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小泉純一郎首相による道路公団改革が決着した。これをどう評価するか、「改革」の推進役を担った作家の猪瀬直樹・道路関係4公団民営化推進委員会委員と、批判してきたジャーナリストの桜井よしこさんにそれぞれインタビュー、小泉道路改革とは何だったのか、総括してもらった。【「道路国家」取材班】
●ジャーナリスト・桜井よしこ氏
――今回の改革の本質をどう見ますか?
◆道路を建設する新会社と、保有する機構とを上下分離したことが改悪のポイント。資産も債務もない、リース権しかない新会社が自主権を発揮することは金輪際ありえません。
――新会社は、この道路は赤字だから造りたくない、と言えない?
◆アクアラインがいい例。毎日約1億円の赤字を出す道路を造ったのと同じ構造です。一般有料道路は、形式上は道路公団が要請し、国交省が認めて造るが、実際は国交省の言いなりです。料金収入を借金のための担保に使わない、というもう一つの重要点も換骨奪胎です。働かない息子に親のクレジットカードをもたせるようなもの。場合によっては、兆単位の新債務が国民負担になる。これでは改革ではなく、国民への背信行為です。
――6.5兆円のコストカット、分割はどうか?
◆お題目ですね。経費削減は、かつて一度も機能していない。批判をかわすのが国交省の狙いでしょう。机上の計算だから何とでもいえます。分割も、上下分離なら新たなファミリー企業ができるだけ。扇千景さん(前国交相)が「分割したら天下りが増える」と言ったが、その点において彼女は正しかった。
――猪瀬直樹さんへの批判が起きています。しかし、悪かったのは丸投げした小泉首相じゃないでしょうか。
◆両方悪い。同罪でしょう。猪瀬さんは、首相が明言しないことを自分の考えを推進する材料に使った印象はぬぐえない。空疎な改革をアピールするのに、お互いにちょうど良いコンビだったのではないか。
――猪瀬さんはジャーナリストとして書くだけでなく、実現しなければ意味はない、と思ったのでは。
◆著書「日本国の研究」に書いてあることは素晴らしい。しかし、その後の主張は180度変わり、その著者とは別人のようです。意見書と反対のことも持ち回ったわけで、他の委員がフィクサーという表現で批判し、立腹したのは当たり前。あのように現実の妥協点を探るのなら、ご自分が政治の世界にお入りになればいいんですよ。
――猪瀬さんは「獲得」も重要だと。
◆委員会というのは最も優れた案を出すのが仕事で、現実政治とどうおり合いをつけるかは政治家、首相の仕事です。猪瀬さんは、そののりを超えましたね。
――小泉さんは何をしたかったと思いますか。
◆あの方は「民営化」とか「株式上場」といったキーワードは頭の中に入っている。それが良いことであるとも知っている。けれど、著しく勉強が足りません。民営化委の意見書と政府案を見比べて「(意見書を)8割方反映している」「これまでより良くなる」と発言なさった。そこまで読み取れないとしたら知性を疑います。
――小泉構造改革にもう期待は持てない、と。
◆抵抗勢力とか官僚が小泉さんの足を引っ張っていると思ってましたが、これで改革の評価は私の中でマイナスになりました。もう一点指摘すると、今回の公団改革案では、小泉さんが改革したがっていた財政投融資のしがらみからも脱却することはできません。ということは、もう一つの柱である郵政3事業民営化も実質的に否定したことになるんです。
●「獲得」の中身評価を−−猪瀬直樹氏
――今回の道路公団民営化案。評価は低いですね。
◆すべて理想通りにはいかなかった。ただ一定の成果は積み上げられた。料金の平均1割値下げに加え、別納割引の廃止でさらに値下げ幅を大きくできた。会社の自主権と分割も成果だ。6.5兆円のコストカットも実現した。料金が下がれば投資額が減り、必死で利益を出そうと無駄な建設をしていられなくなる。分割で全国料金プール制のどんぶり勘定が茶わんになり、競争が生まれ地域の声も聞こえるようになる。不採算路線を国から押し付けられないためには自主権の確立が一番大事だ。
――評点は?
◆不満はいっぱいあるが、ゼロ点ではない。改革というのはゼロか100ではない。改革後退と評価する人は、ほんとうに現在の公団方式が存続したほうがいいと考えているのだろうか。
――猪瀬氏の立ち回りも、フィクサー呼ばわりされた。
◆僕は小泉首相と違い、何の権限もない。僕が妥協した、と書いた新聞もあったけど、妥協は権限のある者同士でなければできない。僕は論理とデータで粘り強く相手を説得するしかない。民営化委を公開してその中身を報道してもらい、世論がそれに同調して初めて獲得が実現するんです。
――壁は厚かった?
◆330人の道路族がいて、国土交通省という岩盤があったが、非公開資料を表に出させ徹夜して反論データを作り委員会に出してここまできた。細川政権は10年前、夢を売ったが夢で終わった。小泉政権もいずれ終わるが、僕は結果を残すよう頑張った。
――作家というより、政治家、首相補佐官の役割を演じられたのでは。
◆土光敏夫さんの臨調・行革を思い出してほしい。補佐官でも何でもない一民間人だが、一人で官邸へ行き、信念を説き、時の首相を説得した。政府税調の加藤寛さんも時には塀を乗り越えて首相に会いに行った。最後の決戦時に首相を説得に行くのは当然だ。
――小泉さんの姿がどうも見えにくかった。
◆小泉さんは起承転結のうち「起」の人。歴代首相にはない、道路についての「起」はあった。繰り返すけど、国会議員330人が反対している話ですよ。「起」がなければ取り上げてすらもらえなかった。
――「起」しかない、後は丸投げ、ともいえる。小泉さんは猪瀬さんの説明を本当に理解したのか?
◆理解できた分だけは理解している(笑)。イラクだ、三位一体だ、郵政だという中、ご本人が歩留まりをどう考えるか、ということではないですか。
――でも、もっと小泉さんが積極的にかかわっていれば、猪瀬さんが責められることもなかった。
◆不満はいっぱいある。悪い一番は、道路族だけど、次が小泉さん。民営化委員会が意見書を出した時、「あとは政治に任せて下さい」という。その後、小泉さんは「基本的に尊重する」としか言わない。
――今後、民営化委は?
◆法案が骨抜きにならないよう監視しなければならない。委員会が開かれなくても意見は述べられる。他の(辞表を出した)委員の方は、無責任ですね。官邸も霞が関も永田町も、うるさい猪瀬が動きにくくなって、ほっとしているんじゃないか。かっこよく辞めましたでは、敵を利するだけでしょう。
[毎日新聞12月27日] ( 2003-12-27-22:25 )
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/20031228k0000m010064002c.html