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2003年12月15日 http://www.asahi.com/money/aera/TKY200312150094.html
足利銀行が破綻した。政府は一時国有化し、買い手を探す。足銀を買うということは、1000億円足らずで「日光国立公園」が手に入る、ということだ。
◇ ◇
「小泉・ブッシュ会談で対日投資が促進される合意がされました。あおぞら銀行も新生銀行も外資系ファンドが買っている。地銀に新たな玉がでてくれば、対日投資が促進されるじゃないか、そう解説する人もいます」
12月4日開かれた衆議院の財務金融委員会で渡辺喜美議員(自民)は追及。その前日、栃木県選出の国会議員が集まった。そこで「外資による買収だけは阻止しよう」との意見が大勢を占めたという。
●外資の注目度が高い
足利銀行の買収に名乗りを上げている外資は、今のところない。にもかかわらず金融界や地元に警戒する声が広がっているのは、国内に足利銀行を引き継ごうという動きが皆無であるからだ。
「地元の栃木銀行には荷が重すぎる。資本関係にある東京三菱銀行も持ち株が無価値になって、関係が切れた。ほかのメガバンクは動く気配がない」
金融アナリストはそう言う。デフレに沈みリストラに手いっぱいの日本で、積極的に銀行を買おう、という元気な企業はめったにない。その結果、外資の投資ファンドが注目される。
「外資にとって日光は注目度の高い地域」
と外資系のコンサルタントはいう。日本では、日光というと関東近辺では小学校・中学校の修学旅行の定番コースになっている。そのせいか「東京近郊の馴染(なじ)みある観光地」程度の認識が少なくないが、「外国人の目には、絢爛(けんらん)たる日本の宗教芸術が極めて保存状態よく保たれている世界でも貴重な文化資産、と映っている」という。
世界遺産に指定された東照宮、輪王寺、二荒山(ふたらさん)神社に留(とど)まらず、中禅寺湖や奥日光、さらには鬼怒川、那須、塩原までひろがる日光国立公園は、奈良・京都と並ぶアジア観光の要衝というのだ。
上海・香港・シンガポールから東京を訪れる観光客に日本文化と美しい自然、温泉のやすらぎをセットで味わってもらう得難い足場が日光、という位置づけだ。
その日光の観光地がバブルの崩壊で壊滅的打撃をうけ、不良債権の塊となって足利銀行を沈めた。
世界遺産につながる日光の温泉街。東照宮への参道の老舗・福田屋旅館がこの春、経営難で閉鎖した。近隣の旅館には「空室あります」「素泊まり出来ます」の張り紙が目立つ。旅館は料理で稼ぐ、素泊まりでは採算が合わないが、客がないよりまし、と旅館の従業員は言う。
●「名門でも倒れる」
中禅寺湖のほとりでは、江戸時代から続く南間ホテルが倒産した。このホテルは天皇陛下が皇太子時代の疎開先という名門だった。60億円かけて建てたホテル日光離宮は客が入らず特別清算され4億円で売却された。
「旅館・ホテルは装置産業。常に手をかけていないと客を呼べない。資金が詰まれば陳腐化し、名門でも倒れる」
春茂登ホテルグループを率いる根本芳彦社長はそう指摘し「冬を前に足銀が倒れたことは極めて危険」という。
温泉地は冬場は客足が遠のく。収入は減っても、人件費や設備の償却、金利の支払い、給湯費など出費はさして減らない。
「銀行口座に入金は減り、出金は続く。残高はどんどん減りやがて金利が払えなくなる。借金の延滞や手形の不渡りはそうして始まる」というのだ。
足銀はそうした資金逼迫(ひっぱく)期の支えだった。バブルが弾け、借金の延滞が始まっても、短期のつなぎ資金で旅館やホテルを支え続けた。それが地元銀行の役目とされたが、結果として不良債権の山を作ってしまった。
「足銀さんにはお世話になりました。心を一つにしてホテル経営を軌道に乗せることが恩に報いることと思っています」
創業130年、日光の金谷ホテルの井上槇子社長は言う。アインシュタインやヘレン・ケラーも泊まった日本を代表するホテルで、佇(たたず)まい、装飾品が古き良き時代の趣を残している。92年に60億円かけて中禅寺金谷ホテルを造ったことが裏目に出た。バブル期に建てた需要見通しが狂い、借入金が重荷になった。2年前にグループの一角・金谷ベーカリーを民事再生法で処理したのを機に、経営者が交代した。
「金谷のようなホテルを残すことが日光の良さを後世に伝えること」
と街の人も言うが、足銀の破綻で、前途は波乱含みだ。
「破綻、一時国有化と聞いて放心状態になった。栃木の温泉は、大変なことになる」
渓流沿いに10軒が散在する川治温泉。和風モダンの広々としたロビーで、宿屋伝七の経営者・船曳富士男さんはため息をついた。県の呼びかけに応じて増資に応じたものの、今となっては出資した2000万円が返ってくる可能性はゼロに近い。
●温泉使用料も払えず
「そんなことより、破綻処理が心配です。1兆円の公的資金、ということは、相当の貸し倒れが出る、ということ。銀行が損を覚悟で見切る融資先が相当ある、ということです」
船曳さんは鬼怒川・川治温泉観光協会の会長。温泉街の内情を知る立場にある。
鬼怒川では温泉の使用料さえ払えないホテルが出ている。地元藤原町の第三セクターが源泉から湯を汲み、配管で給湯する。その料金が払えないのだ。
「利益が出ている温泉ホテルは極一部で、ほとんどが赤字。ウチも消費税を払う時期になると、資金はかすかすになって給湯料までカネは回らない」
550室あるホテルの総支配人が言った。
バブルのころは、貸し切りバスで団体客がドッと来た。コンパニオンを宇都宮からタクシーで呼び、宴会が終わればスナックでカラオケ。部屋の冷蔵庫から一本700円のビールが飛ぶように売れた。
「お客が減って、一人あたりが落とすカネが少なくなった。最盛期に比べ売り上げは60%に落ちた」
という。拡張路線に走ったホテルや旅館は軒並み「過大投資」に喘(あえ)いでいる。
●ファンドの買い叩きも
「昨今の経済環境では、栃木県の企業は8割が赤字です。足銀は栃木県そのものですから、融資が不良債権化した。特に長期にわたって資金繰りを支えてきた観光産業が経営の重荷になった」
玉木了・帝国データバンク宇都宮支店長は指摘する。
足利銀行は栃木県での融資比率が50%を超え、ず抜けた営業基盤を持っている。観光地に支店を張り巡らし、資金・情報の両面から地域経済と企業を支配下に置く。
足銀の再建は、(1)不良債権を全部表に出す(2)分類に応じて適切な引当金を積む(3)回収の可能性の低い債権は整理回収機構(RCC)に叩き売る(4)その結果生じた損失は公的資金で穴埋めする(5)健全な分だけ残し第三者に銀行を売却する、という手順になる。
生まれ変わる銀行は、栃木県一帯を営業基盤にするなら1000億〜1300億円程度の資本金が必要になる。いくつかの企業・団体が株主になるのが普通だが、筆頭株主を目指すなら700億円程度の用意が必要だ。かなりの金額と見るか、その程度で済むのか、と考えるかは人それぞれだ。
「ダイエー福岡3点セットの球場、球団、ホテルで約1000億円だから、700億円で日光国立公園が買えるなら安い、と思う外資があってもおかしくはない」
と金融関係者はいう。
足銀の処理と並行して過剰投資に喘ぐホテル・旅館の処理・転売がやがて始まる。投資ファンドは安く買い叩くためにも、融資元の銀行を押さえておくことが得策と考えるかもしれない。
そんな懸念もあって地元には、
「県が出資して民間金融機関と一緒に運営する県民銀行を作るべきだ」という声も上がっている。
冬枯れが始まった温泉地はにわかに熱を帯びている。
(編集部 山田厚史) (12/17)
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