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報告者 H .T .
参議院憲法調査会 03.12.3 傍聴記
コスタリカ、カナダにおける憲法事情及び国連における平和主
義・安全保障への取組等に関する海外派遣議員からの報告聴取
参議院憲法調査会は、標記の件について本年9 月に議員を派遣して調査し、
12 月3 日、報告を聴取しました。
コスタリカは軍隊のない国として今では日本でも有名になっていますが(自
由民主党・吉田博美委員)、まずこの点に関して以下のような報告がありました。
「1949 年に制定されたコスタリカ憲法は、第12 条で『恒久的制度として
の軍隊は禁止する』と定め、1983 年には『積極的・永世・非武装中立』を
宣言しました。コスタリカの政府関係者らから、次のような説明を受けまし
た。『戦争は相手があってはじめて可能なのであって、コスタリカは実際に
も軍隊を持たないのですから相手にとって敵にはならず、戦争の心配はあり
ません。非軍備で戦争の意思がないことを示すことが最大の抑止力になって
います。コスタリカにあるのは警察と国境警備隊だけです。国境警備や森林
パトロールのために武器として持っているのは、麻薬の密輸等を防ぐための
自動小銃やヘリコプター程度です。軍の廃止によって浮いた軍事予算を教育、
福祉等に回し、中米一の高い教育水準、経済水準を達成することができまし
た。この平和憲法を世界に輸出したいと思います。』」
この報告を受けて、調査会の複数の委員から「武力紛争になったときに抵抗
はしないという考え方なのか。占領は許すという覚悟を決めてこの政策を取っ
ているのか」等の質問がありました。
これに対しては、「調査団も何回もしつこく確認したのですが、『やむをえな
い』というのではなく、侵略してくる国はないのだからそういう質問には実
感がわかない、これで十分守れるという強固なコンセプトが国民の間にある
という説明を受けた。」旨の回答がありました。
調査団に参加した多くの委員から、コスタリカの「庇護申請」制度につい
て共感が示されました。大脇雅子委員(社会民主党・弁護士)は次のように
述べました。
「私は、裁判所が24 時間ファクスでも電話でも何でも受け付けて弁護士
も何も要らない憲法に基づく庇護申請という、国民の生活と憲法との関係の
異議申立て制度というものがあることを思いまして、ああ、私どもで憲法を
生かすと言いながらこうした制度を作ってこなかったことを残念なことと
して反省しました。」
続いてカナダの憲法事情について、以下のような説明を受けた旨の報告が
されました。
「カナダ憲法は、1867 年憲法、その修正法及び1982 年憲法から成り立っ
ております。1867 年憲法は、英国型の統治機構と連邦制を定めております
が、一般的な人権保障規定は存在せず、またこの改正権も英国議会にあった
ため、1982 年に、新たに権利と自由の章典を置くとともに、憲法制定権を
英国から移管するなどして、全体を再構成した憲法を制定しました。英国国
王がカナダの国家元首であり、その代理として総督が置かれているという点
は変わっておりません。
カナダ憲法の特徴の一つは、カナダ議会の上院議員は任命制だということ
です。議席は四つの地域に配分されています。上院議員は、だんだん政府の
立場から独立的になってきている傾向があります。」
「基本的人権における平等原則については、個人のみならず言語や宗教な
ど集団の権利としても見ているのが特徴です。カナダはマイノリティーの権
利保護や能動的な差別是正措置にも力を入れています。」
「カナダは、世界の中で最も早く積極的に国連PKO に参加した国であり、
また世界唯一の国連PKO 訓練センターを設置するなど、PKO 活動への熱
心な取組は世界的にも大きく注目されています。」「紛争の形態は特に90 年
以降多様化しており、善意だけで割り切れるものではなくなりました。した
がって、派遣地がどのようなところか、そこで何が起きているのか等の背景
情報をしっかり教えることが特に重要になっています。特に人種、宗教を問
わず、人はだれもが同じ権利を持っているとの認識が重要です。」
国連における調査については、「安保理を担当する国連事務次長から、『イラ
ク問題について国連が重要な役割を果たすためにはアメリカの政策変更が必要
である。米英はイラクの主権回復、憲法制定のプロセス・方向性をイラク人に
明示すべきである』との意見が出されました。」等の報告がありました。
今回の国連機関の訪問では、そこで働いている日本人職員からの意見も聴取
しました。
例えば、「日本人として軍縮担当国連事務次長の要職にある阿部次長と会
談した。阿部次長からは、国連にとって軍縮は重要な柱のはずだが、残念な
がら現在は優先課題とされていないと言わざるを得ない。実際、軍縮局の専
門職員は約40 名、巨大な国連事務局機構の中では小さな部局にすぎない。
冷戦崩壊後に平和が訪れるという安心感から軍縮に対する関心が失われた
こと、一方で、最近の動向からテロや大量破壊兵器への対応策に関心が移っ
ており、軍縮は向かい風の時代にあると考えている。その打開のためには、
草の根の市民レベルでの取組、軍縮に関する意識の共有、特に教育が重要で
あるとの説明がありました。」
「国連の日本人職員の方から、日本人職員の数、特に幹部職員の数が絶対
的に少ないこと、我が国政府も努力しているが、語学力と専門知識の点で志
望者の層が薄く、またキャリア途中で転職する者も多く、更なる応援が必要
等の話がありました。」
派遣団の報告は以上のとおりですが、軍隊を持たないコスタリカの平和のた
めの実践は、派遣議員団に強い印象を与えたようです。以下は団長である市川
一朗議員(自由民主党)の弁です。
「コスタリカは侵略されることはないというようなところまで、我々が何
回も聞いたからでございましょうが言い切っておりまして、私はそういう考
え方に理解できるなと思いましたので、コスタリカはコスタリカなりによく
考えているから、コスタリカの平和と安全保障に関してはそういう考え方で
いかれたらどうですかと、この体制で頑張りなさいというようなことを、訓
辞を求められましたので生徒さんに申し上げたところ、大脇先生から感動し
たという感想をいただきました。」
日本人の国連職員の数が絶対的に不足しているとの訴えについては、真剣
に考えなければならない問題であると思われます。日本が本当に国連を重視
するのか、それとも国連は二の次にして大国としてのわがままを実現するこ
とを重視するのかの一つのバロメーターになると思われるからです。
http://www.itojuku.co.jp/magazine/pdf/1226_k01.pdf