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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040225-00000002-mai-l22
◇黄信号で順次停止−−不足分は火力で補てん
東海地震の予知に「注意情報」が新設されたことを受け、中部電力は浜岡原発に関する対策を前倒しし、注意情報が出た段階で、火力発電などで代替電力を確保しながら、原発を段階的に停止させるという。中電は「マグニチュード8クラスの大地震にも浜岡原発は問題ない」という立場をとり、従来は警戒宣言が出てから停止措置を取る方針だった。今回の変更の背景や、安全性に関する問題を検証した。【中村牧生】
◆注意情報の有効性
1月5日から運用が開始された「東海地震に関する情報」は、東海地震の前兆の疑いがある異常をとらえた際に出される。観測情報、注意情報、予知情報(警戒宣言)の3段階で進展度合いを伝える仕組みで、信号にたとえると、警戒宣言が赤信号、注意情報は黄信号に該当する。
注意情報は歪(ひずみ)計の2カ所で有為な変化が表れ、東海地震が発生する際のサインとなるプレート間の「前兆滑り(プレスリップ)」である可能性が高まったと判断した場合に出される。プレスリップに間違いないと判断した段階で発令される警戒宣言は、経済活動をストップさせ、人心に与える影響も大きく、かねて「発令は非現実的」と指摘されてきた。
グレーゾーンの「注意報」の必要性を指摘してきた元地震予知連絡会長の茂木清夫・東大名誉教授は「警戒宣言前に注意を呼びかけるという意味合いが強い。空振りもある注意報とは少し意味が異なる」と解説する。
今回の中電の対応についても「東海地震は予知できるとは限らず、地震前に原発が止められる保証はない」とくぎを刺した。
◇「小出力」から止める
◆代替電力は火力で
予知できた場合のシナリオはこうだ。観測情報が出ると、中電は浜岡原発内に社員約200人態勢の地震災害待機本部を設置する。注意情報で同対策本部に切り替え、中電本社にある中央給電司令所が浜岡原発の代替電力を探す。
代替電力は電力が足りなくなった事態に備えて待機している火力などになる見込みで、現段階では知多、新名古屋などのLNG火力や揚水発電所が考えられる。現在、稼働している浜岡2〜4号機の発電総量は計307・7万キロワット。待機中の予備力だけではまかなえない計算だが、中電・浜岡原発広報グループは「火力の始動には12時間前後かかるが、注意情報が出れば工場が生産を止めるなどして経済活動が低下し電力需要も落ちる。出力の小さなものから順に止めていくことになると思う」と話す。
これらは警戒宣言の発令で想定された対策の前倒しを意味し、東海地震が運転中の原発を襲う危険を極力避けているように見える。しかし、中電の藤明・同グループスタッフ部長は「対策を早めたのは、県や自治体がそうしたから足並みを合わせたに過ぎない」と、原発稼働中に東海地震が起きても安全面で問題がないとする立場は変わっていない。
◇稼働中の直撃、不安視する声も
◆急に襲われたら
原発は稼働中に地震に襲われた場合、揺れの強さが限界値を超えると制御棒が自動的に挿入され、自動停止する。
昨年5月の宮城県沖地震では、同県女川町の東北電力女川原発3号機が200ガル以上の揺れを感知し、地震感知計の作動による国内初めての自動停止を経験した。
東海地震は、同地震の2倍以上の強震が予想されているため、「制御棒がしっかり挿入できるのか」と不安視する声も強い。また、運転停止後も炉内の核分裂生成物から出される崩壊熱の危険性も指摘されている。
中電側は香川県多度津町の工学試験所での実証実験などを理由に「安全に停止できる」と譲らないが、京大原子炉実験所の小出裕章助手は「1%でも約3万キロワットもあり、家庭用電子レンジの3万倍はある。配管が破断して冷却水がなくなり、原子炉が空だきになれば炉心溶解もあり得る。停止1年後でも絶対安全とは言い切れない」と、原発停止が安全に直結するものではないことを強調した。(毎日新聞)
[2月25日19時50分更新]