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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040120-00000115-mai-bus_all
昨年12月24日にBSE(牛海綿状脳症)の感染牛が米国で確認され、米国産牛肉の輸入が禁止されてから、まもなく1カ月が経過する。その直撃を受け、2月中旬にも牛丼の販売中止に追い込まれる見通しの吉野家ディー・アンド・シーの安部修仁社長(54)は19日、毎日新聞のインタビューに応じ「牛丼販売ができなくなっても、経営には不安はない」と述べたうえで、輸入禁止が長期化した場合は、米国産以外の牛肉を使った牛丼を販売する考えを示唆した。日米政府に対しては、「安全」と「安心」を区別した冷静な議論を行い、早期の輸入再開を求めた。
【聞き手・小林理、藤田裕伸】
――いつ牛丼の一時販売停止を決断したのですか?
◆BSE発症確認を聞いた12月24日当日だ。本当は牛丼を売り続けたい。豪州産の肉を使うことも検討した。しかし量が足りない。うちの味も出せない。高くなる。一時的に牛丼が消えても、ブランドをき損するよりはいいと判断した。
――輸入再開のメドは立っていません。
◆築地店(東京都)など6、7店は国産牛肉を使って牛丼を売り続けるが、その他の店は2月中旬には在庫がなくなり、代替メニューだけになる。3カ月以上牛丼が出せない状況が続くのなら、厨房(ちゅうぼう)改造を伴う新規メニューの投入など、本格的な対応に移行する。もっと長期化するなら、米国産以外の牛肉を使って牛丼を復活させる。
――単品販売、原料の一国依存を批判する声もあります。
◆当社のビジネスモデルは、牛丼という商品をお値打ち価格で1日80万食提供するというもの。リスクを取る代わりに営業利益率16%という業績を確保してきた。リスクを分散すれば、そんな利益率は無理。ただ、在庫は3カ月分は持っておくべきだった。これは反省している。
――牛丼が販売できなくなって、業績には影響はありませんか?
◆手持ち資金は潤沢にあり、つぶれるとかいう経営不安はない。売上高や利益がどれくらい影響を受けるかはまだ見えないが、当社にはいい商品を安く提供できるノウハウと人材がある。牛丼抜きでも、半年か1年あれば、普通のファストフード店にはなれる。
――今後の日米協議に望むことは?
◆米国は、輸入する日本側の心配を理解してほしい。それとともに、日本も食品の「安全」について正しい認識を持つことが大事だ。問題になっているのは、食べ物の安全性であって、「安心」とは違う。「全頭検査」は「安心」な言葉だが、それだけが安全を確保する手段ではない。本当の意味で安全確認をどうするかに照準を合わせて議論すべきだ。今のままでは「安全なのに不安」「危険なのに安心」というケースもあり得る。
――具体的にどうすべきでしょうか?
◆世界標準では、生後30カ月までの牛の細胞にはBSEプリオンは形成されない。しかも米国では、その若い牛の危険部位を除去する技術も進んでいる。日本から専門家が米国に行き、安全を確認すればいい。
――輸入再開後の吉野家の姿は?
◆981店全店が元の姿に戻ることはない。新商品には新たな顧客がつくため、輸入再開後も新メニューを売る店も残すつもりだ。確かに今は「ピンチ」だ。だが、危機への対応で吉野家が進化する局面でもある。(毎日新聞)
[1月20日3時7分更新]