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衆議院憲法調査会03.10.２ 傍聴記
報告者Ｈ ．Ｔ ．
衆議院憲法調査会03.10.２ 傍聴記
「日本国憲法に関する件」
◇アメリカ、カナダ及びメキシコ憲法調査議員団派遣報告
◇自由討議
解散前の臨時国会において、10 月２ 日、衆議院で１ 回だけ憲法調査会が開催され、議員
の自由討議などが行われました。
自民党の保岡興治委員は、西洋に追いつけ追い越せという「欧米モデル」ではなく、新
たな国の形を定める「独自モデル」の構築が必要であり、中央官僚主導体制の見直し、道
州制の総合的・体系的検討等が必要であると主張しました。そして、この独自モデルを構
築するにあたっては、国家や社会、家族という共同体における義務、責任について考える
必要があると述べました。
これらの課題を解決するために、 総選挙の政権公約では、平成17 年の立党50 周年まで
に憲法改正案をまとめることを掲げると発言しました。
今回の総選挙で憲法改正問題が急遽争点として追加されたのは周知のとおりです。選挙
では、調査中であるにもかかわらず争点とされたこと自体も問題になりました。
民主党の古川元久委員は、65 条の行政権は、「執行権」（executive power ）と理解すべき
であり、そのような理解の下、首相がリーダーシップを発揮できる宰相型議院内閣制を目
指すべきであると主張しました。さらに、自民党中心の政権の中では、権力の二重構造、
すなわち、(a)政府と与党の二元体制、(b)各大臣は首相との一体性よりも自分の役所の利
害を優先させているという首相と各大臣の二元体制、(c)官僚主導の政治運営という政と官
の二元体制が存在してきたので、これを変えていきたいとの意見表明を行いました。
公明党の赤松正雄委員は、「イラクへの自衛隊派遣に反対する声があるが、9 条を日本が
危ないことをしないための口実としているのではないか。 武 力行使との一体化と見られる
ことはしてはいけないという旧来の日本の平和主義は、それでいいのだろうかという思い
が強くある。憲法９ 条は、縮小解釈や拡大解釈ではなく適正な解釈をすべきである。その
観点からすると、自衛権とは領域防衛に限定されたものではないという国際社会の常識と
乖離しないような憲法解釈を今の時点で確立すべきである」と発言しました。
さらに同党の斉藤鉄夫委員は、「イラクの国民の苦しみは戦争からきているのはなく、
フセイン政権下で水道、電気等のインフラが整備されていないことからきている。そうい
う状況のなかで日本としては復興に協力し、自己完結能力を持った自衛隊を派遣すべきで
ある」と主張しました。「復興」という概念にあてはまるのかどうかが問題になっていま
す。共産党の春名直章委員は、国連総会でのアナン事務総長の次のような言明を紹介しまし
た。「国家には先制的に武力を行使する権利と義務があり、国家は安保理での合意を待つ義
務はないという国がある。この論理は、たとえ完全でないにしても、過去58 年間、世界の
平和と安定が依拠してきた国連憲章の原則に対する根本的な挑戦である。」そのうえで、「９
条を変えようという最大の動機は、集団的自衛権を行使し、米軍が地球的規模で行う戦争
に自衛隊が何の制約も歯止めもなく参加できるようにすることにあると言わざるを得ない。
先制攻撃、単独行動主義を戦略にするアメリカにつき従うための憲法改悪は、日本の平和
を脅かすとともに、国連憲章の原則に対する根本的挑戦とならざるを得ない」と述べまし
た。 社会民主党の北川れん子委員は、「小泉総理の改憲発言を初め、雰囲気的反護憲論が蔓延
している中、平和主義を弱体化させるような改憲を行うことは、日本が反テロ世界戦争に
さらに本格的に参戦したり、その戦場となったりする危険を著しく高める」という見地か
ら、防衛費が世界第２ 位という軍事大国日本に歯止めをかける必要があることなどを主張
しました。同党の金子鉄夫委員は、イラク問題に触れて、「従来、占領地域に自衛隊を派遣
できないと言ってきた政府がそれを変えるのは、憲法とのかかわりで大きな問題がある」
と述べました。
ところで、衆議院憲法調査会の中山会長は、憲法調査会が堅持すべきものとして、「中山
３ 原則」を提示して運営してきました。それは、（１ ）主権在民、（２ ）人権の尊重、（３ ）
再び侵略国家にならない、という３ つの原則です。今回の調査会でも２ 度に渡ってこの原
則に言及しました。
国連総会の決議によると、「侵略」とは、「一国の軍隊による他国領域への侵入若しくは
攻撃、又は、一時的なものにせよ、右の侵入若しくは攻撃の結果生ずる軍事占領‥‥」と
定義されています。「中山３ 原則」との関係で、自衛隊をイラクに派遣する前提として米英
軍によるイラク攻撃が「侵略」に当たるかどうか問題になると思われます。しかし、これ
に当たらないとする側からの見解は聞けませんでした。
憲法改正を選挙の争点とすることの主張も含めて重要な意味を持つ調査会でしたが、真
剣に議論するという雰囲気は感じられませんでした。委員の出席状況は、定数50 名中、自
由討議開始時には25 名、終了時には15 名でした。高齢による議員引退問題で話題になっ
たある委員は、着席して間もなく眼を閉じ、３ 分の１ くらいの時間が経過してからは最後
まで、口を大きく開けて眠っていました。いつもの似たような光景です。また、調査会の
幹事を務める与党側のある委員は、野党側の発言のたびごとに椅子を完全に横に向けて同
僚議員とおしゃべりをし、あるいは本を読んでいました。
http://www.itojuku.co.jp/magazine/pdf/1127_k01.pdf
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。