現在地 HOME > 掲示板 > Ψ空耳の丘Ψ32 > 650.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
(回答先: アメリカの不正義 レバノンから見たアラブの苦悩 天木 直人著【新刊】 投稿者 なるほど 日時 2003 年 12 月 30 日 18:10:06)
本屋さんで立ち読みした所、『アメリカの不正義』は「レバノン便り」を元に加筆・修正した内容でしたので、中東調査会のレバノンの箇所を閲覧してみました。
http://www.meij.or.jp/countries/lebanon/
2002年3月5日記の48以降は削除されて読めないようになっていました。http://www.meij.or.jp/countries/lebanon/amaki48.htm
--------------------------------------------------------------------------------
Last Modified: 03/08/2002 17:52:56 Me-News
レバノン便り(48)−アブドゥーラ皇太子の提案(その2)−
(2002年3月5日記)
フリードマン氏の手による新聞記事を通じて世界に伝えられたアブドゥーラ皇太子の和平提案は、様々な憶測を呼びながらも瞬く間に世界をかけめぐった。もともとユダヤ系のジャーナリストであるフリードマン氏を相手にサウジの皇太子が自分の手のうちを明かすのだろうか、フリードマン氏の功名心からくる先走りの記事ではないのか、フリードマン氏を使って米国が仕組んだ観測気球ではないのか等々の懐疑的な意見や、すでにこの考えは1981年のファハド皇太子(現サウディ国王)の提案以来折に触れ言及されてきた考え方であり目新しいものではない、未だアブドゥーラ皇太子自身の口から公式に述べられておらずその中味も詳細は不明である等々の提案内容の適否に関する消極的な意見も多くのべられた。
それにも拘わらず日を追ってこの提案を評価する声が高まっていったのは、パレスチナの自爆テロとそれに対するイスラエルの未曾有の軍事報復の悲惨さに世界の良心が、平和の糸口をなんとか見出だしたいと願ったからであった。
しかしこの提案を歓迎しない国がいた。イスラエルとシリアがそれである。このうちイスラエルがこの和平提案を拒否するのはわかる。もともとパレスチナ人をイスラエルから追放し壊滅しようと考えているシャロン首相率いるイスラエルが、1967年以前の国境まで完全撤退することを直ちに認めることはありえないであろう。そしてパレスチナ側のテロ行為の根絶が先であるという従来の主張を繰り返すであろう。だからこそアラブ諸国はいち早く結束をし、アブドゥーラ提案をアラブの統一的立場にしてイスラエルのコートにボールを打ちこむべきなのである。それをイスラエルが拒否すれば、イスラエルこそ平和を望まない国であることが世界に証明されることになろう。
しかしアラブの中でこのアブドゥーラ提案に警戒心を持って対応する国がいた。それがシリアなのである。シリアはアブドゥーラ提案にはパレスチナ難民の帰還権が言及されていないこと、更にはシリアが最重視するゴラン高原の変換が明記されていないことなどを理由に、いまだ態度を明確にせずレバノンを巻き込もうとしているのである。そのシリアの本心についてこう解説する者もいる。すなわち中東和平が進めば対イスラエルの強硬派であるシリアの存在価値は低下する。なによりもアブドゥーラ提案でアラブの統一が図られれば議長国レバノンの国際的評価が高まりシリアのレバノン支配に傷がつくのであると…
他方当事者の一方であるパレスチナについてはアラファト議長は歓迎の意向を表明した。しかしその一方でつぎのような見方があることに注目すべきである。
…アブドゥーラ皇太子の提案はパレスチナの為に行われたのではない。難民に触れられていないこのような提案は受け入れられない。パレスチナが直面している問題はイスラエルとの問題以上にアラブ諸国との問題にある。イスラエルの国家テロやパレスチナ人殉教のニュースをアラブ諸国はテレビで観戦しているだけである。アブドゥーラ皇太子もその一人にすぎない。アラブ主義の先頭に立っているような顔をしながら、彼の念頭にあるのは米国との同盟関係の保持である…
果たしてレバノンは来るべきアラブ首脳会議の議長国としてこのアブドゥーラ提案を成立させることができるのか、大きな課題を背負うことになったのである。
3月5日 記