速しているという認識を持てないと考えられるが、下半期にはプラスの名目成長率が意識され始め、景況感が加速すると考えている。このような前提から、株価は上半期の中心レンジが1万−1万1000円、下半期は上昇トレンドが明確になり、年末には12000円程度まで上昇と予想している」
「為替は円高圧力が続くと予想している。日米ともに潜在成長率を上回る景気拡大が続く場合、日本は経常収支黒字が拡大しやすく(あるいは少なくとも大幅に減少する可能性は低い)一方で、輸入の所得弾性値が高い米国は経常収支赤字が拡大しやすいため、円高圧力が強まる」
「しかし、米国景気が好調なら米国赤字へのファイナンスは比較的容易と思われるため、大幅なドル安を想定する必要はないと考えている。中東情勢などがドル安リスクと思われる。一方、日本政府のペース調整的な市場介入は続くと考えられる。以上を踏まえ、年を通じて100−110円を中心に取引され、徐々に水準を下げて、年末には103円と予想している」
「長期金利は、景況感の加速が予想されない上半期に低下余地があり、1.2%程度に低下すると予想。下半期は景気に対する認識の変化、株価上昇、米国金融政策の変化、05年4月からのペイオフ解禁を前にした預金流出、あるいは銀行の流動性確保の動き――など、債券相場にとっての悪条件が重なり、取引レンジは1.5− 2.0%に上昇。年末は1.8%、年度末は2.1%と予想している」