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日本が中国と補完関係にあるのに対して、ASEAN諸国は中国と競合関係にある。これは経済発展段階において、中国は日本との格差が依然として大きいが、ASEAN諸国には急速に近づいていることを反映している。補完関係なら、協力し合う余地の大きいウィン・ウィン・ゲームを意味するが、競合関係はゼロ・サム・ゲームになりかねない。すでにこのコラムで米国の輸入統計に基づいて確認したように、中国とASEAN諸国の製品が強く競合しており、しかも年々その度合いを強めている(表1)。
このような傾向は、貿易に限らず、日本企業の海外直接投資の動きからも見ることができる。財務省が発表した対外直接投資実績によると、2002年度の対中投資は、前年比19.1%増えているのに対して、対ASEAN諸国の投資は軒並み減っている。11月に国際協力銀行開発金融研究所が発表した「2003年度海外直接投資アンケート」調査からも、海外に進出している製造業企業が海外事業の拠点として、ASEAN諸国に比べて中国をより重視する傾向が進んでいることが浮き彫りになった。
まず、実際に海外事業を行った実績評価という観点から、中国はASEAN諸国とほぼ同等の評価を受けるようになってきている。ここ10年での収益性評価は、ASEANが低下傾向にあるのに対して、中国は緩やかながらも上昇傾向を示している。特に2003年度では、設備の稼動が本格化していくにつれて収益性を満足と評価する企業が増えている。一方、ASEANに進出している日系企業にとって、現地市場及び輸出市場において、日系企業同士や欧米企業以上に、中国企業を競争相手として意識するようになってきた。
また、すでにそれぞれの地域に進出している日本企業のうち、中期的に「海外事業展開を強化・拡大する」と回答した割合は、中国が73.9%に達しているのに対して、ASEANが42.7%に留まっている。その一方で、「縮小・撤退」と答えるのは中国の0.2%に対して、ASEANが4.0%と高くなっている。ASEAN諸国と比較して、中国への海外進出を強化させる傾向が顕著に見られた要因には、中国がコストの安い生産地としてのみの評価ばかりでなく、自社製品を販売するための市場としての将来性や、得意先の進出・事業拡大も評価されていることが挙げられる。
さらに、現在の進出地域に限定せず、すべての調査対象企業から得られた回答(複数回答)でも、中長期的(今後3年程度)有望な事業展開先として、中国が全体の93%とダントツで第一位となっており、ASEANをリードする第二位のタイ(全体の29%)、と第三位の米国(22%)を大きく引き離している(表2)。中国を有望な投資先として考えている企業の内、70.8%の企業が中国での具体的な事業計画をもっていると答えており、中国への評価が漠然とした期待ではなく、しっかりとした実績に基づいたものへと変りつつあることが伺われる。
このような評価は、日本企業の海外進出の重心がASEANから中国へのシフトする傾向は今後も続くであろうことを示唆している。日本からの直接投資はASEAN諸国の工業化に大きく貢献してきただけに、その減少によって、同地域の経済発展のペースは鈍化しかねない。
表1 米国市場におけるアジア各国の中国との競合度
1990 1995 2000 2002
日本 3% 8% 16% 21%
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韓国 24% 27% 38% 41%
台湾 27% 39% 49% 57%
香港 42% 50% 56% 64%
シンガポール 15% 19% 36% 44%
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インドネシア 85% 86% 83% 84%
マレーシア 37% 39% 49% 55%
フィリピン 46% 48% 46% 57%
タイ 42% 56% 65% 76%
(出所)米国の輸入統計に基づいて作成(HS10桁分類、製品のみ、計約10,000品目を対象)
表2 中期的(今後3年程度)有望事業展開先国(複数回答可)
サイトで参照してください:http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/ssqs/031205ssqs.htm
(出所)国際協力銀行開発金融研究所「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」(2003年11月)
(関連記事:2003年10月3日 実事求是欄掲載 「なぜASEANは人民元の切り上げを要求しなかったか」:http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/ssqs/031003ssqs.htm)
2003年12月5日掲載
http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/ssqs/031205ssqs.htm