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10月 15日(ブルームバーグ):日本銀行の福井俊彦総裁は15日、本店で開いた定例会見で、為替相場について「円高が行き過ぎれば、景気回復にかなりの障害になりかねないので、引き続き注意深く見守りたい」と述べた。
総裁はその一方で、「為替相場そのものはまだ不安定要素を秘めている」としながらも、「少し落ち着きの方向をうかがう雰囲気が出ている」と指摘した。
8月の消費者物価(除く生鮮食品)前年比上昇率がマイナス0.1%とゼロ%に接近していることについては「実勢はこれほどゼロ%に接近しているわけではない。実勢としても少しずつマイナス幅が縮小していると思われるが、ゼロ%に近づくにはまだ相当時間がかかる」と述べた。
主な一問一答は以下の通り。
――円高が日本経済に与える影響は。
「われわれもまだ十分明快な判断に至ってないが、以前に比べると、多くの企業で為替相場の変動に対して強い体質を築く努力が進んでいることも事実だ。しかし、日本経済全体をとらえた場合、円相場の行き過ぎが景気の回復にとってかなりの障害要因になりかねない点に変わりがない。われわれは引き続き注意深く見守っていきたい」
「為替相場の動きそのものに、まだ不安的な要素を秘めている。しかし、ここしばらくの動きを通してみると、少し落ち着きの方向をうかがう雰囲気も出ている。東京市場だけでなく海外市場でも、自律的に為替相場が少し元に戻る動きも入ってきた。そういう意味では、為替市場のなかで落ち着きの方向を探り始める気配がようやく出ている」
「しかし、非常に神経質で、各国の責任者の発言やその報道などに、かなり過敏に反応して動いている部分もある。われわれは市場以上に神経質にウオッチしていきたいと思っている」
――8月の消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)前年比上昇率がマイナス0.1%になるなど、物価の下落圧力は緩んでいるのではないか。
「今年度は医療費負担引き上げやタバコ増税など制度要因が入っており、それを特殊要因と言うかどうかは別にして、ゼロ%に近づけるある力をなしているのは事実だ。そうした要因を除いた実勢としての消費者物価指数の動きは、これほどゼロ%に急接近しているわけではない」
「恐らく最近の経済全体の動きを見ると、需給ギャップが極めて微細に、少しずつ縮小している可能性がある。したがって、実勢としてのマイナスの物価指数も少しずつマイナス幅を縮小してきているであろうと思われるが、表面計数で見るほど顕著な縮小ではないことは明らかだ」
「(消費者物価指数の実勢が)マイナス0.5%かどうか、そこまで明確に確認されているわけではないが、実勢の消費者物価指数はまだ水面との比較で言えば、まだかなり低いところで動いている。ひところよりは少し良い方向に動きつつあるだろうが、まだ低いところで動いており、実勢がゼロ%に近づくにはまだ相当時間的距離があるだろうとみている」
外国為替資金特別会計(外為特会)の借入額が限度額に近づいているため、外為特会の外貨建て資産を日銀に売却して介入の余地を増やす案が一部で取りざたされている。これについてどう考えるか。
「一部報道でそういう記事があったのは知っているが、現実には財務省からそういう話はまったく聞いていない。聞いてない以上、そういう話にコメントするのは難しい」
――法律上は可能なのか。
「私たちとしては、今そういう考えは一切ない。かなり以前にそういうことがあったとは聞いているが、現在そういう方向に私の頭は一切向いていない」
――週明け以降、長期金利が上昇しているが、これをどう見ているか。
「週が空けてから非常に長い期間の長期金利が上がっているが、これは基本的にここ2日間の株価の強い動きと絡んだ動きと思っている。ずっと先までみた日本経済の姿をより好ましい方向に市場が見ようとしている動きだと思う。数カ月のイールドカーブを見ると非常に落ち着いている。そういう意味では、日銀の政策スタンスへの信認はより深く浸透していると考えている」
――10日の金融政策決定会合で、景気判断を上方修正しながら追加緩和を行うという異例の措置に踏み切ったのはなぜか。
「過去の政策と対比して論じるのは私の立場ではできない。現在の状況に即して言えば、仮に経済がデフレに陥ってなくて、循環的に景気が多少深く落ち込んで立ち直ってくるという局面であれば、情勢判断を上方修正して、緩和をさらに強める政策は取らない。現在の日銀の政策委員会メンバーもそういう政策は取らないだろう」
「しかし、現在の局面は単に循環的に景気が深いところから高いところに上がったということに加えて、構造問題からの脱却、特に民間の企業部門、特に金融部門が自らの構造問題を処理しながら、経済の全体の動きに復帰しつつある状況だ。したがって経済指標で少し上向いたといっても、循環的に良い動きに対して、まだ構造問題の重石をずっと引きずりながら上がっていくことになる」
「この好循環が少しずつ強まっていく可能性がもしあるとすれば、その可能性をバックアップしながら構造問題からの脱却も容易にし、自律的な好循環のリズムをより良いものに整えていくのは、やはり政策の役割ではないか。金融政策だけの役割ではないが、金融政策の面からもできるだけそのバックアップをしていく責任がある。普通の循環的な側面とは違った側面を今の日本経済は持っている。その部分に着目した政策だと理解してほしい」
――今後も情勢判断を上方修正しながら量的緩和を拡大する可能性があると考えて良いのか。
「その質問を聞いて、前回(10日)の透明性強化の説明を十分理解してもらってないという印象を受ける。情勢判断を上方修正した、下方修正した、というものの言い方で皆さんにわれわれの経済の認識を申し上げるのは、今日で終わりだ。今日で終わりと明確に認識してほしい」
「次回以降は、展望リポート(経済・物価の将来展望とリスク評価)で示すシナリオに対して、経済が上振れている、あるいは下振れている、あるいは標準シナリオ通りに動いている、もし上振れているとすればどういう要素で、また下振れているとすればどういう要素で、ということをきちんと申し上げて、それにふさわしい政策対応をするというふうに組み立て方が変わってくる。したがって、上方修正、下方修正というような判断は今日で終わりということだ」
――では、質問の仕方を変えるが、展望リポートで示した標準シナリオから上振れても量的緩和の拡大があり得るのか。
「標準シナリオから上振れていく場合にも、幅があると思う。標準シナリオそのものがデフレ脱却の可能性をある合理的な時間の距離に置いているかどうか、そういうふうになるかどうかがまず分からない。もし置いているとすれば、標準シナリオはかなり理想的なシナリオになる。その場合は、上振れた場合に緩和ということはあり得ないと思う」
「標準シナリオそのものがまだデフレ脱却にある道筋を残しているとした場合、その標準シナリオから上振れた場合の判断は非常に微妙になってくる。さらにサポートがいるのか、上振れたら理想的な姿に近づいているから必要ないのか、その点は判断が分かれてくる」
――そうした考え方は10日の金融政策決定会合でも合意されたのか。総裁がこういう考え方で行くということを政策委員会メンバーに諮ったのか。
「私が示したのではなく、政策委員会のメンバーで透明性の強化をあのような中身で諮ることを、議論の結果そういう答えになったということは、政策対応と密着した議論としてそれが行われているということだ」
――10日の金融政策決定会合の決定について、総裁は追加緩和と位置付けていないという説明を(決定会合で)したと聞いている。声明文も従来、金融緩和をした時は「金融調節方針の変更について」というタイトルだが、今回は単に「金融政策決定会合における決定について」となっている。前回の措置は金融緩和と位置付けているのかどうか確認したい。
「声明は、金融調節方針だけでなく透明性の強化などいろいろな内容を含んでいるので、そういうタイトルになっている。緩和か緩和でないかという定義論争に入っても仕方がないと思う。声明で明確に言ったのは、景気の下方リスクに対応するという今までの意味の緩和とは違うということであり、緩和でないなどという乱暴なことを言ったつもりはまったくない」
「より厳密に言えば、今までのような景気の下方リスクに対応した措置ではないという意味では緩和でない。しかし、出始めた景気回復の芽をしっかりサポートしていくと行く意味、つまり、市場や経済によりやさしい措置を取っていくという意味であり、それを緩和と言うか、言わないかは、定義の問題だと思う」
――10日の追加緩和の後、金融緩和は理論的に円安の方向に影響を及ぼす力があると発言したが、為替市場ではむしろ一段の円高が進んだ。
「先週の政策が直接、為替相場の動きに影響を与えたとは私たちは思っていない。相場は上にも下にも動いているが、いろいろな要因で動いているのであって、先週の措置が直接影響を与えたとは思っていない」
東京 日高 正裕 Masahiro Hidaka
Last Updated: October 15, 2003 04:36 EDT
http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=80000002&sid=aC4V.XVUp2ls&refer=topj