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【ロンドン=小平龍四郎】英国で第二のシティー(金融街)と呼ばれるカナリー・ウォーフ地区を開発・管理するカナリー・ウォーフ社の買収戦の行方が混とんとしてきた。米大手証券モルガン・スタンレーなど二件の買収提案が会社側に拒否され、新たにサウジアラビアのアルワリード王子が買い手の一人として浮上している。
カナリー社の経営陣に対してモルガン・スタンレーとゴールドマンサックスの連合体と、カナダの大手不動産ブラスキャンがともに総額十五億ポンド(二千七百億円強)の買収提案を出していた。ゴールドマンが買収戦から降りた十一月初めからは、モルガンとブラスキャンの一騎打ちになっていた。
経営陣は独立委員会を設置して両社の提案を検討させたが「二件とも会社を過小評価している」と判断、十二日までに交渉を打ち切った。これに対してブラスキャンは「(経営陣ではなく)株主と直接交渉したい」との声明を発表して、今後は敵対的買収に切り替える可能性を示唆した。
カナリー社のポール・ライヒマン会長は十二日の同社株主総会で、「株主に報いる価格で(カナリー社を)共同買収する仲間を探したい」と語った。会長職から一時的に降り、連携する相手を本格的に探すという。
英ロイター通信などは、「サウジの富豪であるアルワリード・ビン・タラール王子がライヒマン氏とカナリー社買収で連携する方向」と報じている。アルワリード王子は九一年、当時の米シティコープに八億ドル弱を投資して経営難を救うなど、大物投資家として有名。米欧のホテルなど不動産投資にも積極的だ。
ライヒマン会長は、一九八〇年代にカナリー・ウォーフ地区の再開発を始めたカナダの大手不動産オリンピア・アンド・ヨーク(O&Y)を率いた人物。O&Yが破たんした後はカナリー社に転じ、再開発を続けた。
「自ら開発した新金融街が買いたたかれることに不快感を抱いていた」とされ、最大限二十億ポンドの買収提案を用意しているもようだ。
ロンドン東部のカナリー・ウォーフ地区には、米系証券の欧州統括本部や英金融サービス機構(FSA)がある。オフィスが密集しているロンドン中心部のシティーから移転する金融機関は多く、最近では英国で投資銀行や資産運用に従事する金融マンの一割にあたる三万人が働くという。
カナリー社の二〇〇三年六月期は総収入が二億五千万ポンドと前の期に比べ二一%増えたが、税引き後損益は一億九千万ポンドの黒字から千万ポンドの赤字に転落した。前の期に一時的に計上した売却益などがなくなったほか、金利負担も重かったからだ。経営陣は「業績がこれ以上悪化する環境ではない」と説明している。
実際、在英金融機関を対象にした英産業連盟の調査では、「景気が良い」とする比率から「景気が悪い」とする比率を引いた七―九月の業況判断指数はプラス三七と、四―六月から二九ポイントも改善した。
企業買収や株式の新規公開が増えつつあるためで、オフィス返上の動きも止まったという。新金融街を巡る買収戦は、英景気の回復を背景に過熱していきそうだ。
【図・写真】米欧の不動産投資にも積極的なアルワリード王子=AP