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これまで、中国は対外開放を推進するに当たり、できるだけ輸出を伸ばし、輸入を抑える政策を採ってきた。国際競争力が欠如し、外貨不足であった時代において、これはやむを得ない選択であったが、対外収支が大幅に改善するにつれて、このような重商主義的発想を改める時機がやって来た。
重商主義とは本来、16世紀後半から18世紀にかけて、英国を中心とする西ヨーロッパ諸国において採られた政策である。対外貿易の黒字によってもたらされた金・銀貨の規模がその国の力を表すと考え、積極的に輸出を促進するというものであった。中国は、当時のヨーロッパとは違い、独自の技術を有しておらず、技術不足を補うために外資を積極的に導入した。外資の導入と輸出促進を組み合わせた中国の開放政策は中国に高成長をもたらした反面、国内企業の未発達や中長期にわたる交易条件の悪化、さらには貿易黒字の拡大による日米欧との摩擦の激化というマイナスの影響をもたらしている。
直接投資の流入と貿易黒字の拡大を反映して、中国の外貨準備が2003年9月には3839億ドルと日本に次ぐ世界第二位という高水準に達しており、このことは重商主義に基づく対外開放政策の成果の一つであるとされている。確かに、外貨準備は、通貨に対する投機攻撃を防ぐためには必要であるが、決して多ければ多いほどいいというものではない。必要以上に外貨準備を貯めると、むしろいろいろな弊害が生じてくる。まず、外貨準備を米国の財務省証券(TB)で運用した際に得られる収益率は国内投資よりずっと低く、現状では資金が必ずしも有効に利用されていない。また、外貨準備の増加は貨幣供給量の増大をもたらし、不動産市場におけるバブルを助長している。さらに、外貨準備の急増をもたらしている貿易黒字の拡大も、貿易摩擦を激化させる原因になりかねない。現に、米国が、中国の為替レートの「不正操作」を理由に、人民元の切り上げを求める一方、議会では中国からの輸入に対して、27%の特別関税を課す法案も検討されている。
そもそも、経済発展の目的は国民の生活水準の向上にあり、外資導入や輸出促進、外貨準備の累積はあくまでもこれを達成するための手段に過ぎない。中国が為替レートを割安の水準に維持し、外貨準備を貯めていくことは、国民の購買力が低水準に抑えられる一方で、資源がますます政府のコントロール下に集中されてしまうことを意味する。
当局としては、これまで採ってきた重商主義的政策の限界を十分に認識した上で、以下の4点を中心に経済発展戦略を見直すべきである。第一は、これまで外国企業に与えてきた税金面での優遇を含む「超国民待遇」を改め、国内企業、特に民営企業にも平等な条件の下で競争する権利を与えるべきである。これは、WTOの内外無差別の原則にも合致するものである。第二は、貿易摩擦と交易条件の一層の悪化を防ぐために、輸出主導型成長から内需主導型成長への転換を目指すべきである。このためにも内需不足の原因である地域格差や銀行の不良債権を要因とする貸し渋り、年金や失業保険制度の不備による生活不安といった問題の解決に取り組むことが重要となる。第三は、貴重な国民の貯蓄を外貨準備の保有という形で米国をはじめとする先進国に融資するのではなく、収益率のより高い国内の人的資本や物的資本に投じるべきである。最後に、すでに割安になっている人民元の緩やかな切り上げを通じて、内需の拡大や貿易摩擦の解消など、内外不均衡の是正を目指すべきである。
このような政策を実行することにより、中国における経済成長の果実が国民に行き渡ることが促されるだけでなく、責任を果たす大国として中国の国際社会における評価を高めるだろう。
(関連記事:2003年6月6日 実事求是欄掲載 「高水準の外貨準備が意味するもの」:http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/ssqs/030606ssqs.htm)
2003年10月31日掲載
http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/ssqs/031031ssqs.htm