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新ヨーロッパ大全〈1〉 エマニュエル トッド (著), その他
新ヨーロッパ大全〈2〉 エマニュエル トッド (著), その他
世界像革命―家族人類学の挑戦 エマニュエル・トッド (著), 石崎 晴己
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上記書籍によれば、長子相続と長男一家の両親との同居という家族形態は日本・韓国・ドイツ・スウェーデンなどで見られる形態で、全世界的に見ると比較的珍しい部類に入ります。この家族形態は、祖父から少数の孫への知識の移転が行われるためか、教育の普及が始まると識字率が急上昇し文盲率が急低下するという特徴があります。工業国が多いというのも一つの特徴のようです。著者はこれを直系家族と呼んでいます。
一方、ロシアや中国、中央アジア・中近東・北アフリカなどでは、子供への均等分割相続と、子供全員の両親一家との同居という家族形態が広範囲に広がっています。著者はこれを共同体家族と呼んでいます。戦争が多く治安の悪いこの地域では、一族が団結して居住して、戦乱期には一族の男性が集まって戦うというこの家族形態は優位性があり、それ故に拡大したのではないかと考えられています。コルホーズや人民公社などの共同体形成はこの家族形態の反映であると主張されています。
その他には、アングロサクソン系の絶対的核家族、北フランス系の自由主義的核家族という家族形態もあり、合計で4種類の家族形態が挙げられています。これらの家族形態、脱宗教化(日曜日に教会に行く人の減少)などの指標とフランス革命・ドイツの国家社会主義・ロシア革命などとの関連性が、欧州の各地域ごとの詳細なデータとともに分析されています。
この分類から考えれば、第二次世界大戦は主に共同体家族+絶対的核家族vs直系家族の戦いであり、米ソ冷戦・朝鮮戦争・ベトナム戦争・米国のイラク侵略は主に絶対的核家族vs共同体家族の戦いであるという見方ができます。
第二次大戦後の日本では(たぶんドイツやスウェーデンも同じと思いますが)この直系家族の形態が崩れて核家族化する傾向があります。この現象が現在の日本人の学生の学力低下の一因になっている可能性があります。
分類の粗雑さなどから批判も多い本ですが、独創的な視点と歴史との整合性は高く評価されるべきでしょう。日本と米国だけを近視眼的に見るのではなく全世界的な幅広い視点を保つためにも、お勧めできる名著です。