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政府・与党は年明けから、年金制度改革の「積み残し」になっているテーマについて、協議を進める。その中で最も難航しそうなのが、厚生年金の加入対象をパート労働者に広げる構想だ。パートの主婦の多くは現在、専業主婦と同様に扱われ、保険料を払わずとも老後に基礎年金を受給できる。厚生労働省はこの層を減らしたい考えだが、厚生年金の保険料は労使折半であるため、スーパー業界や外食業界は「ばく大な負担増になる」と強く反発している。【吉田啓志、鈴木直】
年収130万円未満のパート労働者の場合、厚生年金の加入対象になるかどうかは、週の労働時間で決まる。
現行制度では、正社員の「4分の3(30時間程度)以上」の勤務実績がある人は厚生年金、それ以下の人は国民年金とされている。このため、パート労働者を多く抱える企業では、パートの労働時間を30時間未満にする調整がなされてきた。
これに対し、厚労省は厚生年金の加入基準を「週30時間以上」から「週20時間以上」に引き下げ、パート労働者を国民年金から厚生年金にシフトさせる案を打ち出している。基準が見直されれば、新たに約312万人が厚生年金に加わると同省は推定している。
当初、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会では「年金の支え手を増やす」との観点からも加入基準の拡大が議論されていた。しかし、今年8月末に同省がまとめた試算(最終保険料率20%が前提)によると、保険料収入が6000億円増えるものの、給付額もほぼ同額増えるため、年金財政の改善にはほとんどつながらないことが分かった。
それでも厚労省が適用拡大を目指すのは、パート労働時間の抑制要因を取り除き、女性の社会進出を促すという理念とともに、保険料を負担しないで済んでいるパートの主婦層を減らす狙いがあるためだ。
サラリーマンの夫を持ち、週25時間のパートで7万円の月収がある妻の場合、専業主婦と同様に国民年金の「第3号被保険者」と認定され、保険料負担なしで老後は基礎年金(満額で月6万6000円)を受給できる。しかし、フルタイムで働く女性はこの制度を「不公平」と感じている。
厚労省としては、こうした声に配慮しつつ、厚生年金によって低賃金のパート労働者の老後をカバーしようというわけだ。適用拡大が実現すると、月収7万円の妻は毎月5000円程度の保険料負担が生じるが、老後は基礎年金のほかに月1万数千円の厚生年金を受け取ることになる。
厚労省案に対し、パート比率の高い小売業界は「企業の死活問題だ」と猛反発している。
スーパーなど102社が加盟する日本チェーンストア協会の調査(47社が回答)によると、厚労省案が実施されると、パート・アルバイト42万6000人のうち18万7000人が新たに厚生年金の加入対象となり、1社当たりの保険料負担は年間2億9000万円増えるという。長期不況の影響で、02年まで6年連続で売上高が前年実績割れになっている業界だけに、危機感は強い。
外食企業389社で作る日本フードサービス協会は、会員150社の試算をまとめた。それによると、適用拡大による保険料負担増は平均で3・1倍、最大で5倍超にもなった。同協会は、会員企業全体で経常利益が2720億4300万円から1632億2580万円へと1100億円近く減少すると試算している。
「従業員だって反対している」と企業側は口をそろえる。日本フードサービス協会が今年5〜6月にパート労働者を対象に実施したアンケートでは87%が「適用拡大に反対」だった。
スーパーで週25時間働く横浜市の主婦(38)は「今の給料から保険料を払ってまで仕事を続ける意味があるのかどうか」と迷っている。月収7万5000円のうち新たに5000円程度の保険料を負担しなければならなくなるためだ。あるスーパーの関係者は「週20時間程度のパート労働者には『将来の生活保障より今の家計』という考えが強い」と話す。
厚労省は、パート比率の高い業種については、基準の労働時間を段階的に20時間に引き下げる、などの経過措置を検討している。しかし、業界の態度は硬く、「とても経過措置を提示できる雰囲気ではない」(厚労省幹部)という状態だ。
業界内部では導入が決まった場合の防御策も検討されている。ある大手外食産業は、保険料負担の増加を避けるために、1人の労働時間を基準以下に短縮した場合に増やさなければならないパートの数、それに伴うコスト増など細かな試算を始めた。厚生年金の適用拡大は、パート労働時間の細分化につながりかねず、厚労省の試算通り312万人も加入者が増えるかどうかは不透明だ。
■第3号被保険者 厚生年金、共済年金などに加入するサラリーマン(第2号被保険者)に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者で、年収130万円未満の人。全国で約1153万人を数え、うち女性が約1148万人を占める。月額1万3300円の国民年金保険料を払わなくても基礎年金を受給できる。
[毎日新聞12月29日] ( 2003-12-29-00:18 )
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/seiji/20031229k0000m010075000c.html