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米中首脳会談で『人民元』言及 国益交錯探り合い
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20031020/mng_____kakushin000.shtml
バンコクで行われた１９日の米中首脳会談で、ブッシュ大統領は人民元切り上げ問題に言及し、前向きな対応を迫った。胡錦濤国家主席は記者団に「対話ですべての経済問題を解決することで合意した」と述べ、通貨切り上げは当面拒否するものの、長期的には柔軟な対応を示唆した。１年後の大統領選を意識し、国内雇用問題への対応をアピールしたいブッシュ大統領と、新政権の基盤を強化するために、国内経済の安定を保ちたい胡主席。人民元問題をめぐる米中首脳の初対話はそれぞれの国内事情が交錯した。
■米国 再選へ業界無視できず
大統領が人民元問題に言及するのは、米国内の産業界への配慮からだ。
中国の輸出攻勢に悩む米国産業界には、人民元の対ドルレートが低く固定され、これが中国の輸出競争力を高める一方、米国内の製造業にとっては打撃となり、雇用を奪っているとの不満が強い。
来年、再選を目指す大統領にとって、産業界の支持を得るには、米製品の輸出増加に向け、ドル安を求める産業界の意向を無視できず、日本の円高と人民元の切り上げという、二大為替対策は再選戦略の一環の様相を強めている。
その一方、ドルが下落した場合、海外からの対米投資が減り、米国から資金が流出する恐れがあるとともに、米国債の価格が下落して金利が上昇。設備投資を阻み、景気回復の阻害要因となる可能性もある。
さらに人民元が切り上げによって、中国からの輸入が減り、消費者価格の上昇を招きかねない。
米国が、「市場重視」を掲げて、円高や人民元の切り上げを求める一方、米国からの資金流出を回避するために「強いドル」政策を堅持せざるを得ないのは、政策の矛盾ともいえる。
ある米政府高官は、その点をつかれると「私の妻は経済学者だから、聞いてみたい」と答えに窮したこともある。
さらに、北朝鮮の核開発問題やイラク復興などの国際的な課題をめぐっては中国の協力が欠かせず、人民元問題であまり中国当局を刺激するのも得策ではない。
為替問題は、ブッシュ政権にとって「もろ刃の剣」だが、それでも、再選戦略として、米産業界向けに、強気の姿勢を崩すわけにはいかないようだ。
（豊田洋一＝米大統領同行）
■中国 関係悪化避け時間稼ぎ
胡錦濤国家主席は、十九日に行った講演で一九九七年のアジア通貨危機に言及。「周辺国の通貨が大幅に下落する状況下で、中国は人民元を切り下げずに安定を保ち、アジアと世界経済の安定に貢献した」と強調した。
当時の中国は、輸出の大幅減少、相次ぐ企業倒産などに見舞われた。危機回避のため人民元を切り下げれば、世界通貨は底なしの引き下げ競争に突入する危ぐがあった。最終的に人民元の安定を維持した中国の対応は、国際通貨基金（ＩＭＦ）からも高く評価された。
こうした経緯から、中国にはアジアと世界に大きな“貸し”があるとの自負がある。胡主席は今後も「責任ある態度で問題を処理する」と言明。米国の要求に屈する形で、安易に通貨切り上げに応じるつもりはない立場を示した。
先月、外国為替管理局スポークスマンは「人民元レートを国際政治問題にしたり、保護貿易主義の口実にしたりしてはならない」と語り、日米の動きをけん制した。中国人民銀行（中央銀行）の周小川総裁は「この国（日本）ではことし選挙がある。あの国（米国）では来年選挙がある」と指摘し、日米の要求が選挙をにらんだものであるとの見方を示している。
中国の本音では、最重要な対米関係を通貨問題によって悪化させたくない。米中首脳会談は、米側がどれだけ本気で切り上げを迫るのかを見極める場でもあった。
胡主席は「金融改革を深化させる中で人民元レートの形成メカニズムを検討、改善していく」と理解を求めた。将来の見直しを約束して米の圧力をかわし、関係悪化を避ける。国内企業が抵抗力をつけるまでの時間がほしいとのメッセージを米側に伝えた。（鈴木孝昌＝中国主席同行）
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