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NGOなど厳しい視線、潜在リスクに
環境、人権問題などに企業が関与する社会的責任(CSR)への関心が高まる中で、日本の銀行の取り組みの遅れが目立つ。特に、世界的な金融機関が主導する途上国向けプロジェクトファイナンス(PF)の環境配慮の基準作りでは、「邦銀不在」が実態だ。
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「我々には『赤道』は遠すぎる」――。日本の四大銀行グループがそろって腰を引くのが、「エクエーター・プリンシプルズ」だ。エクエーターは英語で赤道の意味。米シティグループなどの欧米銀行が、途上国向けPFの事業評価で銀行が守るべき環境、人権などの配慮事項として六月に決めた自主基準のことだ。
投資額五千万ドル(約五十八億円)以上のプロジェクトが対象。銀行は、融資事業が環境や社会に及ぼす影響に応じて、三段階の環境・社会配慮を融資先に課す。一番厳しいAランクは、環境に不可逆的な影響を与えたり、地域住民の立ち退きを迫るなどの場合で、事業の代替案を含む環境アセスメント(事前影響評価)を義務付ける。
すでにシティのほか、英バークレイズ、仏クレディ・リヨネ、独ドレスナーなど世界の十三行が基準にサインしているが、邦銀の参加はゼロ。
基準をまとめた欧米金融機関は、二つの視線を意識する。一つは、非政府組織(NGO)だ。途上国での大規模開発による環境破壊に反対する世界の主要なNGOは今年初め、開発事業に資金を供給する欧米銀行に対し、資金面から改善圧力をかけるよう求めた。今回の自主基準はそうした要求への回答でもある。
日本の大手行は「我々はそうした批判に直面していない。我々の途上国向けPFの大半は、国際協力銀行との協調融資。環境配慮などは国際協力銀の基準で担保されている」(国際部門担当者)と説明する。
確かに、国際協力銀の環境ガイドラインは、世界銀行の基準に沿い、今回の自主基準も世銀グループの国際金融公社(IFC)の基準が土台。邦銀のPFが国際協力銀との協調融資である限り、環境配慮の手順に大きな差はないことになる。
ただ、自主基準には「具体的なPFへの対応のみならず、将来の潜在的なリスクを避ける意味もある」(C・ブレイ・バークレイズ銀行環境リスク・マネジメント長)。環境への影響は実務的に問題なしというだけでは不十分で、銀行が内部手順を定め、外部に情報開示していないと、「環境配慮が不足」との批判を被るリスクもある。
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手順の明確化はNGOだけでなく、CSRに熱心な企業に投資する欧米の社会的責任投資(SRI)ファンドも重視する点だ。欧米銀行が意識するもう一つの視線が、このCSRであり、SRIの動きとみられる。
環境配慮の手順が明確でないと、SRI上はプラス評価とならない。国際協力銀との協調融資の利点も官依存体質とみなされると、SRI投資の格下げにつながる。
CSRでは、自社およびグループの適正行動を整備し、実行するのは当たり前。現実はさらに進んで、内外の取引先、仕入れ先の環境、社会行動を企業自らが監視することも求められている。日本でも大手電機や流通などは、膨大な仕入れ先の環境・社会行動の監査を自ら実施し始めている。
銀行の取引先は、まさに融資先の企業、事業だ。国内の不良債権処理の手を抜くわけにはいかないが、それにかまけて、環境配慮が二の次のままだと、邦銀の国際金融市場での地位はさらに地盤沈下しかねない。
(編集委員 藤井良広)
【表】エクエーター・プリンシプルズが求めるプロジェクトファイナンスの環境・社会配慮基準
カテゴリー PF対象事業の影響 環境アセスメントの必要度
A 生態系に大きな影響を与え、地域住民や少数民族などの強制立ち退き、重要な文化財に打撃を与えるような事業。環境への影響は、当該地区を越え広範に及ぶ可能性あり 事業の持つプラスマイナス両面を評価、事業廃止の代替案も含むアセスメントの義務付け。環境管理計画も必要
B 潜在的に地域住民や環境に影響を及ぼす可能性があるが、カテゴリーAほど危険ではない場合。その影響は事業地区に限定され、大半の影響が事前対策で対処可能 アセスメントの対象は一律適用ではなく、事業ごとに対応。環境管理計画も必要
C 環境への影響はごくわずかか、ほとんどない事業 アセスメントの義務なし