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グローバリズム(新自由主義)か、国民経済主義か
http://www.asyura2.com/0311/dispute15/msg/589.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 12 月 03 日 17:43:19:Mo7ApAlflbQ6s

(回答先: あっしらさんに、再び質問 投稿者 サム 日時 2003 年 12 月 03 日 13:09:42)


サムさん、こんにちわ。


>日本経済の供給力や貿易黒字の問題ですが、産業の空洞化にともない、供給力や貿易
>黒字が減少化するのは、避けられないのではないでしょうか?

個別企業(経済主体)の利潤獲得活動を称揚する自由主義経済価値観が多数派で国策もそれを基礎にするものである限り、避けられないと考えています。

それどころか、自由主義経済価値観を基礎にした国家社会の運営は、産業の空洞化すなわち供給力や貿易収支黒字の減少を加速化します。

この間の日本経済のようにGDPが縮小する状況が続けば、個別企業(経済主体)は、自分のところの利潤をなんとか確保しようと、労賃が安い外国に生産拠点を移す動きを強めます。
日本で生産すると2000円のコストの商品を10000円で販売でき利益を3000円上げていた(販売促進費を加味)が、デフレの進行でコストは変わらないのに9000円で販売せざるを得なくなり利益が2200円になったとします。
このとき、個別企業(経済主体)が、それなら製造コストが1000円(輸送費込み)にところに生産拠点を移そうと思うのは“自然”(個別資本の論理)です。
計算上は、9000円で販売しても、3200円の利益が得られることになるからです。
しかし、これは、自由主義的価値観に囚われた思考力が生み出す錯誤です。

なぜなら、日本で生産するときに掛かるコストである2000円がGDPの循環から消え去ってしまうことになるからです。
コスト2000円の製品を年間100万個生産していたとすれば、10億円の需要が消えてしまいます。
だから、1000円で製造した商品を輸入して販売しても9000円では売れず8500円になり、目論見通りの利益を上げられないのです。

生産=供給活動に投下したお金が、需要となって戻ってくるという基本的な経済論理が理解できずに、自分の供給活動に投じるお金はコストだからできるだけ少なくし、需要だけはひとのお金だからと大きなものを期待してしまう思考の歪みが現実を見えなくしています。

(米国のように、国際基軸通貨国で、膨大な財政赤字と経常収支赤字を抱えていてもIMF管理下に入ることなく、世界中とりわけ日本からドルを還流させることで消費に狂奔できる国だけが、“錯誤”を現実のものにすることができます)

需要は、自立的に単独で存在しているわけではなく、供給(供給活動にお金が投下されること)によって生まれるという鉄則がないがしろにされているのです。

1社が製造拠点の移転という動きをしてもわかりませんし、輸出増加・赤字財政支出増加・「信用創造」拡大によってGDPが拡大しているときもこの論理は見えにくいのですが、GDPが縮小しそれに対応するために企業がこぞってそのような動きをすると明確に見えるようになります。

輸出、赤字財政支出、「信用創造」のどれも増加していない状況では、「供給→需要」(供給=需要)の論理がそのまま貫徹することになります。

製造拠点の海外移転がデフレ・スパイラルを加速化し、それで利益が回復すると目論んでいた企業の収益を逆を圧迫しているのです。

“真の利潤”は貿易収支の黒字です。(経常収支の黒字だと考えてもかまいません)
この論理から逃れられるのは諸外国に製造拠点を持つ多国籍企業だけですが、国民経済(国内企業)は、この論理から逃れることができません。

国民経済すなわち国民の生活を支える経済活動は、「供給=需要」と“真の利潤”=貿易収支黒字という論理で支えられているという理解なしではまっとうに運営できないのです。

「失われた10年」ともいわれる経済苦境は、根源的に言えば、経済論理の基本がわかっていないが故に引き起こされた人災です。


>生産拠点が労賃の安い海外に移転するのは必然で、そうなれば国力は衰え、長期的に
>は国家破産に至る、この流れを金融政策(銀行の経営の健全化)経済政策(低所得者
>の労賃の上昇)社会政策(年金保証)で変えることが出来るのでしょうか?

先だってのレスで書いた金融・財政・経済・社会政策は、現在の基礎的価値観である自由主義が別のものに転換しない限り採用されないものです。

別の価値観とは“開かれた国民経済主義”です。
それは、上述の論理を踏まえた上で国家社会を運営していこうというものです。

経済活動や国策は、貧富の差などはあるとしても国民全体の経済条件や安寧を実現するためのものであり、それが大企業の利益にも資すると考えです。
国民経済の拡大を実現する源泉は貿易収支黒字ですから、トヨタなど輸出優良企業も“優遇”します。

しかし、価値観や政治勢力として、国民経済派は存在しないに等しい状況です。
(財政出動を求める勢力はケインズ主義であって国民経済派ではありません)

提示した政策が採用されるためには、「国民経済派」政治勢力の確立と多数派形成が必要だと考えています。


※ 参照書き込み

『政党の支持基盤や“反米統一戦線”について − 今必要なのは「国民経済派」政治勢力の確立 −』
http://www.asyura2.com/0311/senkyo1/msg/684.html

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