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壁/密室の暴力:イラク 抵抗ゲリラは民間人である[ロバート・フィスク] 【益岡賢訳】
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投稿者 なるほど 日時 2004 年 1 月 01 日 20:01:10:dfhdU2/i2Qkk2
 

壁/密室の暴力:イラク
抵抗ゲリラは民間人である

ロバート・フィスク
原文
2003年12月27/28日

とても不快なものが、イラクに解き放されようとしている。今週、イラク北部に駐留している米軍第一歩兵師団の、ある中隊司令官が、米兵を殺しているゲリラの情報を引き出すためには、地元の村人たちに「恐怖を染み込ませる」必要があると語ったのである。米軍のために働いているイラク人通訳が、年老いた女性を家から連れだしたばかりのときであった。娘たちと孫娘たちに、女性は逮捕されたと脅し信じさせるために連れ出されたのであった。

同じ地域の大隊司令官は、これをもっと率直に語った。「恐怖と暴力を大量に投与し、プロジェクトに大量の資金をつぎ込めば、奴らに我々が奴らを助けるためにここにいることを説得できると重う」と彼は言った。彼は、部下たちがまわりを鉄条網で囲った村でこの言葉を語っていた。鉄条網の上には、次のような表示があった:「このフェンスはみなさんを守るためにある。近づいても乗り越えようとしてもいけない。そうしようとした者は撃たれる」。

こうした扱い、そしてこれらの言葉が、アメリカ人が「解放」しにきたまさにその人々の最も基本的な人間性を侮辱していることを説明しようとすると、バグダッドでも同じ答えを受ける:「しぶとい」とても少数の「残党」---捕まったサダムに忠誠を誓う---等々を、そうした者たちが「脅している」民間人と分離しなくてはならない、と。

脅迫のほとんどが米国の占領軍によりなされている---イラク南部の英軍が、イタリア人やスペイン兵に加えられたようにイラク人の復讐が自分たちにも加えられるのではないかと恐れているように---ことを指摘するのは、無意味である。

そのかわりに我々が聞かされるのは、米軍兵士たちは、クリスマスの精神で、かの著名なるイラク人の心を勝ち得つつあるという言葉である。これについては、ちょうど今週のAP通信に、不快な---そしてこうした出来事の報告にさえつきまとう根深い人種差別主義の---例がある。

ある米軍兵士がサンタクロース帽をかぶって動物のぬいぐるみを人々にあげていた様子を記述して、ジェイソン・ケイサー記者は、次のように書いている。この兵士が小さな山羊のぬいぐるみをあげたとき、11歳の子供は、「困惑したようだったが、それから微笑んだ」。記事は次のように続く:「ムスリムがほとんどの群衆から、他の人々も貪欲そうに箱をつかんだ」。そして、兵士のコメントを付け加える:「気前の良さにどう対処してよいか、やつらは知らないのさ」。

私は、兵士が善意だったことを疑わない。しかし、「ムスリムがほとんどの」「貪欲そうにつかんだ」といったコメントをどう考えるべきだろうか?あるいは、気前の良さに関するこの兵士の無神経なコメントを?イラクの新聞は、一面で、米軍兵士たちがバグダッドで作ったクリスマス・カードを掲載した:「第一大隊第22歩兵連隊からみなさんへメリークリスマス」とカードにはある。

けれども、そこに書かれたイラストは、薄汚い髭を生やした逮捕後のサダム・フセインがサンタの帽子をかぶったものである。我々にとっては面白いことは確かであろうが---私自身はサンタ・クロースの役柄としてこれ以上の人物を想像できない---が、どんなにバグダッドの野獣を忌み嫌っていようとも、このカードに示されているムスリムのイラク人にハジをかかせようとする意図的な企ては、スンニー派アラブ人にとって、あからさまな侮辱である。自分たちの元大統領を貶めるのはイラクの人々であり、米国人占領者たちであるべきではない。

まるで、占領者たちは、アリスの覗きめがねで見たいかのようだ。今週、英軍のグラエム・ラム将軍は、サダムはカリギュラ皇帝にも匹敵するという奇妙な発言をした。この善良なる将軍は、カリギュラについて、スエトニウス[ローマの伝記作家・歴史家]の『12皇帝』に依拠していたのかも知れない。けれども、カリギュラはサダムより遙かに常軌を逸しており、いっそう人命に対して無思慮であった。

サダムの息子、常軌を逸したウダイ・フセインのほうが、この比較には適切だったかも知れない。けれども、こうした全てにより、一体何を達成しようと言うのだろうか?真面目な戦争犯罪法廷---できればイラクの外で、そしてイラクの汚染された司法から遠く離れたところでの---が、サダムの忌まわしい犯罪の性質を規定する方法であろう。

サダムをヒトラーやスターリン、フン族のアッチラ、カリギュラなどに例えようとするのは、トニー・ブレアやジョージ・ブッシュをウィンストン・チャーチルに例えようとするのと同様、子供じみたことである[子供に対する侮辱でしょうが]。そして、再び、こうしたことはイラクのスンニ派ムスリムへの侮辱となるだろう。占領に反対している中心的勢力であり、米国が必至で懐柔しなくてはならないはずのスンニ派への。

けれども、この覗きめがね効果は、米国属州総督たるポール・ブレマーの権力全体に染みついているようである。ジョージ・ブッシュ大統領と同様、ブレマーは今や、イラクでの西側の成功が大きければ大きいほど米軍への攻撃の数は増すという馬鹿げた主張を繰り返し始めている。

2週間程前、ブレマーは、「私自身は、むこう6カ月、実際に暴力は増えると感じている」と述べた。「そして、この暴力は、まさに、我々が成功への弾みを増しているという事実によるものである」と。つまり、事態が良くなればなるほど、ますますひどい状況が自分たちに降りかかるというわけだ。そして暴力が多ければ多いほど、自分たちはイラクで上手くやっていると。

私は、イラクの現場でも繰り返されるのでなければ、こうしたナンセンスについてはあまり心配しなかったであろう。一月前、サマラで「54人のゲリラ」を殺したという米国の主張---今や馬鹿げたことと見なされている---を取り上げてみよう。実際には、米軍は少なくとも8人の民間人を殺したのであり、それ以外の誰かを殺したなどという証拠はほんのわずかもない。けれども、米軍は、執拗に、これが偉大なる勝利であったと主張し続けている。

先週、同じ話の似たようなバージョンが持ち出されてきた。今度は、サマラで「ゲリラ」が11人死んだというものであった。けれども、「インディペンデント」紙が調査したところ、4人の民間人の死と沢山の怪我人の記録を発見できただけであった。怪我をした人々---もし米国人たちが自分たちのお話を信じているならば「ゲリラ」であったはずである---の誰一人として、病院への米軍兵士の訪問を受けてはいない。尋問するのでなければ、少なくとも謝罪していたかも知れない米軍兵士たちの。

さらにいっそう奇妙な習慣が、占領当局の報道担当者に現れている。3週間前、バグダッド郊外のダドル市で著名なシーア派ムスリムの聖職者を戦車が轢き殺したとき、報道官たちは、これを「交通事故」とのたまった。M1A1アブラムズ戦車で車とローブをまとった聖職者を轢き殺すことが、どこのダウンタウンの路上でも起きるとでもばかりに。

その数日後、爆撃トラックが車と衝突して17人の民間人を殺した後、占領当局の面々は、同じゴミ説明を繰り返した。彼らはそれが石油タンカーの「交通事故」だったと主張した。けれども、ローリーに接続したタンカーなどどこにもなかったのである。

現場に到着した最初の米兵たちは爆発用の爆弾を発見し、犠牲者たちはみな粉みじんになっていた。石油タンカーに火がついていたというのなら焼けこげていたはずであるが、そうではなかった。その虐殺現場に少し遅れて到着した我々も、まだ爆発物の臭いを嗅ぐことができた。けれどもそれが「交通事故」だというのである。

つい昨日も、同様にイカれた事件があった。ジェット機とチェーン・ガンを搭載したC−130機そして大砲が、「鉄槌作戦」のためバグダッド南部の「ゲリラ基地」を攻撃しているというのである。けれども、調査が明らかにしたところでは、標的は空き地であり、重機関銃の中には、銃器維持ルーチンのために空砲を発射していたものもあった。

というわけで、正しく理解しておこう。ゲリラは民間人である。トラック爆弾と戦車が民間人を轢き殺すことは交通事故である。そして鉄条網で囲まれた村に住む「解放された」民間人をちゃんとさせておくために、「恐怖と暴力の大量投与」を受けなくてはならない。

こうした全ての中のどこかで、もしかすると人々は、民主主義についても耳にするのかも知れない。


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コロンビアで、ゲリラとの戦闘による死者と見せかけるために、軍や準軍組織が民間人を殺害したあとで、犠牲者にゲリラの迷彩服を着せるといったことが行われることがあります。不法な占領や不当な政策に対して反対する民間人は、武装に関わらないまでも、武装ゲリラの行方について語ったりせず、しばしば援助することもあるからです。イラクでは、コロンビアよりも遙かにそうした事情は多いでしょう。

米軍は、イスラエルのパレスチナ不法占領政策を学び、イラクでの不法占領政策に取り入れています。鉄条網で村を囲い、人々の移動を制限し、また、民間人を「ゲリラ」と称して殺害する。国際法違反の侵略と不法占領に、戦争犯罪の山を積み上げています。

自衛隊とそれを派遣する日本政府とその政府を選出した日本国籍を有する有権者は、こうした行為への荷担を行うことになります。これについては、apoさんとかFさんといったセンスの良い方が翻訳していたので、手を出すのがためらわれましたが、この記事は、「壁/密室の暴力」という広義のモチーフの一環として比較的適切だったので、訳出しました。

戦地イラクへの自衛隊派兵に反対する緊急署名、憲法改悪反対署名運動など、直接の主旨は違いますが、関連する署名運動が進められています。

一方、パレスチナでは日々、占領者イスラエルにより家屋の破壊や果樹園の破壊、人殺しが行われています。ブドゥルス村が軍事閉鎖地域になったことに対する緊急のfax・メール等での行動要請がありました。メールだけででも、ご協力下さいませ。

益岡賢 2003年12月31日 

http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/iraq031230.html

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