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(回答先: テロの意味 投稿者 ブッシュはテロリスト 日時 2003 年 11 月 28 日 21:03:33)
『ゲリラの戦争学』
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/html/9975917534.html
文芸春秋 (2002-06-20出版)
・松村 劭【著】
[新書 判] NDC分類:391.3 販売価:\700(税別)
を整理してみました。
(1)テロリズムは「政治目的の実現のための武力の行使」の一種である。すなわち戦争の一種である。
(2)「政治目的の実現のための武力の行使」は敵味方の軍事力の格差により(A)決戦型の戦争と(B)持久戦型の戦争との2種類に大別できる。(p.24、p.31)
(3)決戦型の戦争(A)は、軍事力の格差がほぼ均衡しており、双方に決戦による勝利のチャンスが見込める場合に生じる。この場合には、戦争による疲弊を最小限にとどめて政治目的を実現するために戦争を短期間で終わらせようとする動機が双方に働く。その結果として決戦による決着に進んでいく。
(4)持久戦型の戦争(B)は、軍事力の格差が大きく、劣勢者側で決戦による勝利は見込めない場合に生じる。この場合は、劣勢者は戦争を長引かせることによって政治目的を実現しようとする。すなわち、戦争が長引くと優勢者側の疲弊も増大するので、戦争への意欲が失われる。劣勢者としては、優位者が勝利することなく戦争が終われば劣勢者の勝ち。つまり劣勢者の政治目的が達成される。
(5)持久戦型の戦争にも軍事力の格差により、(B−1)正規軍による遅滞作戦、(B−2)ゲリラ戦、(B−3)テロリズムの3個の戦法にわかれる。この持久戦の3形態は戦法の違いであり、状況により、混在したり、主たる戦法が変化したりする。
(B−1)正規軍による遅滞作戦は、正規軍を維持できる程度の軍事力格差の場合に生じる。すなわち、劣勢者側がある程度の支配領域を確保し、そこから補給や基地を確保でき、正規軍を維持できる場合に可能になる。
(B−2)ゲリラ戦は、大規模な正規軍は維持できないが、小規模な戦闘部隊であれば確保できるような格差の場合に生じる。
(B−3)テロリズムは、小規模な戦闘部隊も維持できない程度の軍事力格差の場合に生じる。この場合には、軍服を着ない非正規戦闘員が潜伏して攻撃することになる。
(6)持久戦としてのテロリズムの特徴について本書からいくつか抜き書きしてみる。
p.25:『
(1)不敗が戦闘の目的である。
(2)戦力の温存を図る。
(3)できるだけ戦争を長引かせる。
ということが戦闘の特色となる。
この場合、戦術行動は脅迫とヒット・エンド・ランであって、攻撃と防御は、やむを得ない場合を除いて徹底的に回避する。攻撃や防御をしない限りは、負けることはないのである。
「負けないこと」そして「軍事力を保持している」という条件があれば、それは国家権力の保証であり、敵側から見れば、作戦が成功しなかったことになり、戦争は長引く。
…
持久戦を区分する方法は難しいが、一般的には、まとまった正規軍による遅滞作戦と、数多くの独立戦闘能力を持つ小部隊によるゲリラ戦、の二つに分けられている。テロリズムや破壊工作は、このうちのゲリラ戦の一戦法として古くから行われた。
』
p.38:『
ゲリラの中で、抜群の戦技と勇気を持つ戦士がいれば、特別な任務を与えられることになる。つまりテロリズムであるが、多くの場合、伝説のロングボウの名手ロビン・フッドがノッティンガム城のVIPを狙ったようなことになる。
ここまで述べたような理由で、ゲリラ戦は千変万化の戦法があるように誤解されがちだが、その戦闘行動の要領は次のとおりである。
第一は『襲撃』で、その目標は軍事物資(装備か補給品)か敵軍のVIPである。正規軍の戦闘部隊の撃破を目標とするのは、危険が多すぎるのでほとんどない。
第二は『伏撃(待ち伏せ)』である。戦闘の目標は、敵の前衛や後方支援の兵站部隊となる。ときどき移動中の指揮所を狙うが失敗すれば包囲される公算はきわめて高い。
第三は、『破壊工作』である。敵警戒部隊の不在を狙って軍事施設に放火したり、軍事物資を掠奪したり、道路・橋梁の交通を阻止したりする。
第四は、『テロリズム』で、目標は要人の拉致・殺害である。
第五は、『退却』である。
第六は、『潜伏』である。
』
(7)なお、持久戦型の戦争における、劣勢者側の損失は非常に大きい。「ゲリラ戦の損害率は敵正規軍の約5〜10倍、という経験値」があるらしい(p.163)。人民の支持がなければ、またたく間に消滅してしまう。逆に言うと、ゲリラやテロが継続して行われるということは、それを支持する人民がたくさんいるということになる。